
少子高齢化や働き方の価値観が変化する現代。企業には柔軟な組織づくりと多彩な人材の活躍が求められている。その課題に真正面から取り組んでいるのが株式会社LIXIL Advanced Showroomだ。希望者に限定した管理職や専門職への登用。毎月のアンケートによるコンディションサーベイ。9割を占める女性社員のライフステージに対応した諸制度。「お客さまの笑顔のために」というミッションの実現に向け、社員が笑顔で主体的に働ける環境を整えている。そんな同社が強みとしている「人にしかできない価値ある接客」と「デジタル」の融合とは何か。新卒社員に寄せる期待とはどのようなものか。代表取締役社長の鈴木浩之氏に話をうかがった。
新卒社員の職場を守るため入社1年で社長に就任
ーーこれまでのご経歴をお聞かせください。
鈴木浩之:
グローバル大手タイヤメーカーでの営業を経て、アデコに15年間勤務し、人材派遣や紹介に携わってきました。コールセンターの立ち上げや人材採用・教育などを担当し、2013年、LIXILとアデコが共同出資で設立した弊社に執行責任者(COO)として参画。LIXILが統合した国内の主要建材メーカー5社のショールーム機能を一手に担う弊社の立ち上げに関わり、その翌年に社長へ就任しています。
ーー就任当時、どのような心境でしたか。
鈴木浩之:
「この会社を存続させなければならない」という強い使命感がありました。当時は前社長の退任を受け、会社を存続させるか、LIXIL本体に吸収されるかの岐路に立たされていたからです。特に私にとって大きかったのは、統合後に入社してくれた新卒社員たちの存在です。彼・彼女らにとって唯一の居場所を守りたい。その思いが私の原動力でした。
ーー就任後に取り組まれたことを教えてください。
鈴木浩之:
統合によって異なる文化が混在する中、まず私が取り組んだのは組織を一つにまとめることでした。その一環として全国のショールームを巡り、社員の声に耳を傾ける「ラウンドミーティング」を実施しました。社員からは厳しい意見もありましたが、それだけ仕事に真剣に向き合っている証しだと感じました。
社員の思いを一つにするには共通のミッションが必要です。そこでまず「日本一のショールームを目指す」と掲げました。その後も社員の共感が増すように改良を重ね、現在は「お客さまの笑顔のために」というミッションに進化させています。このミッションの実現こそが、日本一への道だと考えています。
「人にしかできない価値ある接客」と「デジタル」の融合

ーー貴社の事業内容をご紹介ください。
鈴木浩之:
弊社はLIXILのショールームを全国85か所で運営し、オンライン窓口やコールセンターも展開しています。問い合わせ対応や来館予約はコールセンターが担当。ショールームでは、来館時の対応を行う受付担当者と専門知識を持ったコーディネーターが連携します。円滑な対応によって、お客さまのニーズに寄り添った住まいの提案を実現しています。
接客はタブレットを活用し、その場で正確な製品情報を提供します。社員が自宅から接客するリモート体制を確立し、繁忙期でも柔軟に対応できるのが特徴です。「人にしかできない価値ある接客」と「デジタル」の融合が、弊社の強みです。
バックグラウンドが異なる人財を集め、さまざまな制度で支える
ーー採用について、大切にされていることは何ですか。
鈴木浩之:
変化していく社会やお客さまの価値観に対応するため、バックグラウンドが異なる人財を数多く集めることを大切にしています。実際、建築やデザイン系はもちろん、文系・理系を問わずさまざまな学部出身者が在籍し、高卒新卒も活躍しています。
雇用形態もさまざまです。正社員に加え、子育てや介護などの事情に応じて、個人事業主としてはたらく道も選べます。
ーー社員の方々が働く環境をどのように整備されていますか。
鈴木浩之:
社員一人ひとりが自分のキャリアを主体的に描けるよう、選択肢の多いキャリアパスを整えています。その一つとして「チャレンジエントリー制度」があります。社員自らが様々な役職・役割へのキャリアチェンジを希望する場合、必要に応じてトレーニングの機会を提供し、キャリアアップを促進する制度です。1年間の教育工程を受け、ポジションに空きがあること、そして習熟度が認められれば、マネージャーやリフォームコンシェルジュなどの専門職への任命・登用が可能になります。若手社員も挑戦でき、現在はマネージャー職への登用は、この「チャレンジエントリー制度」で手を挙げた社員の中からのみ行っています。
また、毎月全社員に対して実施している「コンディションサーベイ」では「仕事」「仲間」「健康」の状態を5段階で可視化しています。フリーコメント欄も設けていて、このコメントは上司も私もすべて目を通し、必要に応じて保健師のサポートを仰ぐなど、社員の心身の健康も重視しています。
社員の約9割を女性が占める弊社では、ライフステージに応じた制度も整備しました。PMS(月経前症候群)の体調不良にも利用できる生理休暇や時間単位有給、短時間勤務がその例です。また、介護や子育てで土日祝の勤務が難しい社員に代わって出勤した社員には、ワークサポート手当を支給しています。育休取得率はほぼ100%で、退職率も4%前後に抑えています。
2025年6月にはオフィスを移転しました。社員だけでなくご家族にも楽しんでもらうため、芝生エリアや中央広場などを設けたことで、社員同士のコミュニケーションがより活発になっています。
10回挑戦して9回失敗しても1回の成功があればいい

