※本ページ内の情報は2025年10月時点のものです。

人材不足が深刻化する中、地方企業の成長を阻んでいるのは、必ずしも事業力の不足ではない。実際には、採用や人事制度の整備といった「周辺業務の未整備」が大きな要因になっている。そう語るのが、株式会社INREVOの代表取締役、南 晴仁氏だ。採用代行支援『ヒトトレ採用』には、地方企業が本来持つ価値を最大限に引き出し、地方創生を実現させようという強い思いが込められている。サービス立ち上げの背景から、地方創生の先に見据えている社会像、経営者としての哲学まで、南氏に話をうかがった。

社会的インパクトのある事業をつくる最短ルートは「社長になること」

ーーこれまでのご経歴をおうかがいできますか。

南晴仁:
新卒でDX系のコンサルティング会社に入社し、営業として配属されました。大学時代からその会社の社長と親しかったため、「すぐに結果を出すので、早く昇進させてください」と事前に約束していました。そして入社後1ヶ月半でトップの営業成績を上げ、約束通り3ヶ月で営業部長に昇格。その後、副社長まで務めました。

私はもともと社会に大きな影響を与える事業をつくりたいと考えていました。その目的を達成する最短ルートは、意思決定を担う社長になることです。しかし前職では、そうしたビジョンが感じられず、次第に物足りなさを覚えるようになりました。

そんな折、上場を視野に入れていた株式会社Hostyの山口社長と出会い、意気投合して入社を決意。「子会社を立ち上げて自由にやってほしい」という申し出を受け、2024年に当社を設立しました。

ただし、最初から事業の柱となるサービスがあったわけではなく、実質ゼロからの船出でした。立ち上げ当初には人事部門が手薄だったため、私が採用や制度整備を担当。もともとSaaS(※)事業を志していましたが、開発体制が整わず、まずは売上をつくることを優先し、人事領域の課題解決に特化して事業を進めることにしたのです。

※SaaS(Software as a Service):ソフトウェアをインターネット経由で提供するサービス形態。月額や年額のサブスクリプション型が一般的。

優れた本業があるのに採用で損をしている地方の企業を支援したい

ーー主力サービス「ヒトトレ採用」の特徴を教えてください。

南晴仁:
「ヒトトレ採用」は、採用に関するあらゆる業務を分業制で対応するRPO(※)サービスです。料金形態は、完全成功報酬型と月額制の2種類を用意しています。後者の月額制の場合、一番安価なプランは10万円です。金額自体はRPO業界では珍しくありませんが、このプランで当社が提供するサービスは業界でも群を抜いています。単に求人広告を出すのではありません。応募があれば即座にアプローチし、企業の魅力を積極的に伝える、営業に近いスタイルが特徴です。

※RPO(Recruitment Process Outsourcing):企業の採用業務の代行・支援。

加えて、求人原稿作成、応募者対応、数値分析、改善提案までを完全に分業しています。業務のデジタル化と標準化されたプロセス設計によって、スピードと品質を両立させているのです。月額10万円の場合、業界の相場では1日20分程度の代行業務になりますが、当社では1日2~3時間稼働して、さらに採用コンサルティングや施策提案を実施。あらゆる職種で採用成果を確実に出すための仕組みづくりに注力しています。

ーー現在注力されているテーマをお聞かせいただけますか。

南晴仁:
「地方創生」に注力しています。地方の企業を訪問する中で、非常に優れた技術や事業をお持ちでありながら、それ以外の部分で損をしている企業があまりにも多いと感じたからです。

たとえば、ある自動車改造の会社は独自技術で年商も4億円と立派な実績がありました。しかし、求人方法はポスターのみで、年間休日も85日。結果、5年近く整備士が採用できずにいました。そこで当社が人事制度の整備やWebでの求人をご支援したところ、数か月で5名以上の採用に成功したのです。

このように、本業は素晴らしいのに周辺業務が追いつかず、成長が妨げられているケースは地方に数多く見られます。当社がそこを代行することで、お客様が本来持つ価値を最大限に発揮できるよう支援しています。真に価値あるものが正しく評価される社会の実現に向け、まずは「地方の採用ならINREVO」と言われる存在になりたいです。

遊びも仕事も全力で

ーーこれまででターニングポイントになったエピソードを教えてください。

南晴仁:
前職で働いていた20代半ばの頃、1〜2年かけて育てたメンバー10名が一斉に退職したことです。それまで人材マネジメントには自信があり、「誰が辞めそうか」「どこに課題があるか」も、すべて理解しているつもりでした。まったくの予想外で、非常に大きな衝撃を受けました。

この経験から「人は思い通りにならない」という現実を痛感しました。そして、既存のマネジメント理論や成功事例が、必ずしも自分に合うとは限らないと悟ったのです。自分の性格やチームとの相性を考え、自分らしいマネジメントを模索しました。その結果たどり着いたのが、「遊ぶ時は全力で遊んで、真面目にやるときは徹底的にやる」というメリハリのあるマネジメントです。

良い事業が正しく評価される社会を目指す

ーー今後、目指す社会像と貴社の展望について教えてください。

南晴仁:
私たちが目指すのは、「良い事業が正しく評価される社会」です。大きな可能性を秘めた地方企業の成長を後押しし、社会でさらに活躍できるよう支援します。そして、真に価値ある製品やサービスが、正当に評価され、広く行き渡る社会を実現したいと考えています。

また、今後は即戦力エンジニアを育成する専門スクールも展開予定です。さらに、企業の生産性向上を支援するSaaSの開発も進めており、これらの取り組みは社会課題の解決にも直結すると確信しています。

ーー最後に、南社長の哲学を教えてください。

南晴仁:
「情けは人のためならず」です。お客様や社員にも常に良いものを提供すれば、結果として信頼が返ってくると信じています。もちろん、悪意を持って接してくる相手には毅然と対応し、社員を守ることも私の責任です。誠実に事業を行えば、社会全体も正しい方向に進んでいく。そう信じて、事業と向き合っています。

編集後記

南氏の語る言葉には、現場での経験に根ざしたリアリティと、課題に真正面から向き合ってきた確かな実感があった。事業を通じて地方の企業を支援する姿勢には、単なる経営的な視点を超えた「社会の歪みに対するまっすぐな問題意識」が感じられる。合理性に裏打ちされた戦略と、人への深い洞察を併せ持つ経営スタイルは、地方に眠る可能性を引き出す強力なエンジンとなるだろう。「地方ならINREVO」という言葉が、単なるキャッチコピーではなく、現実のブランドとして認知される日もそう遠くないと感じた。

南晴仁/1997年神奈川県横須賀市生まれ、慶應義塾大学卒業後、DXコンサルティング企業に入社。入社3か月で営業部長に昇進し、副社長まで務める。在籍中は企業のイベント企画や、学校の授業にICT導入を進める自治体へのコンサルティングも手掛けた。その後、株式会社Hostyを経て、2024年に同社の子会社として株式会社INREVOを設立。地方創生を主なテーマに、企業の成長支援を推進している。