※本ページ内の情報は2026年1月時点のものです。

オート化学工業株式会社は、ウレタン合成技術を基盤とし、建築用シーリング材の分野で高い技術力を持つ企業である。戸建住宅向けで高いシェアを誇るが、市場の変化を見据え、シーリング材以外の分野への事業構造変革を進めている。この変革を率いるのが、代表取締役社長の大熊千之氏だ。長年、営業の最前線で同社製品の価値を伝え続けてきた同氏が抱く信念、そして社員が会社を深く愛するという独自の組織文化の背景にあるものとは。同社の未来戦略と、それを支える組織づくりの核心に迫る。

へりくだる営業はするな 価値を売る信念の原点

ーーまずは、これまでのキャリアについておうかがいできますか。

大熊千之:
私のキャリアは建材関係の商社からスタートし、営業総合職として、株式会社岩田商会(現・親会社)から仕入れた製品を扱っていました。その後、ご縁があり岩田商会に移り、オート化学工業株式会社(当時・関連会社)のシーリング材を販売する部署の立ち上げに参加することになりました。

まだ製品が世に出て数年で、販路もほとんどない頃です。パソコンもない時代でしたから、電話帳でリストを作成し、飛び込み営業をかけました。この時、「買ってくれ」という姿勢ではなく、「市場調査をしている」という形で、製品の流通状況などをヒアリングすることから始めました。

社員にはよく言いますが、安易に「へりくだる営業」はしないということです。「お願いします。買ってください」ではなく、自信を持って製品を理解してもらった上で買っていただく。お客様と長いお付き合いをするには、製品の価値はもちろん、営業担当者としての人間の価値も重要です。

ーー「価値」を重視されるようになった背景について、詳しくお聞かせください。

大熊千之:
前職の建材営業の経験が大きいです。扱うものが同じだと、お客様は「いくらにしてくれる?」という話になりがちで、それでは価格競争で終わってしまいます。商品価値が同じなら、最後は「この人から買いたい」「この会社から買いたい」と思わせる、会社や人間の価値が問われると自然とわかるようになりました。価格ではなく、価値をどこに求めているのかを理解し合えるお付き合いが大事だと考えています。

会社愛というDNAと「人は財産」という経営信念

ーー貴社の組織文化や特徴についてお聞かせいただけますか。

大熊千之:
社員はみんな、本当に会社のことが大好きです。OBの先輩方も含め、「会社を何とかしたい」「もっと伸ばしたい」と考えている社員が多い。これが弊社のDNAだと思います。

創業者が「自主独立の精神でやっていこう」という思いから「オート(Auto-nomy=自立性)化学」と名付けた社名が、会社への思い入れとして受け継がれているのかもしれません。仕事のこととなると議論が白熱するほど熱心な人が多かった。今の社員たちも会議を見ていると、その熱意は変わらないと感じます。

また、組織としての特徴は、製造、研究、営業の三位一体の連携がスピーディーな点です。何かあればすぐ集まって話をし、調整する文化があります。お互いに主張はしますが、それを何とかしてあげよう、解決しようという意識が強く、協調性を持って動いています。

ーー経営において大切にされている信念をお聞かせください。

大熊千之:
「自分のやりたいことを突き詰める」ことを大切にしています。そして、諦めずに継続すること。諦めてしまったら終わりですから、とにかくひたむきにやっていくことが一番だと思います。

経営において最も大切にしているのは、やはり「人」です。会社にとって人材が宝であり、財産だというところに尽きます。

強みのウレタン技術で拓く 次の事業の柱

ーー貴社の事業の強みと、現在の事業構成について教えていただけますか。

大熊千之:
弊社のスタートはウレタンの合成技術にあります。そこからシーリング材が生まれ、今や根幹事業となっています。弊社は日本で初めて一液のウレタンシーリング材を作ったメーカーであり、その技術力、開発能力が大きな強みです。

