※本ページ内の情報は2026年5月時点のものです。

「出会いはイコール、運だと思っています」。長年アパレル業界の最前線で全国を飛び回ってきた株式会社大和の代表取締役社長、川島豊氏。異業種から転身した同氏が現在取り組むのは、ギフトを通じたコミュニケーションの創出だ。単なる「商品の提供」にはとどまらない。機能的価値で成長してきたカタログギフトの「情緒的価値」をいかに高めるのか。現場を重んじる経営信念と、次世代のギフトクリエーションに向けた挑戦に迫る。

出会いは「運」 現場に足を運び人と向き合う原体験

ーーまずは、これまでのキャリアの変遷からお聞かせいただけますか。

川島豊:
学校を卒業する時に強烈にやりたいものがなかったのですが、多趣味な中でファッションには興味があったため、アパレル業界の会社をいくつか受けてみようと資料を取り寄せました。しかし、資料を見るのが遅くなり、正規の申し込み期限を過ぎてしまっていたんです。それでも電話をしてみたところ、当時の札幌支店の人事担当の課長さんが偶然電話を受けてくださり、「一旦来てください」と言われました。

その結果、特別に選考の機会をいただくことができました。後で知ったことですが、その方は私の熱意やポテンシャルを買ってくださり、社内で強く採用を推してくださったそうです。通常の枠組みにとらわれず、チャンスを与えてくれたその方と出会っていなければ、今の私はありません。「出会いはイコール、運である」と強く感じた経験でした。

ーー入社後は、どのような環境で仕事をされてきたのでしょうか。

川島豊:
主に現場の最前線で仕事をしてきました。当時としては珍しく、支店勤務でありながら全国のさまざまなエリア出身の上司のもとで働く機会に恵まれまして。その後東京の事業本部へ異動し、仕事のダイナミックさや関わる人の多さに圧倒されたのを覚えています。事業本部の販売部門の責任者として着任してからの約3年間で、結果的に47都道府県すべてに足を運びました。もちろん、リモートで済ませることも可能です。しかし、私は現場へ行き、現地の人と膝を突き合わせて対話したかったのです。結局のところ「答えはすべて現場にある」という想いが根底にあります。

カタログギフトに「情緒的価値」を コミュニケーションを生む新しいギフト

ーー貴社の事業と、そこにかける想いを教えていただけますか。

川島豊:
私たちが長年主戦場としてきたカタログギフトは、「一人が複数人に、相手の好みを気にせずに楽に贈れる」という「機能的価値」によって大きく成長してきました。しかし、時代の変化とともにフォーマルギフトの市場は厳しくなっています。これからは、機能的価値だけでなく、選ぶ楽しさなどの「情緒的価値」をしっかりと付加していくことが重要です。

それを実現し、私たちがやりたいことや提供価値をお客様へ直接伝えるためのアウトプットの場として、自社のリテール事業である「PRESENTERS ROOM(プレゼンターズルーム)」という新しい直営店を立ち上げました。私たちの企業理念は、思わず贈りたくなるような贈り物を創造し、世の中の「贈る機会を増やす」ことです。選べるギフトはギフト選びが苦手な人の背中を押すサポートができ、そこに情緒的価値を加えていくことで、もっと楽しいギフトシーンを創出できると信じています。

ーー「情緒的価値」を体現するサービスとして、具体的にはどのようなものがありますか。

川島豊:
たとえば「dōzo(どーぞ)」というサービスがあります。これは100種類以上のテーマから選べるギフトで、約80名のイラストレーターとコラボしたユニークなデザインが特徴です。たとえば「三度の飯よりBEERでしょ!」といったテーマがあるのですが、相手の好みに合わせてテーマを贈ると、受け取った側はそのテーマに沿った商品の中から好きなものを選べます。

私が理想とするのはギフトからコミュニケーションが始まるシーンです。実際に私が友人から「dōzo」をもらったときの話ですが、スマートフォンで商品を選んだ後、すぐに「これを選んだよ」とスクリーンショットを添えて返信しました。そこから会話が弾んだんです。このように、「思わず贈りたくなる贈り物」をプロデュースし続けることで、世の中におけるギフトシーンそのものを広げていきたいと考えています。

出会いと主体性が組織を強くするこれからの「ギフトクリエーション」

ーー社員の方々には、どのようなことを大切にしてほしいとお考えですか。

川島豊:
まず新入社員には「出会いを大切にしてください」と伝えています。さまざまな人と出会うことで心が動かされ、自分自身の発見につながり、次の行動を生むからです。もう一つは「主体性」です。物事を自分ごととして捉え、社員一人ひとりの自己実現が会社の成長につながる組織が理想です。

ーー最後に、今後のビジョンをお話いただけますか。

川島豊:
私たちは時代の変化に対応する「ギフトクリエーションカンパニー」を目指しています。これまで培ってきたカタログギフトの強みや高い業務品質を活かし、BtoB・BtoCの両方で顧客基盤をしっかり広げていく方針です。あらゆるギフトシーンで喜んでいただけるサービスを創造し続け、贈り物をしようと思ったとき、一番に思い出していただける企業でありたいです。

編集後記

川島氏の言葉からは、アパレル時代に全国を飛び回って培われた姿勢がひしひしと伝わってきた。それは徹底した現場主義と人との対話を重んじる姿勢だ。効率化が進む現代において、同社の挑戦は非常に興味深い。カタログギフトという完成されたシステムにあえて「コミュニケーション」という情緒を組み込もうとしている。出会いを「運」と捉え、必然のビジネスへ昇華させる川島氏。同社がどのようなギフト文化を創造していくのか、今後の展開から目が離せない。

川島豊/1974年北海道生まれ。釧路公立大学卒業後、1998年総合アパレル企業の株式会社オンワード樫山に新卒で入社。支店や東京のブランド事業本部の販売部長などを歴任し、2023年に同社のグループ企業である株式会社大和の代表取締役副社長に就任。翌2024年に代表取締役社長に就任し、企業カルチャーや事業構造の変革に取り組んでいる。