
建設系混合廃棄物のリサイクル率において、全国平均が63%にとどまる中、実に92%という数値を実現する高俊興業株式会社。現在はさらなる高みを目指し、設備投資とデジタル化を推し進めている。代表取締役社長の高橋潤氏は、外部の建設企業での修業時代を経て家業に入った。高橋氏のピンチをチャンスに変える強靭な現場力と、次代を担う人材育成の要諦に迫る。
尊敬する講師から学んだ「原因自分論」と人財育成の信念
ーーまずはご自身のファーストキャリアについてお聞かせください。
高橋潤:
私自身、いずれは家業に入ろうと考えていました。そこで大学4年に差し掛かる頃に、将来は家業に入りたいと父に打ち明けたところ、「そんなに甘いものではない」と初めは厳しく叱責されました。そういった中で就職活動をしているうちに修業も兼ねた採用形態があり、大学卒業後は準大手の建設会社に入社。入社後は大阪支店に配属され、前年に発生した阪神・淡路大震災による惨状を目の当たりにしました。その後は東京支店の経理部でキャリアを積んでいます。
これらの経験は、現在の危機管理能力と組織づくりの原点になっています。前職の配属先は経営再建の真っただ中にあり、巨額の負債を抱える状況でした。資金繰りの厳しさや、過酷な環境の中で組織が直面する現実を経理という立場で内側から見た経験は、非常に大きな財産です。
ーー社長として組織を率いる中でどのような価値観を大切にされていますか。
高橋潤:
「原因自分論」という考え方です。仕事で失敗したときはもちろん、成功したときであっても、「もっと自分がこうしていれば、さらに良い結果になったのではないか」と、常に自分に矢印を向けて考えます。他責にする人は、必ずまた失敗を繰り返すからです。
また、稲盛和夫氏の「人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力」という方程式も社内で共有しています。能力や熱意が高くても、「素直さ・謙虚さ・前向きさ」といった「考え方」がマイナスであれば、結果はマイナスになります。人を単なる「材料(人材)」や問題を起こす「罪(人罪)」にするのではなく、会社の「財産(人財)」へと育てるようにしていかなければなりません。
廃棄物を「素材」へ リサイクル率96%への挑戦と「動静脈連携」

ーー現在の事業における最大の強みは何でしょうか。
高橋潤:
建設混合廃棄物におけるリサイクル率の全国平均63%に対し、92%を誇る高いリサイクル率です。現在は最新の機械設備を導入し、今後は96%まで引き上げる計画を進めています。また、車両を200台保有する専業体制により、工事現場からの回収スピードと機動力も大きな強みです。
ここまで高い再資源化に注力している理由は、国家戦略でもある「循環経済(サーキュラーエコノミー)」への移行に貢献するためです。これまでは廃棄物を適正に処理することが目的でしたが、今は資源循環の時代へと変わりました。廃棄物を単なるゴミではなく、価値ある資源を生み出すための「素材」として捉えることが重要です。いかに少ない電力で高効率に、質の高い資源物を生み出せるかが問われています。
ーー課題はどういった点だとお考えですか。
高橋潤:
私たちのような廃棄物を処理する「静脈産業」だけが頑張ったとしても限界があります。排出元である建設会社などの動脈産業ときちんと連携する「動静脈連携」が不可欠です。双方が50点ずつ力を合わせれば掛け算で2500点になりますが、どちらか一方が低ければ全体の成果も下がってしまいます。業界全体を巻き込んだ仕組みづくりが必要だと感じています。
職人技の言語化とトレーサビリティ実現 デジタル技術が変える現場
ーー現場の生産性向上のために、どのようなことに取り組んでますか。
高橋潤:
属人化の解消や、一人一人の強みを伸ばした上で、弱点を克服していけるような仕組みづくり、さらには基幹システムによる産業廃棄物管理票(マニフェスト)や請求周りの電子化を進めています。現場の作業においては、これまでのアナログ的な教育に加え、AIを組み合わせたデジタル的な要素を追加し廃棄物の選別業務を言語化するための検証を行っています。長年培われた勘と経験や能力をどうデータ化していくかが重要です。
ーーそうした最新技術は、現場で具体的にどのように活かされるのでしょうか。
高橋潤:
たとえば、画像解析によって流れてくる廃棄物を認識し、これまで手作業で行っていた袋を破る工程などをコンベア上で自動化する取り組みを進めています。また、営業や事務でもあらゆるツールを使いこなし、生産性を高める文化を根付かせています。今後はトレーサビリティの徹底も重要です。どの工事現場から出た廃棄物が、どのような工程を経て、何の資源物に生まれ変わったのか。この一貫した透明性を、デジタルを活用して担保したいと考えています。
ピンチを逆手に 次世代リーダーと共に描く資源循環の未来
ーーこれまでで苦労したエピソードを教えてください。
高橋潤:
昨年、東京工場で火災事故が発生した際、会社としてどう向き合うかが問われました。通常の廃棄物の中にリチウムイオン電池が混入してくるケースが頻発しており、そこから火が出て工場の機械設備の8割を入れ替える事態になったのです。この事故を機に、最新の高精度選別再資源化システムを導入し、さらに高効率な工場へと進化させようとしています。1年以上通常の稼働ができず苦しい時期が続いていますが、考え方を変えれば20年前の設備をすべて刷新することができ、省電力化とリサイクル品質の向上が見込めることが期待できます。
ーー今後の組織づくりにおいて、どのような人物を求めていますか?
高橋潤:
現在は、会長世代から若手中心の体制へ移行している過渡期です。人は、ある程度窮地に追い込まれた環境でこそ成長するものです。前向きで素直な姿勢を持ち、私たちと一緒に新しい資源循環の仕組みづくりに挑戦してくれる方に、ぜひ仲間に加わっていただきたいですね。
編集後記
工場火災という危機に見舞われながらも、それを最新設備へのアップデートの好機と捉えた高橋氏。ご自身の経験に裏打ちされた「原因自分論」と前向きな姿勢が非常に印象的だった。また、職人の感覚に頼ってきた現場作業をAIや画像解析で言語化し、動静脈連携による循環経済を牽引しようとするスケールの大きさには、再資源化専業者としての強い矜持を感じる。人財への深い愛情と合理的なデジタル戦略の両輪で、同社がどのような循環型社会のスタンダードをつくり上げていくのか、今後の展開から目が離せない。

高橋潤/1973年生まれ。東洋大学経営学部商学科卒業。1996年に建設会社に入社。震災復興や経営再建の現場で4年間の修業を経て、2000年に高俊興業株式会社に入社。2015年代表取締役社長に就任。現在は一般社団法人廃棄物処理施設技術管理協会の副会長や一般社団法人東京都産業資源循環協会の副会長(建設廃棄物委員長)も務める。