ーー仕事をする上で大切にされているお考えをお聞かせください。
鈴木浩之:
最も大切にしているのは「失敗を恐れないチャレンジ精神」です。毎日が試行錯誤の連続で、過去の経験だけでは通用しないことも多くあります。10回挑戦して9回失敗しても、1回の成功があればそれでいい。その9回も、成功に必要なステップです。だからこそ社員には失敗を恐れず、どんどん挑戦してほしいと考えています。
特に期待しているのが新卒や第二新卒の社員です。前例に縛られず、柔軟に物事に向き合えるのは大きな強みといえます。まずは「できない」と決めつけず、自由な発想で積極的にチャレンジしてほしいですね。
ーー最後に、就職活動中の学生の方々にメッセージをお願いします。
鈴木浩之:
皆さんは、自分が思っている以上に大きな可能性を秘めています。若さはそれ自体が大きな力です。弊社はみなさんの可能性を広げるお手伝いができる会社だと自負しています。
学歴や経歴にとらわれる必要はありません。たとえば、大学を中退して海外を旅した経験は、行動力や異文化理解力という強みに変わります。過去に社会との関わりに難しさを感じていた経験のある方も、その経験が接客の現場でお客さまに寄り添う力になるかもしれません。弊社はそうした一人ひとり異なる背景を持つ方々を歓迎します。
「お客さまの笑顔のために」というミッションのもと、一人ひとりの背景を活かせる仕事です。お客さまの夢を形にするこの仕事に、ぜひ挑戦してください。
編集後記
「9回失敗しても1回の成功があればいい」「学歴や経歴にとらわれる必要はない」という鈴木氏の言葉は、多くの若者を勇気づけるだろう。チャレンジ精神と個性を尊重し、さまざまな制度で可能性を広げるサポートを行う同社。社会人としての知識も経験も「身につけるのはこれから」という学生にとっては、安心して挑戦できる環境と言えるだろう。そんな同社を「自らを成長させるチャンスにあふれた職場」ととらえ、どれだけ多様なバックグラウンドを持つ学生が集まるか。今後の新卒採用の動向に注目していきたい。

鈴木浩之/石川県金沢市生まれ。グローバル大手タイヤメーカーにて営業を経験した後、1998年にアデコ株式会社に入社。2013年、株式会社LIXIL Advanced Showroomの設立に併せて執行責任者(COO)として入社し、翌2014年に同社代表取締役社長に就任。女性の割合が約9割を占める同社において、社員一人ひとりの個性を重視し、異なる環境やライフスタイルでも全社員が活躍できる文化の醸成に取り組む。