※本ページ内の情報は2025年3月時点のものです。

モリトジャパン株式会社は、パーツや部品の開発・製造・販売を行う事業会社だ。時代に合わせたパーツの提供で事業を展開している同社は今、既存のものに新たな付加価値を持たせた商品の開発に注力している。代表取締役社長である小島賢司氏に、同社の事業内容やモットー、今後の展望を聞いた。

製造販売から会社経営まで幅広く経験

ーー貴社の社長就任までの経歴を教えてください。

小島賢司:
1983年にモリト株式会社に入社し、最初は営業部に配属されました。そこで営業課長、部長を経験し、その後は新規事業部の部長、事業開発室長と経営企画室長を担当。2010年に法務部の新設に伴い、初代部長に任命されました。営業部から始まり、管理系にシフトした形ですね。

法務部部長の後は管理本部長に任命され、2019年モリト株式会社の会社分割に伴い、事業会社である弊社の取締役副社長に就任。2022年に代表取締役社長になったという経歴です。

このように、さまざまな部署で経験を積みましたが、特に苦労したのは、やはり法務部だったと思います。「攻め」の姿勢が求められる営業や事業開発とは異なり、法務は会社を「守る」ために動く部署です。事象の捉え方1つとっても、これまでの経験で学んだこととは大きなギャップがあります。法務の勉強経験もなかったので、厳しく指導されることも多く、苦労しましたね。しかし同時に、リスクを事前に発見する予防法務の重要性と、皆がそれぞれの場所で精一杯尽くす「一隅を照らす」という言葉の本当の意味を学ぶことができました。

私の経歴は、弊社の中でも珍しいほうだと思います。開発製造と販売から会社を経営するところまで一通り経験できた点は非常におもしろかったですね。企業活動全体を俯瞰して見ることができるので、できれば多くの方にこういった経験をしていただきたいと思っています。

ーー社長に就任してから意識されていることはありますか?

小島賢司:
グループ内でのエンジンであることを強く意識していますね。弊社はモリトグループ内での中核を担う事業会社で、商品の企画・製造・販売を行う会社です。モノをつくって販売することにより利益を上げる仕組みですから、その両面においてグループ内での重要な役割とのことでエンジンと考えております。

エンジンが弱くなると、グループ全体が立ち行かなくなります。弊社が製造と販売の両面を今後活性化していくことがエンジンの出力を上げることにつながるので、その部分は特に強化すべきと考えています。

当たり前のものに新たな付加価値をつけていく

ーー貴社の事業内容を教えてください。

小島賢司:
弊社の事業内容についてお話する前に、持株会社のモリト株式会社について説明させていただきます。

モリト株式会社はハトメ・ホックなど鞄や靴の付属品の卸業者として1908年に創業いたしました。その後パーツ類を中心に国内外にて販売・製造拠点を持つ専門商社です。

2019年に事業会社と持ち株会社に事業分割後、2022年に再度市場特性ごとに分割し、アパレル業界を中心としてパーツ類を扱うモリトアパレル株式会社、輸送機器の内装部品を提供するモリトオートパーツ株式会社、そしてそれ以外の広範囲の業界を対象としてパーツや製品を扱うモリトジャパン株式会社となります。

弊社は主に2つの事業から成っています。

1つ目のビジネスサプライ部門では、OEM・ODMを中心にお客様の依頼を受けてパーツの提供や製品開発、製造を行っています。取り扱い品は、はとめ・ホックやマジックテープ®などパーツから製品まで、業界も保安安全、学童、文具、鞄、カメラなど、多種多様な業界とのお付き合いがあるのが特徴です。

2つ目のリテールプロダクト部門では、弊社オリジナルの企画開発による複数の自社ブランド商品を展開し、大手販売店やECサイトで販売しています。

看板商品としては、靴のインソールや足腰につけるサポーター、防水バッグなどがあり、特にシューケア関連の商品は強いです。

また上記とは別にグループ内での物流業務も担っています。

ーー貴社の事業方針をお聞かせください。

小島賢司:
パーツや部品といった人の生活に密着した部分で、安心や安全性、利便性を追求した新しい発想の商品を提供していくことです。「新しい発想」というのは、安心・安全・便利といったベースが確固として存在して初めて生きると考えています。ですから、ごまかしの効かない「本物づくり」が欠かせません。

モリトグループのタグライン「あたりまえに、新しさ。」には、これまで当たり前に使っていた物に、新たな付加価値を見出し提供するという意味が込められています。たとえば、弊社が企画製造した防水バッグZAT®は、ランドリーバッグから着想を得ました。ランドリーバッグの防水性の高さを日常使いできるバッグへ落とし込み、さらに縫い目をなくすことで浸水のリスクを軽減しています。

こうした「あたりまえに、新しさ。」というタグラインに基づく商品の提供は、グループ全体のミッションでもあります。

ーー貴社事業の魅力は何だと思われますか?

小島賢司:
やはり、自分で考えて物をつくっていける点ではないでしょうか。あるものをただ売るのではなく、商品をより良いものにするためにお客様と一緒に試行錯誤していく。これが弊事業の魅力といえます。

また、弊社では、営業が自ら商品開発に携わることも多いです。時間がかかりますが、最終的に商品として形になることに、喜びや充実感を覚えます。なおかつ、自分のつくったものを市場で見かけたり、好意的な声をいただいたりするのは、事業のやりがいの1つですね。

産業構造の変化に対応すべく事業領域の拡充を目指す

ーー今後の展望を教えてください。

小島賢司:
グループ全体の方針として、環境に対応した商品への注力があります。モリトグループは現在「Rideeco®(リデコ)」という環境対応プロジェクトを展開し、海洋プラスチックごみの廃漁網を樹脂製品や糸といった身近な商品に加工するなど、サスティナブルな世界の実現に向けて取り組んでいます。

その流れの中で弊社が取り組んでいるのは、GRS認証を活かした事業展開です。GRS認証とはリサイクル製品の国際的な認証プログラムで、認証を取得するには、単にリサイクル材の使用率だけでなく、社会・環境要件にも適合しなければなりません。また、関連する企業すべてが認証取得していなければ、GRS認証を謳うことができないため、トレーサブル認証とも呼ばれています。関連企業すべてが環境に配慮した商品を提供する、という点で大きな差別化ポイントになると考えています。

また、コンシューマー事業において、「お客様の大事なものを守る」というミッションのもと、ECサイトなどで従来のジャンルとは違う商品をお客様に直接販売する「DtoC」を見据えた新ブランドの展開を考えています。「モリトジャパンの商品だ」と消費者の方に認識していただけるような商品を開発していきたいですね。

時代の流れと共に産業構造は変わっていくため、その環境変化にいち早く追随できるよう、提供できるサービスや商品をさらに拡充すべきだと考えています。自ら領域を制限する必要はありません。お客様にありとあらゆるアプローチができるよう、常にアンテナを張っていきたいですね。

編集後記

取材を通じ、日頃目にする商品の中で同社が製造しているものの多さに驚いた。私たちの暮らしにぴったりと寄り添い、今後さらに多角的なものづくりを行っていくという同社に、今後も注目していきたい。

小島賢司/1983年モリト株式会社入社。営業部長や事業開発室室長、経営企画室室長、法務部部長を歴任し、2019年の会社分割に伴いモリトジャパン株式会社取締役副社長に就任。2022年同社の代表取締役社長へ就任。