
フィットネス業界は、健康志向の高まりとともに多様化し、パーソナルトレーニングやウェルネスサービスが注目を集めている。そんな中、多くの芸能人やスポーツ選手が信頼を置く会員制パーソナルジム「デポルターレクラブ」を運営するのが株式会社ポジティブだ。その代表取締役である竹下雄真氏に、これまでの経歴や今後の展望をうかがった。
フィットネス業界の進化と新たな健康ニーズの登場
ーー貴社を起業するまでの経緯をお聞かせください。
竹下雄真:
もともとフィットネス業界に関心があり、スポーツトレーナーを育成する学校で学び、20歳頃からフリーランスのトレーナーとして活動をはじめました。
その頃は日本では「パーソナルトレーナー」という職業はほとんど認知されていませんでしたが、当時の私は、アメリカで研修を受けてパーソナルトレーニングの専門知識を深めていたこともあり、その経験を日本に持ち帰って、広めたいという思いが強くありました。そのため、フィットネス業界だけではなく、社会全体をより深く理解するために、2年ほど電通グループでビジネスやマーケティングの知識を学びました。
そこから、自分の得意分野であるフィットネス業界に戻る決意を固め、早稲田大学スポーツ科学大学院で学び直し、2011年にはその知識を活かして、小規模ジムを開業しました。このときから大切にしていることは「存在するなら進化しろ」という理念です。株式会社ポジティブを設立し、社長に就任した後も、持続的に価値を提供し続けたいという思いを軸に、事業の成長とともに自分自身の進化も追求し続けています。
信頼関係を基盤にした高品質なウェルネスサービスの提供

ーー事業について詳しく教えてください。
竹下雄真:
弊社は、パーソナルトレーニングを中心に、心身のウェルネスをサポートするさまざまなサービスを提供しています。私たちが目指すのは「Quality is King」、最上級の黒子として、会員様を健康へ導くことです。
特に、信頼できるトレーナーとの「約束」を大切にし、トレーニングを習慣化させて、健康的且つ持続可能なライフスタイルのためにサポートしています。大手フィットネスクラブのように自己管理だけで終わらせるのではなく、専門的なトレーナーとともに肉体的および精神的なウェルネスを向上させることを目指しているのです。
また、トレーニングと予防医療の本格的な連携を実現した「メディカルウェルネスコース」というサービスも提供しています。このサービスは、トレーナーと医師が連携しておこなうもので、健康維持を包括的・持続的に管理し、年間を通じてより的確なアドバイスをします。
ーー「メディカルウェルネスコース」では具体的にどんなことを行うのですか?
竹下雄真:
まず、フルスペックの人間ドックを受けていただき、その後も定期的に健康チェックを実施します。必要に応じて、医師から再検査や治療の提案があり、その進捗に基づいて、トレーナーが会員様の健康状態をモニタリングし、最適なアドバイスを行います。
トレーナーは週に一度、トレーニングサポートを提供し、個々の健康維持をしっかり支援します。
このように、健康データの収集から予防医療、体調管理に至るまで、包括的なサポートを提供することが特徴です。ここまで高水準で健康のフルサポートを提供しているのは、他にはない弊社の強みだと思っています。
ーー貴社のサービスはどのような方が多く利用していますか。
竹下雄真:
会員様の約半数は経営者で、2割程度がスポーツ選手や芸能人です。弊社のサービスは基本的に紹介制で、既存のお客様からの信頼を基に新たなクライアントを迎え入れています。個別のニーズに対応した、高品質なトレーニングと健康サポートを提供し、信頼関係を大切にしています。
健康維持から予防医療まで、未来のウェルネスを支える取り組み
ーー注力しているテーマを教えてください。
竹下雄真:
注力テーマは主に2つです。
まず1つ目は、メディカルウェルネスコースの普及です。このコースを多くの方に知っていただき、参加してもらうことが今後の重要な目標になります。数には限りがありますが、できるだけ多くの方に体験していただき、社会にこのようなプログラムが存在することを広めていきたいと考えています。最終的には、他のジムやクリニックでもこのコースを取り入れ、良いものはどんどん模倣してほしいという立場です。そのため、提供するサービスの質をさらに高め、業界に良いモデルを示していきたいと考えています。
2つ目は、オフィスワーカーのフィジカルおよびメンタル面の強化です。これは、企業やオフィスビルで働く人々の健康維持をサポートし、その結果として「仕事力」を向上させることを目指しています。ジムを利用するだけではなく、身体と心の両面を強化することで、働く人々がより活力に満ち、競争力を持つようになるはずです。この取り組みを法人サービスとして拡大していきたいと考えており、企業全体で健康維持を支援することが、日本の社会にとっても重要だと感じています。今後もこの部分には注力していきます。
ーー今後の展望をお聞かせください。
竹下雄真:
私たちが目指しているのは、心の健康、身体の健康、そして社会とのつながりがバランスよく保たれる社会の実現です。そのためには、まず基盤となる健康をしっかり支える仕組みをつくり、それを日本全国に広げていきたいと考えています。私たちは、単に利益を追求するのではなく、健康を支えることに価値を感じているので、人々がより健康で幸せに過ごせる環境づくりを進めています。
具体的には、地方に住んでいる人や高齢者の方々にも、パーソナルトレーニングや地域の病院との連携で健康維持ができる仕組みを提供していきたいです。これにより、病気の予防や健康維持が進み、より多くの人々が元気で活力のある生活を送れるようになると信じています。
最終的には、こうした取り組みを日本国内にとどまらず、海外にも広げていければと思っています。特に、高齢化が進んでいる国々にもこの仕組みを提供できれば、世界規模で、健康を支える新しいスタンダードになるでしょう。まずは、確実に実績を積み重ねて、全国や海外に展開していく計画です。
編集後記
デポルターレクラブが提供するメディカルウェルネスコースや、オフィスワーカー向けのフィジカル・メンタル強化プログラムには、従来の健康管理の枠組みを超える深い意義がある。医師とトレーナーが連携し、個々のニーズに合わせた専門的なケアを提供することで、サービスの質は一層向上している。竹下社長のリーダーシップのもと、個人の健康増進に留まらず、企業全体の生産性や従業員のパフォーマンス向上を目指すこの取り組みは、社会全体に良い影響を与えるだろう。同社の今後の展開に、大いに期待したい。

竹下雄真/神奈川県出身。会員制パーソナルトレーニングジム「デポルターレクラブ」代表。1979年、トップアスリートをはじめ多くの著名人の肉体改造に携わり、ウェルネス以上、メディカル未満の領域で、クライアントの進化に日々携わる。2010年にデポルターレクラブを設立し、翌年パーソナルトレーニングジムをオープン。著書『ビジネスアスリートが実践する最強のリカバリー術』(光文社)など多数。