※本ページ内の情報は2025年8月時点のものです。

熟練者の「暗黙知」をデータで可視化し、製造業の生産性向上に貢献するアキュイティー株式会社。新卒での挫折、ベンチャーでの躍進、大手企業への転職という経歴を持つ佐藤眞平代表は、なぜ「動きのデータ化」という事業に辿り着いたのか。99.7%という圧倒的な精度を誇る技術の強み、製造業の枠を超えて介護や教育まで見据えるビジョン、そして事業の未来を共に創る仲間への想いを語る。企業の持続的成長と人材育成のヒントがここにある。

異色の経歴が導いた起業への道筋

ーーまずは佐藤社長の経歴についてうかがわせてください。

佐藤眞平:
新卒で入った会社は成長環境に物足りなさを感じ、10ヶ月で辞めました。次に挑戦した会社も長続きせず、一時は自分は社会不適合者なのではないかと感じました。そんな時、母の「大手よりベンチャーの方が合っている」という助言で、社員5人ほどの画像処理ベンチャーに入ったのが大きな転機です。大学は教育学部で畑違いでしたが、営業として技術を深く学ぶうちに仕事が面白くなり、10年間在籍して大阪支社の立ち上げも経験しました。

ーーその後、大手SIerへ転職されたのはなぜでしょうか。

佐藤眞平:
30歳手前で「このままでいいのか」と起業を意識し始めたものの、一度、大きな会社の常識を身につけるべきだと考えました。SIerでは優秀な人たちと働く中で、世の中のルールや当たり前を学びました。その後、専門商社で新規事業立ち上げを5年間経験し、そこでモーションキャプチャー技術と出会いました。エンタメ向けのこの技術を工業計測に応用すれば、世の中に大きな価値を提供できると確信し、起業に至ったのが2015年のことでした。

製造業の生産性を革新する「動きのデータ化」

ーー貴社の事業内容について教えていただけますか。

佐藤眞平:
私たちの事業は、ひと言で言えば「生産性を上げること」で、その手段が「動きをデータ化する」ことです。例えば工場の作業をデータ化し、AIで解析することで「誰が、何に、何秒かかっているか」だけでなく、熟練者との動きの違いまで可視化します。これにより生産性や品質が向上し、客観的な人事評価や怪我の予防にも繋がります。開発現場でも、従来25日かかった実験準備が12日に短縮されるなど、開発のリードタイムを大幅に短縮しています。

ーー同様のサービスがある中で、貴社が選ばれる強みは何でしょうか。

佐藤眞平:
お客様からは情報の「精度の高さ」を評価いただいています。他社製品の認識率が7〜8割だったところ、我々のシステムは99.7%を達成しました。AIの判断プロセスをブラックボックスにせず、なぜその結果になるのかという原因を特定できる技術的な裏付けがあるからです。また、単に計測器という「モノ」を売るのではなく、データがお客様の利益にどう繋がるかという「コト」の価値を提供することにこだわっています。

「誰もが成長できる社会」へ アキュイティーの描く未来

ーー今後の展望についてお聞かせください。

佐藤眞平:
私たちのミッションは「昨日より今日、今日より明日に、誰もが成長できる社会を作る」ことです。そのために、現在中心のエンタープライズ市場から、将来的にはSMBやコンシューマー市場まで「動きのデータ化」という価値を届け、世の中の当たり前にしたい。元々この事業を志したきっかけはスポーツでの経験で、「もっと腰を低く」といった感覚的な指導ではなく、定量的な評価で誰もが納得して成長できる世界を作りたかったのです。

ーー事業を拡大していく上で、どのような方と一緒に働きたいとお考えですか。

佐藤眞平:
職種や過去の経験は一切問いません。たとえばエンジニアであっても、AIに関する専門知識は不要です。それ以上に、私たちが取り組む事業そのものに強く興味を持ち、その価値を世の中に広めたいという純粋な思いがある方に来ていただきたいと考えています。

求めるのは、過去の成功体験に縛られることなく、常に成長を追求し続けられる方です。失敗を失敗で終わらせず、次への学びへと変えていける柔軟性、そして個人の成果だけでなく、チーム全体への貢献を考えられる視点が不可欠となります。

社内には「遠慮はせず、配慮はする」という文化が根付いており、「顧客と一緒に未来をつくっている」という実感を得ながら、年齢に関係なく誰もが挑戦できる風土があります。一方で、自ら考えず答えを欲しがる方や、自分の経験に固執してしまう方、チームではなく個人競技で仕事を進めようとする方は、私たちのスタイルには合わないかもしれません。経営を自分ごととして捉え、お客様の業務改善に貢献することを楽しめる。そのような方と共に、会社の未来を築いていきたいですね。

編集後記

佐藤代表の話から見えてくるのは、「なんとなく」をデータという客観的事実で解決しようとする真摯な姿勢だ。「動きのデータ化」は単なる生産性向上のツールではなく、誰もが納得感を持って成長できる土壌を作るための哲学でもある。製造業の技術継承から、介護、教育といった未来の社会基盤まで、その技術が見据える領域は広い。個人の成長が組織の成長、ひいては社会の活力となる。アキュイティーの描く未来は、希望に満ちている。

佐藤眞平/1973年東京都生まれ。東北大学大学院修士課程修了。1997年より画像処理ベンチャーにて10年間活動の後、大手SIer、再度ベンチャーでの新規事業担当責任者を経て2015年にアキュイティー株式会社を設立、代表取締役CEO兼CTOに就任。画像AIによる技術のデータ化を通じた生産効率および品質向上事業を確立。また、高精度な3次元変位変形計測システムにおける精度保証のISO基準策定にも注力している。