
社会インフラを支える安定した事業基盤を持つ、新光電機株式会社。そのサービス範囲は日本全国にとどまらず、南極の昭和基地にまで及ぶ。同社の代表取締役社長に就任した岡崎紀彦氏は、着任当時に抱いた強烈な課題意識を原動力に、職場環境の刷新から組織風土の改革まで推し進めてきた。安定した経営基盤があるからこそ可能になる、次なる挑戦とは何か。社員への思いと会社の未来像、そして改革の軌跡について話を聞いた。
人も会社も輝く場所へ、未来を開くための第一歩
ーー社長のこれまでのご経歴についてお聞かせください。
岡崎紀彦:
もともとは、弊社の親会社であり、さまざまな社会インフラの構築・維持などを行っているミライト・ワンに在籍しており、61歳の時に出向で新光電機の社長に就任。その後、ミライト・ワンを定年退職し、正式に社長に就任しました。
ーー社長に就任された当時、会社にどのような印象を持たれましたか。
岡崎紀彦:
正直に申しますと、最初にオフィスを見たとき、「古いビルだな、大丈夫かな」と思いました。当時入居していたのは築50年以上が経過したビルで、2018年に発生した大阪府北部地震の影響で建物に大きなひび割れ等の被害が出ていたのです。トイレをはじめ、あらゆる場所が老朽化しており、社員の安全確保は当然のこと、BCP(災害や障害時に事業を継続・早期復旧させる計画)の観点からも、このままではいけない、この環境では良い人材が集まるはずがないと、強い危機感を覚えました。そこで、就任後すぐにオフィス移転を決断し、社員が快適に働ける新社屋を尼崎へ建設し、移転しました。
「ぬるま湯」からの脱却と、社員のための制度改革
ーー働く環境以外に、組織面での課題はありましたか。
岡崎紀彦:
二つの大きな課題を感じていました。一つは「愛社精神の希薄さ」、もう一つは「原価意識の甘さ」です。長年、三菱電機とミライト・ワンという主要顧客からの案件で経営が成り立っていたため、ある意味、特段の努力をしなくても仕事が継続的に入ってくる「ぬるま湯」のような状態に慣れてしまっていたのだと思います。
ーーその課題を解決するために、どのような改革を進められたのですか。
岡崎紀彦:
まず、社員の成長意欲に応えるため、研修制度を抜本的に見直しました。驚いたことに、入社してから外部研修をほとんど受けたことがない社員が大半だったのです。それでは「井の中の蛙」になってしまいます。そこで、今年から中堅社員を皮切りに、外部研修へ積極的に参加させるようにしました。異業種の人と交流し、自分を客観視することで他者とのギャップを痛感し、今のままではいけないということに気付いてほしいという考えからです。
また、人事制度の改革も進めています。弊社は社員の9割以上が中途採用ですので、社歴や年功序列ではなく、個人の実力や保有資格で正当に評価されるべきだと考えているのです。これまでは評価の基準が曖昧でしたので、評価面談に加えて、結果をきちんとフィードバックする面談を制度化し、社員のモチベーション向上につなげたいと思っています。
南極から万博まで、社会インフラを支える多彩な事業領域
ーー貴社の事業内容についてお聞かせください。
岡崎紀彦:
私たちの事業には、大きく二つの柱があります。一つは三菱電機関連の仕事で、各種無線設備、CATVなどの通信機器の保守を担っています。もう一つが、ミライト・ワン関連、三菱電機関連の電気・通信工事です。たとえば、官公庁電気・通信設備工事、サービスエリアのEV充電器設置工事や、空港内の工事などを継続的に手がけています。
また、現在、三菱電機との取り組みで、社員が南極観測隊の「夏隊」や「越冬隊」に参加しています。主な業務は、南極の昭和基地にあるアンテナを年間通してメンテナンスすることです。今もまさに社員が現地へ赴いています。ほかにも、世界各地に各種無線設備を設置する業務もあり、これまでチリやスペイン、香港、インドネシアなどへ社員が出張しています。
ーー近年関わった中で、印象的なプロジェクトについて教えてください。
岡崎紀彦:
大阪・関西万博ではイタリア館の電気、空調、給排水、衛生、防犯カメラといった設備工事一式を担当しました。これは新規開拓事業の一環です。今回社会的に注目度の高いプロジェクトに携われたことは、社員の大きなやりがいにもつながって達成感もあり、いい経験になったと思います。
「第三の柱」を創る未来戦略
ーー今後の事業展開について、どのような展望をお持ちですか。
岡崎紀彦:
三菱電機とミライト・ワンという二つの大きな柱があるおかげで、弊社の経営は非常に安定しています。しかし、会社がさらに成長するためには、第三の柱となる事業を育てなければなりません。具体的には、民間企業から直接いただく電気工事や通信工事の案件を強化していきたいと考えています。最終的には、この第三の柱で全社の売上と利益の3分の1を創出する体制を築くのが目標です。
ーー第三の柱を強化していく上で、どのような戦略をお考えですか。
岡崎紀彦:
いきなり大規模なゼネコンと組むのではなく、まずは弊社の規模に合った、数十億円規模の企業とのお付き合いから実績を積み重ねていきたいと考えています。経験のないことに挑戦するわけですから、現状に見合った仕事から着実にこなし、社内にノウハウを蓄積していくことが重要です。
「社会を支える誇りを胸に」揺るぎない安定と新たな挑戦

ーー改めて、貴社で働くことの魅力は何だと思われますか。
岡崎紀彦:
最大の魅力は、やはり「安定性」です。三菱電機とミライト・ワンという、日本を代表する大企業のグループ会社として、常に仕事がある状態です。無借金経営で財務内容も健全です。この安定した基盤があるからこそ、先ほどお話しした第三の柱という新しい分野に安心して挑戦できる。これは他社にはなかなかない強みだと思います。
ーー最後に、この記事を読んでいる求職者の方へメッセージをお願いします。
岡崎紀彦:
頑張って成果を上げた社員には、きちんと還元しています。その結果、昨年度はミライト・ワングループ内で業績1位となり、表彰されました。私たちは社員の声に耳を傾け、働きがいのある会社をつくっていく努力をこれからも続けます。安定した環境で、社会を支える仕事に誇りを持ち、新しいことにも挑戦したい。そんな意欲のある方と、ぜひ一緒に働きたいですね。
編集後記
岡崎社長への取材で印象的だったのは、課題を発見し、即座に行動に移すその実行力である。就任直後のオフィス移転から、社員の成長を願う人事制度改革まで、その全ては「社員が誇りを持って働ける会社にしたい」という強い思いに貫かれている。安定した基盤の上で、未来を見据えた「第三の柱」という新たな挑戦に踏み出す同社。その挑戦を支えるのは、社長の情熱と、それに応える社員たちの力に違いない。新光電機のさらなる飛躍と未来に期待が高まる。

岡崎紀彦/1960年香川県生まれ。甲南大学法学部卒業後、東洋電機通信工業株式会社(現・株式会社ミライト・ワン)入社。2022年7月1日新光電機株式会社へ出向、代表取締役社長就任。2022年8月1日新光電機株式会社に入社、代表取締役社長就任。通信キャリア事業・メーカー関連事業のみだった事業を官公庁・民間事業まで拡大する活動に力を入れている。