※本ページ内の情報は2025年9月時点のものです。

株式会社digdigは、面倒な手間なく服が売れるフリマアプリ「digdig」と、法人向けSNSコンサルティング事業を展開する企業だ。アパレル業界が抱える大量廃棄問題に真正面から向き合い、「お洒落を持続可能に」という壮大なミッションを掲げる。出品の手間と価格面の不満という、二次流通が抱える根深い課題をテクノロジーで解決する同社のサービスは、革命的だ。

代表取締役の楊承峻氏は、海外で過ごした幼少期の体験から得た哲学を胸に、大学卒業と同時に起業。その情熱の源泉と事業の未来像について話を聞いた。

「世界を良くしたい」幼少期の体験が導いた起業への道

ーー楊代表の生い立ちと、現在の事業を支える原体験についてお聞かせください。

楊承峻:
私は日本で生まれ、小学校から中学校までを韓国、高校時代をシンガポールで過ごしました。現在の事業の根底にあるのは、韓国の日本人学校に通っていた頃の原体験です。

家庭では韓国、学校では日本の文化に触れる中で、当時はまだ複雑だった日韓関係を肌で感じることが多くありました。公園で日本の友人と遊んでいると、現地の子どもたちから領土問題を突きつけられて睨み合いになったり。そうした経験を通じて、幼心に「どうすれば世界はもっと良い場所になるのだろう」と考えるようになったのです。

私なりに出した答えは、「相手を思い合える人が増えれば、世界の平和につながる」というシンプルなものでした。そして、他者を思いやるためには、まず自分自身が心から満たされている必要がある。私にとってファッションは、自分にベクトルを向け、自分をご機嫌にし、幸せにしてくれる大切なツールです。だからこそ、誰もがもっと気軽にファッションを楽しめる環境をつくることで、人々が心を満たし、その結果として優しさのベクトルが他者に向く。そんな世界を実現したいという思いが、私の事業の原点となっています。

ーーいつ頃から「起業」を考え始め、どのような準備をされてきたのですか。

楊承峻:
「人々が当たり前のように使うファッションプラットフォームをつくりたい」と、企業を具体的に意識し始めたのは、高校3年生のときです。その瞬間に、大学卒業と同時に起業することを固く決意しました。

そこからは、すべて逆算です。大学の4年間は、スタートアップ企業でのインターンシップに没頭しました。株式会社ZOZOテクノロジーズ(現・株式会社ZOZO NEXT)をはじめとする企業で、事業の立ち上げやグロースの現場を肌で学び、修行を積ませていただきました。そして卒業後、一切の迷いなく現在の会社を立ち上げたのです。

しかし、創業後は試行錯誤の連続でした。法人向けSNSコンサルティングで経営基盤を支えながら、いくつかのファッション関連サービスに挑戦してはピボットを繰り返し、2023年にようやく現在の「digdig」へたどり着きました。困難の連続でしたが、私は困難を「会社が成長している証拠」だと前向きに捉えています。自分たちが快適だと感じるコンフォートゾーンに留まっていては成長はありませんから、常に挑戦し続けるのみです。

手間なく高値売却を実現。フリマの常識を覆す「digdig」

ーー「digdig」はどのようなサービスですか。

楊承峻:
アパレルは、世界で2番目に環境を汚染していると言われる産業です。大量の服がつくられる一方、日本では家庭から出る衣類の約7割がゴミとして捨てられています。このままでは、私たちの大好きなファッションを将来楽しめなくなるかもしれない。私たちは、衣類がゴミではなく“資産”として循環するインフラをつくることで、この大きな課題を解決したいのです。

「digdig」は、既存のフリマアプリと古着買取サービスの「いいとこ取り」を実現した、新しいサービスです。フリマは高く売れる可能性がある半面、出品の手間が大きい。買取は手間が少ないものの、価格に不満が残りやすい。この二次流通の“不”を解消するため、「digdig」では出品者が売りたい服を送るだけで、面倒な作業を私たちがすべて代行し、希望の価格で販売できる仕組みを提供しています。

