
日本の文化に関心を持ち来日した薛徳隆氏は、学生時代のアルバイトを機に貿易の道へ進み、2015年に宝庭株式会社を設立した。市場データの分析に基づく商品選定と、自社で完結する物流体制を構築し、現在は輸出入のみならず、自社ブランドの展開や多国間での販路開拓を進めている。本記事では起業の背景から、自社一貫体制の強みや社員との関係性について聞き、次なる目標であるグローバル企業への展望について深掘りする。
「ゼロからイチをつくる」面白さ 日本文化への関心が原点に
ーー日本へ来られたきっかけと、貿易業務に携わるまでの経緯を教えていただけますでしょうか。
薛徳隆:
元々、日本文化に関心があり、現地で直接学びたいと考えて来日しました。貿易の仕事に触れたのは大学3年生の終わり頃です。知人を介して貿易会社の経営者と知り合い、声をかけていただいたのが始まりでした。携わって半年後には実務を任されるようになり、海外のお客様と直接やり取りする機会も増えました。「日本の製品は品質が高いから買いたい」と言われたときには、仕事に大きなやりがいを感じましたね。
ーーその後、ご自身で起業の道を選ばれたのはどのような背景があったのでしょうか。
薛徳隆:
大学卒業時に「ゼロからイチをつくり出したい」という強い思いがありました。完成された組織で働くより自身の力で挑戦したいと考え、2015年に宝庭株式会社を設立したのです。当初は社員2名のみで、最初のお取引先ができるまで半年ほど要しました。先行きが見えず苦しい時期もありましたが、可能性を信じて行動を続けた結果、現在へつながる基盤を築けました。
自社一貫体制がもたらす迅速な納品と実地調査に基づく商品選定

ーー貴社の主な事業内容と、事業における独自の強みについてお聞かせください。
薛徳隆:
弊社は輸出入の貿易業務を主軸とし、ECサイトでの自社ブランド商品販売も展開しています。強みは現場での実地調査と市場データの分析をかけ合わせた商品選定です。海外出張時には必ず現地の小売店へ足を運び、地域の人々が求める商品を詳細に調査します。本当に市場に受け入れられると確信したものだけを日本の関連商品から厳選し提案しています。
ーー物流体制において、どのような特徴を構築されているのでしょうか。
薛徳隆:
商品の仕入れから通関手続き、自社倉庫でのコンテナへの積み込みまで全工程を一貫体制で行います。外部委託では数週間を要する工程も、弊社なら数日で完了できる点は大きな強みです。この迅速な対応力はお客様から厚い信頼をいただく要因となっています。自社ブランド商品も自社倉庫から直接発送する体制を整えました。今後はSNSなどのデジタル施策も活用し、認知拡大に注力していく方針です。
「お兄さん」と慕われる風通しの良さと実力に応じた評価制度
ーー組織のマネジメントや社風の醸成において、大切にされていることは何でしょうか。
薛徳隆:
「誠実であること」と「従業員を大切にすること」を念頭に置いています。優秀なメンバーの存在なくして会社の成長はありません。過去に組織マネジメントの壁に直面した反省から、現在は社員と定期的に面談を実施しています。経営陣と従業員という堅苦しい垣根を取り払い、友人のような距離感で対話を行うよう心がけています。
ーー社員の方とはどのような関係を築いているのですか。
薛徳隆:
社員からはよく「お兄さん」と呼ばれるので、役職や立場にとらわれないフラットな関係性を築けていると思っています。そうした気軽に相談し合える環境をつくる一方で、仕事の評価基準は明確に定めています。成果を出した分は正当に評価して還元し、「努力すれば報われる」という事実が明確に伝わる組織風土の構築を目指しています。
次なる目標はグローバル企業への飛躍 前向きな心で共に挑む仲間を
ーー今後の事業展望についてお聞かせください。
薛徳隆:
目指すのは真のグローバル企業としての飛躍です。今後は輸出事業の拡大に加え、輸入ビジネスも強化したく、海外の良質な製品を日本の小売市場へ展開する事業を進めます。さらに日本の優れた食品や飲料を、アジア圏だけでなく欧米諸国へも広く展開していく予定です。
ーーその展望を実現するために、どのような人材を仲間に迎えたいとお考えでしょうか。
薛徳隆:
事業拡大に伴い、営業やマーケティングなどで専門性を発揮できる人材を必要としています。しかし、スキル以上に重視するのは「人柄」であり、とりわけ「素直さ」を持つ方と働きたいです。ミスが生じても事実を共有し、翌日には気持ちを切り替えて次の仕事へ向かう姿勢を求めています。前向きな方々と共に世界で戦える企業へ育てたいです。
編集後記
「ゼロから事業をつくり上げたい」という情熱を出発点とし、行動力と綿密な市場分析によって自社の基盤を確立した薛氏。通関から物流までを自社で完結させる一貫体制こそが、宝庭株式会社の強みを支えている。社員から「お兄さん」と慕われる温厚な人柄と、グローバル市場を見据える経営者としての鋭い視点。この両面を併せ持つトップのもと、同社が今後どのような成長の軌道を描くか期待が高まる。

薛徳隆/1987年中国山東省生まれ。東京福祉大学名古屋キャンパスで経営経済を学ぶ。学生時代の貿易関係のアルバイトをきっかけに、卒業後の2015年8月、仲間と共に宝庭株式会社を設立。
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