※本ページ内の情報は2026年5月時点のものです。

17歳でアメリカへ渡り、19歳で起業を果たした経歴を持つ、株式会社シンクスマイル代表取締役の新子明希氏。15年連続で黒字経営を続ける中、経営理念の重要性に立ち返り、自社の組織改革に挑んだ。その結果生まれたのが、感謝を可視化する社内ツールであり、前身サービスから数えて累計2000社以上に導入されているチームワークアプリ「RECOG(レコグ)」だ。「良いサービスは良いチームから生まれる」と語る新子氏に、組織づくりの本質と、AI時代に見据える未来への展望をうかがった。

19歳での起業と「幸せの専門家」への誓い

ーーまずは、起業の背景について教えてください。

新子明希:
高校2年生の時、「日本から出たい」と思い立ち、17歳で単身アメリカへ渡りました。渡米後、現地の大学のオープンキャンパスに参加したことがあるのですが、そこである起業家が「経営者とは、従業員や顧客、株主など全員の幸せをエンジニアリングする『幸せの専門家』になることだ」と語っていたのです。その言葉に激しく感銘を受け、起業を決意しました。今でも「幸せの専門家になる」ことは私自身のライフテーマになっています。その後日本に戻り、19歳で最初の会社を立ち上げました。

ーー起業後は、どのようにビジネスを軌道に乗せていったのでしょうか。

新子明希:
最初は自分で法務局に行くなど手探りでしたが、会社を設立した帰りに「倒産のさせ方」に関する本を買って読みました。そこで、事業を続けることよりも事業を撤退する方が難しいことに気づきました。「出口」の難しさを知ったからこそ、失敗のリスクを最小限に抑える事業選定が重要だと感じ、「季節で売上高が左右されない」「原価率3割」「在庫を持たない」という3つのルールを決めました。この原則を守りながらさまざまな商材を委託販売で売り、15年間一度も赤字を出さずに経営を続けることができたのです。

「何のために稼ぐのか」経営理念との出会い

ーー順調に利益を出していた中で、転機はありましたか。

新子明希:
どんなものでも黒字にするスキルは身につきましたが、34歳頃になって「いかに楽しく売るか」だけでなく、「何のために稼ぐのか」という原点に立ち返るようになりました。「経営理念」という言葉に出会い、株式会社カヤックの代表取締役CEO、柳澤氏の元へ相談に行ったことも大きなきっかけです。そこから、私にとって「いい会社とは何か」を考え抜きました。

ーー社長が考える「いい会社」とは、どのようなものですか。

新子明希:
私なりの結論は、「入社した時よりも、辞める時の自分の方が成長したと思える会社」です。そのためには、失敗も成功も含めてさまざまな経験をしてもらう必要があります。最低限チャレンジングな人材を集め、挑戦を後押しすべく、シンクスマイルでは「したことない。をへらす」という経営理念を掲げました。この理念に共感し、「自分も新しいことに挑戦したい」と願う意欲的な人材が集まるようになったのです。

良いサービスは良いチームから生まれる

ーー貴社の主力サービスである「RECOG(レコグ)」はどのようにして生まれたのですか。

新子明希:
自社のために策定した理念や行動指針(バリュー)を、どうすれば現場に浸透させ、実践してもらえるかを考えたのがきっかけです。そこで、行動指針を実践した社員に対し、ウェブ上で「ありがとう」のコメントと共にバッジを送り合うゲームのような仕組みを社内向けにつくりました。すると、100人規模の会社で年間3万回の「ありがとう」が飛び交い、会社の空気が劇的に改善。この取り組みが2012年にNHKの番組で特集されると、数万人規模の大企業からも「ぜひ使いたい」と多くのお問い合わせをいただき、「これは世の中の課題解決になる」と確信し、プロダクト化へと踏み出しました。

ーーサービス設計において、最も重要視していることは何ですか。

新子明希:
「良いサービスは良いチームから生まれる」というポリシーです。良いチームは良い文化を育て、良い文化は良いコミュニケーションをつくります。だからこそ、私たちは最初の段階からコミュニケーションを設計していく「コミュニケーションエンジニアリング」を提唱しています。ただ何でも褒め合うのではなく、会社の価値観である行動指針を実践した人を可視化し、称賛する仕組みにこだわっています。定期的に評価し、経営層からのメッセージとして表彰することが、強い組織づくりに繋がるのです。

人と組織が自然に「成長しちゃう」プラットフォームへ

ーー今後の展望について教えていただけますか。

新子明希:
現在、私たちは2028年に向けたビジョンとして「人と組織が成長しちゃうプラットフォーム」を目指しています。上から強制的に「成長させる」のではなく、ついつい楽しくて自然と「成長しちゃう」という空気感がポイントです。これまでに蓄積された3000万回のコミュニケーションデータとAIをかけ合わせることで、AIが組織の状態を把握し、自律的に現場の活性化やマネジメント層への提案を行う「組織を成長させるOS」へとプロダクトを進化させていきます。

ーー最後に、貴社の社内カルチャーや採用への思いをお話いただけますか。

新子明希:
弊社は女性の活躍が目覚ましく、HR tech事業部の責任者も女性ですし、現在産休・育休中の女性社員も3名おり、全員が復帰予定です。また、北海道から広島まで全国に社員がいるほぼフルリモートの環境ですが、「MetaLife」というバーチャルオフィスに毎日出社し、音声で活発にコミュニケーションを取りながら仕事をしています。日本中のどこに住んでいても構いません。「したことない。をへらす」という私たちの理念に共感し、共に挑戦してくれる方は、ぜひ力を貸してほしいです。

編集後記

新子氏との対話で幾度も登場した「幸せの専門家」という言葉。その裏には、組織のカルチャーと人の成長に対する深い愛情と、ロジカルなコミュニケーション設計への確信があった。自社の課題解決から生まれた「RECOG」が、いまや累計2000社以上の企業のカルチャーを変革している事実は、新子氏の掲げる理念がいかに本質的であるかを物語っている。AI時代において、人の温もりや共感を可視化し、自然と「成長しちゃう」未来を描くシンクスマイル。同社の進化と挑戦から、今後も目が離せない。

新子明希/1972年大阪府生まれ。19歳で起業、2007年、株式会社シンクスマイルを創業。称賛・感謝で組織課題を解決するアプリ「RECOG」を開発し、前身サービスから累計2000社超が利用。コミュニケーションデータからエンゲージメント向上や離職防止に活用する仕組みを構築。NHK「おはよう日本」「クローズアップ現代」、TBS「Nスタ」など主要メディア出演多数。