また事業構成については、シーリング材が75%、接着剤が10%、防水材や透明樹脂関係が15%となっています。しかし、主力の戸建住宅市場は、人口減少に伴い減っていくことが見込まれるため、シーリング材一本槍では厳しい状況です。

ーー課題を踏まえた今後の事業戦略についてお聞かせいただけますか。

大熊千之:
弊社の強みであるウレタン合成技術を活用し、シーリング材以外の分野を増やしていく方針です。5年後には、特殊なウレタン樹脂の用途開発を進めたいと考えています。すでに耐候性が高くて強靭なウレタン透明樹脂の供給が増えており、これが次の一つの柱になると確信しています。

また、シーリング材事業自体も、売上は増やしつつ中身を変えていく必要があります。戸建て住宅向けの割合を減らし、これまで手薄だった土木、ビル・マンション改修といった非戸建て住宅向けの割合を増やしていく計画です。産業用途なども含め、塗り物の用途も増やしていきます。弊社の製品はもともと「長持ちする」という点において付加価値が高いため、その技術力で差別化を図ります。

そして最終的には、「オート化学の製品を使ってよかった」とお客様に喜んでいただくことを目指しています。長持ちする材料はSDGsにも貢献できますが、まずは使ってくださったお客様が満足してくれることが最も重要だと思っています。

事業拡大を支える次世代育成と組織変革

ーー今後、事業をどのように展開されていくか、具体的な目標をお聞かせください。

大熊千之:
これまでは「オート化学=戸建てのシーリング材が強い」というイメージでした。これからは「オート化学はこういうものもできるんだ」と市場での認識を変えていきたい。ウレタン系の化学合成のことで困ったときに、「オート化学に相談してみよう」と真っ先に名前が挙がるような、取引先から頼りにされる会社になることが目標です。

具体的に開拓しているのが、先ほど申し上げた土木分野、ビル・マンション改修関係です。これらは数年前から動いていますが、特に土木は保守的で時間がかかります。弊社の技術が国交省の「NETIS」(※1)のVE評価(※2)を取得したことで、ようやく認知されてきました。

(※1)NETIS(新技術情報提供システム):国土交通省が運用する、公共工事などで活用される民間開発の新技術に関する情報を集約・提供するデータベースシステム。

(※2)VE評価:NETISに登録された技術の内、従来技術より優れていることが確認されたもの。

ーー事業変革を進めるにあたり、人材育成や組織体制についてはどのようにお考えですか。

大熊千之:
今の取締役たちは優秀ですが、その次の世代を経営層として育てる必要があると考えています。弊社には会社が好きな社員が多く、中途で入った人もいつの間にか会社を好きになってくれる文化があります。ですから、そうした会社を好きでいてくれる社員を、しっかりと育てていきたいですね。

ーー最後に、貴社に関心を持つ読者へメッセージをお願いします。

大熊千之:
弊社は入ってみて初めて良さがわかる会社だと思っています。社員が会社をとても好きになれる、そんな会社です。少しでも興味を持っていただけたなら、ぜひ門を叩いてください。多くの応募を心からお待ちしています。

編集後記

「社員が会社を大好きだ」と語る大熊氏の言葉には、長年、親会社からその姿を羨望の眼差しで見てきた実感がこもる。日本初の技術力を持ちながらも、その強みに安住せず、市場の変化を見据えて事業構造の変革に挑むオート化学工業。その原動力は、熱い議論を交わしながらも互いを尊重し、会社のために一丸となる組織のDNAにある。技術力と組織愛という両輪で、同社がウレタンの可能性をどこまで広げていくのか、注目していきたい。

大熊千之/1960年東京都生まれ。1982年株式会社岩田商会に入社。東京支店にてオート製品の新規開拓に従事。2012年5月28日、同社取締役就任。同年6月、オート化学工業株式会社の社外取締役に就任。常務取締役就任を経て、2024年5月7日、オート化学工業株式会社の代表取締役に就任。1979年、川口市において吹奏楽団体「川口ウィンドアンサンブル」を立ち上げ、定期演奏会・慰問演奏など地域貢献活動を行い、現在会長を務める。