ーーなぜ、そのようなサービスが実現できたのでしょうか。

楊承峻:
撮影・採寸・原稿作成といった「ささげ」と呼ばれる一連の業務は、人手で行うと莫大なコストがかかります。私たちはこの領域の効率化こそが事業の核だと考え、AIをはじめとするテクノロジーの活用に徹底的に投資しています。これが、出品者の手間を省きながら、事業として成立するコスト構造を実現できている理由であり、私たちの競争優位性の源泉です。

偉大なプロダクトは偉大なチームから。共に未来をつくる仲間を求めて

ーー貴社では、どのような資質を持つ方が活躍されていますか。

楊承峻:
活躍しているメンバーには、3つの共通点があると感じています。1つ目は、人間として素直で誠実な「ピュア」な姿勢。2つ目は、相手の立場で物事を考える力。これは弊社のバリューである「イエローハート」にもなっており、あらゆる業務で重要視しています。

そして3つ目が、精神的な「タフさ」です。これは単にスキルが高いということではなく、事業を前に進めるために、踏ん張れるべきところでしっかりとコミットできる強さを指します。

ーーどのような方と一緒に働きたいとお考えですか。

楊承峻:
特定の業界経験は問いません。それよりも、自分で目標を定め、その達成のために行動し、実際に何かを成し遂げた経験を持つ方を求めています。私たちが目指すのは、社会に大きな価値を提供し続ける、サステナブルな企業です。そのためには、互いに背中を預けられる強い経営チームが不可欠です。私たちのビジョンに共感し、共に未来へ走ってくれる仲間と出会いたいですね。

100年後もおしゃれを楽しめる未来へ

ーー具体的な目標や今後の展望についてお聞かせください。

楊承峻:
私たちのミッションは「オシャレを持続可能にするインフラをつくる。」ことです。このミッションを、より大きく、より早く社会実装していくことに全力を注ぎます。具体的なマイルストーンとして、4年後に「digdig」のGMV(流通取引総額)で100億円以上という目標を掲げています。より多くの衣類がゴミにならず、次の持ち主や新たな資源として循環し続ける仕組みを、必ずつくり上げます。

ーー最後に、これから新たな挑戦を志す読者へメッセージをお願いします。

楊承峻:
今はインターネットやAIを使えば、あらゆる“正解”を瞬時に知ることができる時代です。しかし、本当に大切なのは、見つけた正解に自分を合わせることではなく、「自ら選んだ道を、どうやって正解にしていくか」という自分自身の「軸」を持つことだと、私は信じています。

周りの声に惑わされず、自分で考え、自分の選択を信じて行動すれば、必ず未来は拓ける。私たちも「お洒落を持続可能に」という自分たちが信じる未来に向かって、ただひたすら走り続けます。この記事を読んで少しでも共感してくださった方がいれば、ぜひ一緒に、この壮大な挑戦の伴走者になっていただけたら、これほどうれしいことはありません。

編集後記

幼少期に抱いた「世界を良くしたい」という純粋な思い。それを、大好きな「ファッション」という領域で、極めて現代的かつ合理的なビジネスとして昇華させる楊氏の姿に、新時代のリーダー像を見た。アパレル業界の負を真正面から見つめ、「100年後も人々がおしゃれを楽しめるように」と語るその視線は、遥か未来を見据えている。テクノロジーとSNSを駆使し、偉大なチームと共に壮大なビジョンに挑む同社の挑戦から、今後も目が離せない。

楊承峻/1996年、韓国籍の両親のもと日本(大阪)で生まれる。小学校から中学校までを韓国、高校時代をシンガポールで過ごす。大学在学中に株式会社ZOZOテクノロジーズ(現・株式会社ZOZO NEXT)で新規事業の立上げに参画。大手からスタートアップまで計4社で経験を積んだ後、2019年に株式会社digdig(旧社名:株式会社FUNEE)を創業。明治大学大学院 経営学研究科 経営学専攻修士課程修了。