※本ページ内の情報は2025年10月時点のものです。

2027年に創業100周年を迎える、老舗塗料メーカーの斎藤塗料株式会社。高い技術力と顧客のニーズに寄り添う開発力を強みとしており、特殊塗料の1つ「ウレヒーロー」はSNSで大きな話題を呼んだヒット商品として知られる。

同社を牽引するのは、大手ゲーム開発会社を退職し、家業を継ぐために同社へ入社し、現在取締役を務める菅彰浩氏だ。今回、同氏にこれまで取り組んできた社内改革や事業の詳細、今後の展望などを聞いた。

ディー・エヌ・エーのベンチャー的な働き方が、現在の中小企業経営にも活かされている

ーー今までの経歴を聞かせてください。

菅彰浩:
斎藤塗料に入社する前は、ゲーム開発会社の株式会社ディー・エヌ・エーでゲームプロデューサー職を務めていました。その後2018年4月、家業を継ぐために弊社へ入社しました。

ーーディー・エヌ・エー時代に学んだことについても教えてください。

菅彰浩:
ディー・エヌ・エーで学んだ多くのことが、現在にも活かされています。たとえば、ディー・エヌ・エーでは「誰が言ったのか」ではなく「何を言ったのか」を重視し、意思決定する風潮がありました。役職にとらわれず自由に意見できる会社は、若手も力を発揮しやすいと思います。

私自身も若手には自分で考え行動し、自律してほしいと思っているので、年功序列ではない組織づくりを意識しています。

また、ディー・エヌ・エーの創業者である南場智子さんは、周囲のノイズや過去の経験に振り回されず、目の前の仕事に集中することを提唱しています。この考え方を参考にし、弊社でも目の前のお客様だけに集中することを意識してきました。

そのほか、弊社は中小企業なので1人で何役もこなさなければいけませんが、これは幅広い業務を1人で担当するディー・エヌ・エーのベンチャー的な働き方と似ており、参考になる点が非常に多いと感じています。

BtoC向け塗料「ウレヒーロー」を看板に、BtoB向け事業の基盤を固めていく

ーー貴社の取締役に就任してからは、どのような社内改革を手がけてきましたか。

菅彰浩:
当時は社内の簡単な業務プロセスすら構築できていない状態だったので、まずはそれぞれの社員が必要最低限の業務に、しっかりと取り組める環境づくりから始めました。

たとえば、社内での情報共有が上手くいっていないという課題に対しては、ホワイトボードに情報を書き出して、情報を全員に漏れなく共有できる状態へ改善したのです。

その上で、Googleカレンダーを導入するなど必要に応じてITツールを導入してきました。今後も、積極的にITツールを導入・活用していく予定です。

そのほか、今まで行われていなかった朝礼を開催したり、リーダー同士の会議を増やして各部署の課題について話し合ったりといった取り組みも行いました。

ーー事業内容について聞かせてください。

菅彰浩:
弊社は産業機械のほか、パソコンやデジカメ、カーナビなど金属用のプライマー塗料を製造・販売している会社です。

加えて、BtoC向け商品として「ウレヒーロー」という塗料も手がけています。同商品は柔軟性や伸縮性に富んでいることから、フィギュアの塗料などサブカル・ホビー用としてよく使われているのが特徴です。

ウレヒーローを開発・販売した当初は売れ行きがなかなか伸びず苦戦していましたが、SNSでのPRに力を入れたところ大ヒットしました。

日本DIY・ホームセンター協会が主催する「JAPAN DIY HOMECENTER SHOW 2022」の日本DIY商品コンテストで経済産業省製造産業局長賞と新商品一般人気投票部門第1位を受賞するなど、高い評価を受けている商品でもあります。

「ウレヒーロー」のおかげで会社の知名度も上がりましたし、今後は同商品を看板商品に据えながら、本業のBtoB事業をより強化していきたいと思っています。

人々から選ばれる商品を生み出すためには、社員が幸せであることがまず重要

ーー今後の注力テーマを教えてください。

菅彰浩:
1つは、東南アジアでの塗料の拡販です。タイの工場と協力して塗料の拡販を進めるなど、東南アジアでの展開に力を入れているところです。

日本の市場は今後どうなるのか分からない部分も多いですし、海外を視野にBtoBとBtoC両方の事業を伸ばしていきたいと思っています。

また、現在は非効率な社内会議が多いので、効率化を進めることにも注力したいです。事前にしっかりと資料の準備などをして、今まで1時間かかっていた会議を30分で終わらせるようにするなど、濃い会議ができるよう取り組んでいきます。

そのほか、どんどん経験を積んでもらい、マネージャーなどリーダーを務めてもらえるよう取り組んでいくのも1つのテーマです。人は自分で意思決定して挑戦することで成長できると思うので、責任を持つ機会を若手にもどんどん提供していきます。

実際に弊社の若手社員たちは、展示会の開催を主導したり、在庫データの管理方法の改善提案をしたり、積極的に挑戦してくれる人が多いです。失敗は悪いことではありませんし、会社として挑戦する人を応援していくつもりです。

ーー最後に、今後の展望をお願いします。

菅彰浩:
100周年を迎えるにあたり、実績を着実に積み重ねながら、会社を収益体質にどんどん変えていくのが目標です。

また、会社経営をしていると常にいろいろな問題が起こりますが、何が起きても「きっと何とかなるだろう」という強い気持ちを持つこと、そして何よりも社員たちの幸せを1番に考えることを忘れずにいたいと思っています。

世の中の役に立ち、人々から選ばれる商品をつくるためには、その会社で働く人たちが幸せでなければいけません。そのためまずは、社員たちを盛り上げ、幸せにできる会社を目指していきます。

編集後記

老舗メーカーとして高い技術力を持ちながら、SNSを駆使して「ウレヒーロー」のPRを成功させるなど、伝統と新しさの両方を兼ね備えている点が斎藤塗料の強みだ。東南アジアへの拡販など、さらなる成長に向けて動き出している同社。挑戦を厭わない菅取締役率いる同社なら、海外という新たな市場でも粘り強くチャレンジを続け、きっと成功の糸口を見つけてくれるはずだ。

菅彰浩/大学を卒業後、人材サービス会社で営業職を経験。株式会社ディー・エヌ・エーへ転職後、ゲームプロデューサーを務める。その後、家業の斎藤塗料株式会社を継ぐために事業継承し、現在取締役を務める。