※本ページ内の情報は2025年10月時点のものです。

創業38年の歴史を持ち、金融機関をはじめとする大手企業を支えるセントラルソフト株式会社。システム開発からインフラ構築、IT運用までをワンストップで提供し、顧客に寄り添う提案力と時代を読む柔軟性を強みとしている。同社を率いるのは、一度は家業を継ぐことを考えなかったものの、32歳で経営者になることを決意し、働きながら大学院でMBAを取得した代表取締役社長、古賀健太郎氏だ。トップダウンからボトムアップへの組織改革、そして「従業員第一主義」を掲げ、人と人とのつながりを何よりも大切にする同氏の哲学と、会社が描く未来像に迫る。

継ぐ気はなかった家業へ 若き日の挑戦と決意

ーーもともと家業を継ぐお考えはあったのですか。

古賀健太郎:
いいえ、大学に入るまでは全く意識していませんでした。もし継ぐつもりであれば、IT系の情報学部に進んでいたと思います。政治経済が好きだったという理由で経済経営学部に進みましたが、特に経営がしたくて選んだわけではなかったです。

経営者を意識したのは、就職活動の際に父から「どうせならうちの会社に来い」という話になり、そのときが初めてでした。入社する際には、いずれは自分が経営を担うのだろうと考えていました。ただ、新人研修や現場配属は同期と全く同じようにスタートし、28歳頃まで周りと一緒でしたので、当時はそれほど強く意識していなかったかもしれません。

ーー社長に就任された経緯をお聞かせください。

古賀健太郎:
本当に唐突に「35歳から経営者になるか」と直接言われました。その場で即答はせず、少し考えさせてほしいと伝えました。経営を本格的に学ぶために大学院に通わせてほしいと依頼し、卒業と同時に就任することを決めたのです。

ーー大学院では自社の事業計画を制作されたそうですが、どのようなものだったのでしょうか。

古賀健太郎:
多くは架空の企業をテーマにしますが、私は自社を題材に中長期経営計画を発表して卒業しました。漠然と組織をトップダウンからボトムアップに変えたいという思いはありましたが、大学院でリーダーシップや財務などを体系的に学ぶ中で、そのための具体的な手法や仕組みづくりの引き出しが増えていきました。教授から厳しい指摘を受けながら1年かけてつくり上げたその計画が、今の経営の礎になっています。

社員が主役の会社へ 就任後に着手した組織改革

ーー社長にご就任後、まずどのような改革から着手されたのですか。

古賀健太郎:
就任前は典型的なトップダウン経営の組織でしたが、現場の意見をもっと活かせば会社はさらに良くなると感じていました。そのため、現場の意見を吸い上げるボトムアップの組織への転換を目指したのです。具体的には、会社の考えや目指す方向性を共有するための「半期報告会」を開始、資料も社内公開し、見える化を行いました。さらに、従来は売上数字だけだった目標設定を、達成までのプロセス自体を各本部が考える形に改めていきました。

ーー改めて、貴社の事業内容について教えてください。

古賀健太郎:
弊社はシステム開発、インフラ構築、IT運用管理の3つを柱としています。ハードの土台となるインフラ構築から、その上で動くソフトウェア開発、そして全体の運用保守までを一貫して手がけているのが特徴です。もともと親会社が国際通信事業を手がけており、その取引先であった銀行や商社を分社独立の際に引き継いだ経緯があります。そのため、創業当初からメガバンクをはじめとする大手金融機関と直接取引があり、その信頼関係が今も続いています。

ーー事業を展開する上で大切にされていることは何ですか。

古賀健太郎:
お客様から「Aというものをつくってほしい」と依頼されたとき、ただAをつくるのではなく、その背景にある「なぜAが必要なのか」を考えるよう社員に伝えています。お客様の業界を知り、私たちが持つ最新技術を理解することで、「そもそもBの方が良いのではないですか」と本質的な提案ができるようになります。お客様に深く寄り添う姿勢が私たちの強みです。また、組織としての強みは「従業員第一主義」を掲げ、人と人とのつながりを大切にする文化が根付いていることです。まず社員自身が満たされていなければ、お客様のために良い仕事はできないと考えています。各現場で「共創会議」という改善活動を毎月行い、チームのメンバー全員で目標を設定するなど、社員の主体性を尊重する取り組みが、風通しの良い組織風土につながっています。

ーー若手の育成で特に力を入れていることはありますか。

古賀健太郎:
“セントラルソフトはあなたを育てます”というメッセージの通り、新人の育成には特に力を入れています。入社後5年目まで続く階層別研修や、新入社員一人ひとりに先輩がつく「ブラザー・シスター制度」などを通じて、スキル面だけでなく人間的な成長もサポートしています。また、意欲さえあれば2年目からでも管理職研修に参加できるなど、挑戦できる環境を整えています。

1000人規模のエコシステム構想 セントラルソフトが描く未来

ーー今後の展望として、どのような中期計画を立てられていますか。

古賀健太郎:
セントラルソフトを中心とした「エコシステム」を構築したいと考えています。利益をただ追求するのではなく、その利益を再投資して、志を持つ社員に新たな分野を任せ、子会社として独立させていきたい。将来的には教育事業にも進出し、そこで育てた優秀な人材がグループで活躍し、さらに新たな事業を生み出していく。このような循環する仕組みをつくりたいと考えています。

ーー具体的な目標があれば教えてください。

古賀健太郎:
次の9カ年計画では、グループ全体で従業員1000人、7社体制を目指します。その達成のため、M&Aも視野に入れつつ、グループの規模を拡大していく計画です。また、外国籍人材の登用や、時間的な制約でフルタイムで働けない主婦/主夫やシニアの方々がIT業界で活躍できるような仕組みづくりにも、これから挑戦していきたいと考えています。

ーーどのような方々と一緒に働きたいとお考えですか。

古賀健太郎:
自らの「やりたいこと」を見つけ、それに向かって学び、挑戦し続けられる方と一緒に働きたいです。ただ、一人で成し遂げられることには限界があります。だからこそ、私たちの価値観でもある「人と人とのつながり」を大切にし、チームで目標を達成することに喜びを感じられる人が、弊社には合っていると思います。

ーー最後に、この記事の読者である若い世代へメッセージをお願いします。

古賀健太郎:
まずは、自分が本当に「やりたいこと」を見つけて、それに挑戦してほしいです。儲かりそうだからという理由だけで始めたことは、困難にぶつかったときに乗り越えられません。しかし、誰かの役に立ちたいというような純粋な思いがあれば、本気になれるうえ、どんな壁も越えていけるはずです。一人でできることには限界があるため、仲間を、そして人を大切にすることを忘れないでください。

編集後記

「社長の仕事は人を集め、夢を見せること」と語る古賀氏。その言葉通り、自ら全国を飛び回り学生に語りかけ、社員一人ひとりの声に耳を傾ける。その情熱の源泉は、「やりたいこと」への純粋な探究心と、仲間を大切にする温かい心にあるのだろう。

トップダウンで築かれた強固な事業基盤に、ボトムアップで育まれた社員の主体性が融合したとき、同社はIT業界に新たな価値を生み出すエコシステムの中核となるに違いない。セントラルソフトの次なる挑戦から目が離せない。

古賀健太郎/1981年東京都生まれ。大学卒業後、2004年にセントラルソフトに入社し、SEとして銀行システムの開発を経験。2008年から営業・管理職に従事し、2013年に取締役就任。2017年に中央大学大学院戦略研究科を卒業しMBAを取得。2017年6月に代表取締役社長に就任。