
「商品情報を整理し、誰もがアクセスしやすく使いやすい形にする」をミッションに掲げ、事業を展開しているLazuli株式会社。同社は商品情報の活用を通して、企業のDXやマーケティング、営業活動などを支援している。
今までにないサービスで市場を開拓する代表取締役の萩原静厳氏に、創業の経緯や事業の詳細、目指す未来などを聞いた。
「商品情報の整備は全ての企業の課題」という思いから起業を決意
ーー起業するまでの経緯をお聞かせください。
萩原静厳:
新卒でリクルートへ入社し、その中でビッグデータ解析のプロジェクトなどを担当しました。2010年代当時、ビッグデータを解析するツールがアメリカで登場したのを見て「これからはビッグデータ市場が大きくなるだろう」と確信したことを覚えています。
その後リクルートを退職し、自身でAIコンサルティング事業を手がけていたときのことです。お客様に商品情報について尋ねた際「顧客のデータはあるけれど、商品データが手元にない」や「商品情報を集めるのに1か月かかる」など、大企業であっても商品データをきちんと整備できていない現状を知りました。
商品データの整備に時間がかかるせいで、AIのアルゴリズムを組むこともままならない企業が多数ある。このときに、商品データの整備は世の中の企業共通の課題だと気づき、Lazuli株式会社の立ち上げを決意しました。
商品データを統合・加工・エクスポートできるプラットフォームを提供

ーー事業内容について教えてください。
萩原静厳:
弊社は、企業が持つ商品に関わるさまざまなデータをより使いやすいように統合・加工し、エクスポートできるプラットフォーム「Lazuli PDP(ラズリ プロダクトデータプラットフォーム)」を手がけている会社です。
ほかにも、リサーチとデータ提供を行う「外食AIリサーチ」というサービスを手がけており、こちらは早稲田大学でも導入されています。飲食店メニューの注文データを通して、メニュー価格や売上数量の変化を時系列で分析し、最終的にインフレ指標の評価など経済分析の研究に役立ててもらうのが目的です。
ーー貴社のサービスはどういった企業で活用されていますか。
萩原静厳:
弊社のサービスは、商品データの整備に悩んでいる大企業のお客様によく利用されています。商品データや商品マスターに着目した会社はほかになく、このエッジの効いたコンセプトのサービスに興味を持ってくださる企業は非常に多いです。
たとえば大手スーパーマーケットのベイシアにも弊社のサービスは導入されており、導入後にECの売上が12倍、取扱商品数が120倍、商品データ整備にかかる人的工数は70%減を達成するなど、高い成果を残しています。
現在は小売業などBtoC事業者への提供がメインとなっていますが、今後は資材や工具などを扱うBtoB企業向けにサービスを展開する予定です。
「海外展開」と「サービスの認知拡大」の2つに注力し世界的企業を目指す

ーー組織としての強みや求める人材像を教えてください。
萩原静厳:
組織の強みは、グローバル展開を見据えて、国際色豊かなメンバーがそろっていることです。プロダクトをつくっているエンジニアの半分が外国籍の社員で、エンジニア兼営業の社員もいれば、エンジニア一本で活躍している社員もいます。
海外でチャレンジしたい人が多く、これから海外展開に向けて動いていくことを考えると、海外志向の人材がどんどん来てくれると嬉しいですね。
また、弊社が手がけている「PDP(プロダクトデータプラットフォーム)」という領域のサービスは非常にユニークなもので、マーケットがまだありません。そのため「自分たちでマーケットをつくろう」という意識を持ち、能動的に動ける人材も求めています。
ーー今後の注力テーマと展望をお願いします。
萩原静厳:
弊社のサービスは世の中のビジネスユーザーにまだあまり理解されていない部分も多いので、どのような価値を提供している会社なのか、しっかりと伝えていくのが注力テーマの1つです。
もう1つが、グローバル展開を進めることです。実際に2年ほど前から海外のイベントに参加し、海外のお客様とリアルで対話する機会も増やしてきました。今後は僕たちのサービスをどのように海外で展開し、どうすればお客様に喜んでもらえるのかをより綿密に練っていきたいと思っています。
また、ECの分野でいえばAmazon、検索の分野でいえばGoogleがトップ企業ですが、こういった世界トップ企業と肩を並べられる存在になるのが今後の展望です。
そして、一般消費者もビジネスユーザーも、弊社のサービスを通してワンクリックで商品情報が手に届くような世界をこれからつくっていきたいです。
編集後記
「PDP(プロダクトデータプラットフォーム)」という新たな領域のサービスで、企業の課題を解決するLazuli株式会社。同社が開拓しているのは、今までになかった全く新たな市場であり、同社の取り組みは企業のDXを大きく推進する可能性を秘めている。
今後は海外展開も見据えているとのことで、同社がAmazonやGoogleと肩を並べる日がくるのを楽しみに待ちたい。

萩原静厳/1979年東京生まれ。東京工業大学大学院情報理工学研究科で修士号取得。2005年に株式会社リクルートへ入社、マーケティング、サービス開発、ビッグデータ解析のプロジェクトを担当。2012年より6年間にわたり東京大学松尾研究室との共同研究を主導。2014年にビッグデータエバンジェリスト、2015年にスタディサプリAI研究所を立ち上げ、主席に就任。2018年、株式会社トレタへ入社。データ部門責任者兼データサイエンス研究所長を務めるかたわら、自身の事業としてAIコンサルティングを実施。2020年、Lazuli株式会社を共同創業、代表取締役(CEO/CTO)に就任。