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2004年4月に設立され、個別指導教室の運営からスタートした「株式会社サクシード」。今や家庭教師の紹介に加えて、教育・福祉現場への人材支援サービスまで展開するベンチャー企業である。代表取締役社長の高木毅氏に、設立の経緯や今後のビジョンをうかがった。

社長のキャリアジャーニー「金融業界から教育業界へ」

ーー高木社長のご経歴をお話しいただけますか。

高木毅:
小学生時代を兵庫県西宮市、中高時代を福島県いわき市で過ごし、大学進学のために上京しました。新卒で証券会社に入社して2年ほど勤めたのち、家庭教師を派遣する会社に転職したことが教育業界へ足を踏み入れたきっかけです。

未来を支える子どもたちの成長に関わることにやりがいを感じていました。少し経つと、個別指導塾という業態が流行り始めたので興味を持っていたのですが、同じタイミングで前職が大手の傘下に入るという話になったので、これを機に自分の理想の会社を作りたいと思い、起業しました。

そして、教育業界のノウハウを生かせるカテゴリーとして、今後さらにシェアを伸ばすだろうと感じた個別指導の業界を選び、横浜市の港北ニュータウンに第一号店をつくりました。

ーー学生時代から起業をお考えだったのでしょうか。

高木毅:
サラリーマンを長く続けることは想定していませんでした。証券会社時代、一夜にしての資金調達や知名度アップといったインパクトのある出来事を目の当たりにしたことも大きいですね。

企業のステージが一気に変わる瞬間を体感して、いずれは自分もそういうチャレンジができるようになりたいと考えました。

事業が軌道に乗るまで――業界全体を巻き込むという発想

ーー貴社のターニングポイントはいつだったのでしょうか。

高木毅:
利益が出たら新規出店するという地道な経営をしていたので、学習塾の運営のみでは上場できていなかったでしょう。創業当時から、少子化の流れの中で従来の塾経営だけでは将来的に厳しくなるイメージがあったため、弊社は「学習塾」と「人材ビジネス」をセットにしたのです。

「教育と福祉」に特化した人材支援サービス事業を現在まで行なっていますが、競合相手になりうる他塾をお客様にしてしまうという発想は、まさにターニングポイントだと言えるでしょう。双方のニーズに応じた最適なマッチングを行なうことで、人手不足といわれている中でも業界全体の教育の質は高められていると自負しています。

ーー発想を得たきっかけがあればお聞かせください。

高木毅:
塾の経営において最も重要なことは「指導力のクオリティ」です。しかし、優れた先生を希望通りに確保することは困難で、業界全体が同様の課題を抱えていると感じました。

人材の方向性についても、進学塾は先生に高い学力を求める一方で、コミュニケーション能力や親しみを求める個別指導塾も存在します。求職者側の希望も含めて、「教育業界の人事部になろう」と社内で前向きに語り合いました。

教育分野全体の問題解決に向けて~事業拡大の意図~

ーー現在は学習塾以外の事業も手掛けていらっしゃると聞きました。

高木毅:
たとえば、一つは部活動指導員を紹介するサービスです。教員の労働環境改善は国も推進している社会的問題なので、このサービスが普及すれば、教員の負担が減り、教育の質が上がることにつながり、子どもたちのためにもなると思っています。

また、現在は保育施設や学童、放課後デイサービスの分野にも進出しています。どの事業も教員の過重労働問題を解決できる一つの手法ですので、自治体などとも協力してさらなるサービスの浸透に努めていく予定です。

ーー事業の多角化など、貴社のスピード感は特徴的に感じます。

高木毅:
クライアントが困っていることなど、現場から上がってくる声を共有して事業化するスピード感は弊社の強みです。社員には立場や年代を問わず、「アイデアは思いつきベースでいいからどんどん発言してほしい」と伝えています。

企画書コンテストも毎年実施して、事業化や将来的な取り組みへの準備につなげています。社員には、日頃からビジネスチャンスを考える癖がついているのではないでしょうか。

ーー年功序列というより実力主義でしょうか?

高木毅:
一人ひとりの意見を対等に扱っています。昇進についても年功序列にはこだわらず、個人の能力だけではなく行動評価も重視しています。社内での人間関係や発想力、リーダーシップなどに対する評価を伝えて、成長を意識してもらっています。

自分で考えることや、早い段階で責任を持つことがストレスになる人もいるため、面接ではそのようなミスマッチが起こらないように社風を説明しています。

ブレのない企業ビジョンと社会貢献の両立

ーー社員間でもコミュニケーションを重視されているのですね。

高木毅:
一時は社内における人間関係のトラブルや衝突を恐れて、私自身や会社全体が緩くなった時期がありました。目標達成ができなくても特に指摘を受けるわけでもなく、薄々と危機感を覚えていたところ、「成長できる気がしない」という理由で何人もの優秀な社員が辞めてしまったのです。

明確な指導や指摘、ディスカッションによる成長の場はやはり必要だと気付き、自分を恥じました。上司が部下を適切に評価するには、何でも言い合えるような日頃のコミュニケーションが必要ですから。

ーー今後の企業ビジョンをアピールしていただければと思います。

高木毅:
「永遠のベンチャーでいたい」と考えています。創業当初から現在の姿を想像してはいませんでしたし、数年後の姿もまだ想像できません。ただし、常に臨機応変に対応できる企業でありたいと願っています。今後も世の中のニーズを上手く捉え、新規事業も増やし、規模拡大につながることが一番ですね。

編集後記

株式会社サクシードは、人手不足や人材クオリティの低下に悩む教育・福祉業界全体における救世主的存在だと言える。若手とベテランが対等に活躍し、変化を楽しみ続ける企業の実行力は、日本の子どもたちに明るい未来をもたらしてくれるはずだ。

高木毅(たかぎ・つよし)/1967年8月16日生まれ。福島県出身。大学卒業後、国際証券株式会社(現三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社)へ入社。1994年に家庭教師専業の教育系企業へ転職。2004年、株式会社サクシードを設立し、代表取締役社長に就任。