
1924年の創業以来、株式会社砂原組は地元・広島の建設会社として「安心で住みやすい街づくり」をリードしてきた。今回、2016年に代表取締役社長に就任した砂原傑氏に、次の100年に向けて注力すべきテーマや現場の効率化、働き方改革について話をうかがった。
社長就任後も社員からの「ダメ出し」に感謝
ーー貴社に入社された経緯からお聞かせください。
砂原傑:
弊社はもともと私の曽祖父が創業した会社です。私が大学を卒業後、電気工事会社に就職した頃は叔父が社長を務めていました。次の社長について話し合われた際、「創業者の砂原家に戻そう」ということになったそうです。
経営を継ぐつもりはまったくなかったのですが、叔父から声をかけられたことがきっかけで、2012年に弊社へ入社しました。
入社後は周囲に「特別扱いはしないでほしい」とお願いし、他の社員と同じ立場で働くことを選びました。担当は、土地の提案から建築まで携わる民間営業です。営業先が決まっていない状態から飛び込み営業をくり返し、一人の営業担当として汗を流しました。
代表取締役社長に就任したのは4年後の2016年です。もっとも、社長になったからといって急に偉くなったわけではありません。むしろ周囲に支えられ、助けられてきました。ときには社員からダメ出しされることもありましたが、そうした環境に感謝しています。
建築・土木事業に加え文化財の修復にも尽力
ーー貴社の事業内容をご紹介ください。
砂原傑:
2024年に創業100周年を迎えた弊社は、現在「建築」と「土木」という2つの事業を手がけています。賃貸・分譲マンション・住宅・店舗・公的施設などの土地の仕入れ・設計・施工管理を行う「建築工事部門」。そして、道路、橋梁、舗装、上下水道整備、河川の防災工事などを行う「土木工事部門」です。社員は約100名、建築が7割、土木が3割という比率です。
建築工事部門では、技術伝承の一環として神社仏閣のような文化財の修復も手がけています。神社仏閣部門は専任部署にしていますが、稼働が少ないときはリフォーム業務などを並行して行うこともあります。技術伝承と生産性のバランスを意識しています。
現場の効率化と社内の働き方改革を推進

ーー今後注力するテーマを教えていただけますか。
砂原傑:
現場の効率化と働き方改革です。まず現場の効率化については、売上の7割を占める民間建築事業の更なる拡大のために欠かせない取り組みです。建設業界全体で人手不足が深刻化している中で、大手企業とのJVの案件や、地元企業に依頼するケースが増えており、民間建築の需要は高い状況です。弊社のキャパシティを広げれば、需要を取り込むことができます。
そこでまず現場の効率化を推進するために、ITツールで本社と現場をつなぎ、主に現場担当者の書類業務を担う「工事支援部」を新設しました。施工管理者の業務負担を軽減しつつ、BIM/CIMについても積極的に推進し、生産性を上げることが目的です。
たとえば、一つの現場を3人で担当していたところを、現場担当者2人と工事支援部が積極的に関与する体制にすることで、より多くの民間建築案件の受注につなげます。
次に働き方改革ですが、私が社長になってからは会議のペーパーレス化、オフィスのフリーアドレス化、勤怠システムを導入し時間外労働の見える化及び改善、クラウドシステムを導入し業務効率化、全社員スマートフォンに移行し、LINEワークスなど社内コミュニケーションツールの導入などを進めてきました。現在は、働きやすい職場環境作りのためにオフィスづくり委員会の立ち上げや、生成AIの導入に向けてルール作りや社員教育などを進めております。社員には、新たに生まれた時間をより価値のある取り組みに費やしてほしいと考えています。
ーー貴社はどのような人材を求めていらっしゃいますか。
砂原傑:
人の個性は多種多様でいいと思っています。ただし、一生懸命やる姿勢だけは必要です。目的もなく仕事をしている人は成長もしにくいですし、チームにも影響が出ます。「街をつくる」という自覚を持ち、広い視野で主体的に取り組んでほしいですね。
広島の方々に頼られる会社を目指す
ーー社員の方々が感じているやりがいについて、どうお考えですか。
砂原傑:
弊社は土地の提案から建築、アフターケアまで一貫して行っているので、業務の幅が広く達成感も大きいです。さらに、地域貢献ができることもやりがいにつながっています。2018年の豪雨災害で国道2号線が崩落した際、弊社をはじめ地元の建設業者が2週間で仮復旧を果たしました。弊社はその後の本復旧も担当しています。こういった地域貢献がスピーディーに対応できるのも地元企業ならではです。
ーーご自身が地域貢献を意識されるようになったきっかけを教えてください。
砂原傑:
社長就任前の2015年に、広島青年会議所に入会したことがきっかけです。
最初は自分の成長や人脈形成が目的でしたが、活動を通じて「街のために何かをする」という考え方が身につきました。広島が元気にならなければ、弊社のような建設業も成り立ちません。社員にも「自分たちだけが良くなっていくのではなく、地域全体を良くするために頑張ろう」と伝えています。
ーー最後に、貴社の未来像をお聞かせください。
砂原傑:
目指しているのは「困ったら砂原組に」と言っていただける会社です。社員にも「頼られる存在になろう」とよく話しています。地域のインフラを支え、守り、再開発事業などを通じて「街づくり」に貢献することで広島の人々から信頼される会社を目指していきます。
編集後記
「社長になってからも、周囲の社員に支えられ、助けられてきました」という言葉に、砂原氏の謙虚な人柄がにじみ出ていた。その謙虚さは、地元・広島が元気になることで自社の発展がある、という認識からもうかがえる。広島を元気にするため、創業100周年という伝統に甘んじず変革を続ける同社の今後に注目していきたい。

砂原傑/1985年広島県生まれ。大学を卒業後、株式会社長沼電業社に入社し、電気工事の現場監督として経験を積む。2012年、株式会社砂原組に入社。入社後は民間営業として土地探しからの提案営業に従事。2016年、代表取締役社長に就任。親会社の砂原開発株式会社の代表取締役も同時に務めている。