※本ページ内の情報は2025年12月時点のものです。

株式会社セントラルユニは、医療設備の設計、施工、機器・システムの開発・製造・販売を行う医療設備メーカーだ。1951年、鉄鋼関連事業を担う田中製作所小倉工場として創業。1966年に鉄鋼業で用いる産業用ガスの圧力や流量を制御する技術を転用して、医療ガス供給システムを開発し、医療業界へ参入した。現在はシップヘルスケアホールディングスのトータルパックプロデュース事業を支える医療設備メーカーとして、不動の地位を築いている。

2020年、新たな舵取り役として社長に就任したのが河村将之氏だ。同氏は2つのコア事業に加え、新たな事業ポートフォリオにも挑み、医療の未来に貢献する体制づくりに注力する。今回、74年の歴史で培ってきた強みと、未来へ続く挑戦について話をうかがった。

若き日の挑戦が拓いた社長への道

ーーご経歴をおうかがいできますか。

河村将之:
1991年に株式会社セントラルユニに入社しました。当時の本社は北九州の小倉にあり、地元企業で働けることに大きな魅力を感じたのが入社のきっかけです。

入社後は営業職として鉄鋼事業部に約7年間所属しました。溶断機やスカーフィングマシン(鉄鋼の表面を手入れする機械)を、大手製鉄所や鉄工所に納める仕事です。営業といっても、製品の設置、取扱説明、トラブル対応など、すべてを担当するため技術的な理解も必要でした。また、お客様から工場に入る際のルールや安全意識を厳しく指導され、営業としての基礎力が鍛えられたと思います。この頃に身についた現場感覚や自ら課題を解決する力は、今の仕事にも活きていると感じます。

そのあと初めて医療関連の業務を経験しました。アンプル(液体薬剤)の自動補完・供給装置や、手術器具の洗浄・滅菌装置の自動化を推進したり、医療廃棄物を保管・圧縮する装置の販売するなどコア事業の医療ガス設備とは異なる業務です。

ーーその後、社長になるまでに転機になる出来事はありましたか。

河村将之:
いくつかありますが、広島への異動が最初のターニングポイントでした。地元を離れる戸惑いがありましたが、若手の頃から責任ある仕事を任せてもらえるという社風に面白みとやりがいを感じていたので広島への異動を決断しました。

広島では7年ほど勤務し、ウォッシャーディスインフェクターという医療器材の洗浄機の営業を担当しました。当時の中核事業も医療ガス設備であったため、洗浄機は他の社員があまり扱いたがらない製品でした。それゆえ、逆にチャンスがあると考えたのです。洗浄機の販売でも鉄鋼事業部時代と同様に設置や取扱説明、クレーム対応まで、すべて担当しました。担当エリアは山口、島根、鳥取と広範囲で、特に島根や鳥取の病院へは、必要な部品を車に積んで駆けつけ、時には徹夜で対応することもありました。

洗浄機の営業をしていて、手術室の設備に関してライバルが少ないことに気づきました。そこで、並行して手術室の営業にも力を入れ、病院に通ってヒアリングを重ねました。人の動線、モノの動線などの使用状況を把握し提案につなげていったのです。やがて医療ガス設備にも力を入れていきました。

広島での実績が評価され大阪に異動し、新たにファシリティシステム部を立ち上げました。この部署では手術室や集中治療室などの高濃度知領域の医師や看護師に対して提案営業を行い、手術室関連事業を中核事業に押し上げました。

そして、前任の増田社長から2016年に取締役として経営を担うように命じられます。実は彼とは中学高校の同級生であったため、私は彼を最後まで支え抜くつもりでした。しかし、彼が突然退任することになり、その思いを引き継ぐことを決心するのですが、今から考えると私が経営者になるための取締役任命だったのだと思います。

ソフトとハードで医療の未来を支える

ーー社長就任後は、どのように事業を展開されていますか。

河村将之:
弊社のコア事業は、「医療ガス設備」と「高濃度治療域(OP/ICU/ER)設備の内装設備」で、双方トップシェアを誇る医療設備メーカーです。病院の計画・構想段階から、設計・施工、引き渡し、そして保守メンテナンスまで、全行程を一貫して対応できる点が強みであり、他社との差別化につながっています。

少子高齢化が進む中、全国の病院の約7割が赤字経営に陥っているという現実があります。この状況はもはや看過できるものではなく、新たな設備投資が困難な病院も少なくありません。そこで、私たちはこの構造変化を乗り越え、次の30年を築くために、事業ポートフォリオの抜本的な変革に着手しました。

まず既存事業では、製品の機能を本当に必要なものに絞り込み、収益性を高めています。同時に、全く新しい第三の柱として「メディカルサポート事業」を立ち上げる準備をしています。これは、病院の最大収益源である手術部門の利益改善を、私たちが開発したソフトウェアと今まで培ってきたコンサルティング力・プランニング力・エンジニアリング力で支援する事業です。分析結果に基づき最適なリノベーションを提案・実行します。さらに、実際にスタッフが病院に常駐して、お客様と一体でPDCAを回し続ける伴走型のサービスで、病院経営そのものを支えていきます。

今後は、新築から既存病院の改修へと需要が移ります。このソフトとハードを融合したアプローチが、不可欠になると確信しています。

経営理念と求める人物像

ーー今後、どのような人材を求めていますか。

河村将之:
私たちは、採用活動を「仲間探し」と称しています。特に新しい事業においては、お客様の課題に寄り添い続けるマインドを持つ、ITエンジニアと、構造設計の知識を持つエンジニアが必要です。そして、変化の時代に対応できる瞬時の判断力と軌道修正力、周囲の変化にいち早く気づき先を見通す力のある仲間を求めています。

私たちの最大の強みは「人」であり、「人間尊重、価値創造型企業」の経営理念を掲げています。さまざまな個性をもつ仲間たちが知恵を振り絞って意見を出し合う、風通しの良い組織でありながら、利他の精神を重視し、お客様の望むことを徹底的に追求し、創意工夫を重ねています。たとえ採算が合わない仕事でも、親身になって取り組む姿勢がお客様からの評価につながります。この精神を、次世代にも引き継いでいきたいです。

編集後記

鉄鋼事業で得た技術が、医療ガス設備に応用されたという話は興味深い。異なる分野の知見が結びつき、新たな価値を生み出す好例だと感じた。常に現場のニーズに真摯に向き合い、顧客との信頼関係を重視する姿勢が、同社の強みである「人」の育成につながっているのだろう。今後も、利他の精神に根差した経営が医療業界の発展に寄与していくことを大いに期待したい。

河村将之/1967年⽣まれ、福岡県出身。1991年に株式会社セントラルユニへ入社。前身の田中製作所小倉工場から続いていた鉄鋼関連事業でキャリアをスタートする。その後、広島で医療設備へ足を踏み入れ、全国を回りながら医療に関わる環境づくりに従事。大阪では責任者として新規事業であるファシリティシステム部の立ち上げを担当した。2020年4月15日、代表取締役社長に就任。