
株式会社ジーピーコーポレーションは、害虫・害獣駆除、環境浄化などを展開する総合衛生コンサルティング企業である。飲食店の排水浄化システムから事業を始め、顧客の潜在的なニーズに応える形で独自の地位を確立した。特筆すべきは、業界経験者ではなく、多様なバックグラウンドを持つ人材で組織を構成している点だ。それにより、「ガラパゴス」とも称される独自の文化と価値観を築き上げている。アパレル業界で20年活躍した後に同社を創業した、代表取締役の帆苅誠氏。今回は、秘められた信念や事業への情熱、そして「最大の財産」と語る社員への思いを聞いた。
20年越しの計画を実行 アパレルから衛生事業へ貫く信念
ーーこれまでのご経歴についてお聞かせください。
帆苅誠:
両親が縫製の仕事をしていた影響で、アパレル業界に強い思いがあり、アパレル関連の企業に入社しました。最初は営業職でしたが、新規ブランドの立ち上げなどに携わり、店舗運営の責任者として全国を飛び回る日々でした。このときの経験が、今にとても役立っていると感じています。
特に今に活きていることは、お客様のニーズを「予測」する点です。アパレルでは常に流行や気候を予測して商品を企画していましたが、判断を誤れば在庫の山となる厳しい世界でした。今の仕事も同じで、お客様が衛生面でどうお困りなのか、将来どうなるかを予測し、先手を打つことが重要になります。この予測と検証の精度を高めるプロセスは、まさにアパレル時代に培ったものです。
ーー独立された経緯を教えていただけますか。
帆苅誠:
実は、社会人になった1980年の段階で、その後の人生のストーリーを自分の中で描いていました。最初の20年間はアパレル業界で仕事に打ち込み、40歳という節目で退職して新たな挑戦を始める、という計画です。周囲からはさまざまな話をいただきましたが、自分の思いを貫き、2000年に計画通り退職しました。
ただ、次に何をするか具体的に決めていたわけではありません。退職後の1年間は、さまざまな場所へ足を運び、多くの人との出会いの中で、自分にとって本当に大切なものは何かを見極めるための情報収集期間に充てたのです。
顧客の声が原動力 総合衛生コンサルティング事業の確立

ーー貴社の事業についてお聞かせください。
帆苅誠:
模索期間を経て、ご縁があり飲食店の排水浄化システムのプロジェクトに参加したのが始まりです。そこで信頼を得るうちに、お客様から衛生面に関する相談が増えていきました。その声に応える形で、現在の総合衛生コンサルティング事業が確立されたのです。
弊社の事業は、お客様が抱える衛生面の課題を解決することです。たとえば、不快な害虫の問題に対し、オーダーメイドの解決策を提案・実行して、そのエリアの環境を保全します。
業界の常識という先入観がないからこそ、全く新しい価値を生み出せるのが弊社の強みです。経験がないからこそつくれる、独自の文化・価値観で事業を行っていこうと。私が常に言い続けているのは「常に一線を画す」ということで、従来の考え方にとらわれず、お客様のニーズを捉え、独自のサービスを創造していきます。
ーー仕事をする上で、大切にされていることはどんなことですか。
帆苅誠:
私たちは「1mmにこだわる」という言葉を大切にしています。これは、細部にまでこだわることで圧倒的な技術力を生み出し、お客様に明確な成果としてお応えするという強い意志の表れです。その根底には、社員一人ひとりが常に「何のためにこの仕事をしているのか」を自問自答し、目的意識を共有する文化が根付いています。
強みは「社員」ガラパゴス経営を支える人への思い
ーークライアントから信頼される、貴社の強みとは何でしょうか。
帆苅誠:
究極的には「社員」です。創業当時から、情報化社会が進めば衛生問題はより顕在化すると予測していました。その時に備え、私たちは愚直に技術と文化を磨き続けてきたのです。その成長を支えてくれたのは、間違いなく社員たちです。この素晴らしい仲間たちこそが最大の財産であり、自慢にほかならず、本当に感謝しかありません。
未経験からこの世界に飛び込んできてくれたメンバーが、お客様のために、そして会社の夢のために、ひたむきに仕事に向き合ってくれている。その姿が、私にとって何よりの原動力です。
ーー貴社ならではの社風や、大切にされている文化についてお聞かせください。
帆苅誠:
世の中の動向も捉えつつ、独自の生態系のように、独自の文化で進化し続ける「ガラパゴス」でありたいと願っています。弊社には、人に対する思いやりを持っている人間しか残っていません。元警察学校出身者や元ミュージシャン、元漁師など、経歴は本当にさまざまですが、その多様性こそが独自の進化の源泉だと認識しています。
蓄えた力を解き放つ時 システムと仲間と共に描く未来
ーー今後の事業で特に注力していくテーマを教えていただけますか。
帆苅誠:
衛生への社会的な関心は、今後さらに高まると確信しています。その中で、マンパワーだけに頼るのではなく、お客様がより安心できる仕組み、つまりシステムを構築していきたいです。問題が起きる前にその前兆を捉え、先手を打つ。そんな「安心」を提供できるネットワークをつくりたいと思います。
ーー今後、どのような人材を求めていますか。
帆苅誠:
「普通はこうだろう」という業界の常識は、私たちの価値観とは合わないかもしれません。そのため、経験者ではなく未経験の方を歓迎しています。違う業界にいたからこそ見えるもの、新卒者だから気づけることが新しい武器になると信じているからです。
新卒や経験者、年齢や国籍といった枠で人を判断しません。大切なのは、私たちの価値観に共感し、一緒に会社を成長させたいという思いを持っているかどうかです。「その人」自身を大切にし、それぞれの個性を尊重できるチームでありたいですね。
編集後記
アパレルという華やかな世界から、衛生という社会の基盤を支える裏方へ。帆苅氏のキャリアは異色だが、その根底には「お客様に喜んでいただく」という一点の曇りもない信念が貫かれていた。「究極の強みは社員」と語るその言葉からは、仲間への深い愛情と感謝がにじみ出る。業界の常識にとらわれず、独自の進化を続ける同社の挑戦は、衛生管理の未来に新たなスタンダードを築くに違いない。その飛躍が楽しみだ。

帆苅誠/1961年東京生まれ。1980年アパレル関連の企業に入社後、営業部長として新規海外ブランド等立ち上げ。出店や全国拡販に従事。2000年に同企業を退社し、個人で起業。2001年に法人登記し、飲食店の排水浄化システムの販売を開始しました。その後、害虫・害獣の対策を含め、総合衛生コンサルティング業へ販路を拡大。現在はメディア等にも多数出演し、新たな衛生システムの構築や社員の技術力向上へ注力している。