
幼少期から打ち込んだ野球を怪我で断念し、18歳でアパレルの世界へ飛び込んだ松本和博氏。同氏は「服が人の人生を変える」瞬間に立ち会ったことをきっかけに、アパレル業界の常識と働き方を根本から変えるべく、株式会社REISIN NOVAを立ち上げた。SNS集客とポップアップイベント販売を掛け合わせた独自の「オフプライス」事業で急成長を遂げる同社。本記事では、「売上高は感謝の数」と言い切る確固たる信念と、AIを活用した次世代の組織づくりへの挑戦について聞いた。
挫折から見つけた「自信を売る」仕事への誇り
ーーまずは、アパレル業界へ進むことになった経緯を教えてください。
松本和博:
プロ野球選手になる夢が怪我で絶たれたことが、直接のきっかけです。私は幼少期から野球に打ち込んでいたのですが、肘を壊してしまい、やむを得ず競技を断念することになりました。その際、治療のためにリハビリへ通っていた経験から、今度は自分が誰かの助けになる仕事に就きたいと思うようになり、最初は理学療法士を目指していたんです。
ただ、進路ガイダンスで「もう一つ必ず話を聞くように」と言われ、若い頃特有の「モテたい」という単純な理由からファッション系の話を聞きに行ったのです。当初はアパレルと言えば服をつくるイメージが強く、自分は不器用でデザインセンスもないため向いていないと思っていました。しかし、お店を持って販売する側や、経営する道もあると知り、一度きりの人生ならそちらの方が楽しそうだと直感して、18歳で大阪の服飾専門学校へ進学しました。ただ、学校で学ぶよりも現場に出た方が早いと考え、半年で中退してアパレルの道へ飛び込みました。
ーー入社後はどのようなキャリアを歩まれたのですか。
松本和博:
専門学校時代、企業の提携学科で研修として店舗に配属されたのですが、最初は全く服が売れませんでした。それでも必死に取り組むうちに、3ヶ月ほどで店舗のトップセールスになることができました。「意外といけるな」と自信を持ちましたが、一方でより単価が高く難しい商材を扱う環境ではなかなか通用しなかったのです。
そこで、今のままでは実力が上がらないと考え、あえて厳しい環境へ移る決断をし、移ってから半年ほど経った19歳のときには、店長に就任しています。さらにそこから2年ほどで3店舗を統括するマネージャーに昇格し、その後はバイヤーとして仕入れ業務にも携わるようになりました。
ーーアパレル販売という仕事のやりがいを、どのようなところに感じていますか。
松本和博:
お客様から直接「ありがとう」という言葉をいただける点です。以前、婚活がうまくいかずに悩んでいた方が、私の提案した服を着たことで自信を持ち、「無事に結婚できた」と報告に来てくださったことがありました。その時、私たちの仕事は人の背中を少しでも押すことができるのだと実感し、「自分たちは服ではなく自信を売っているのだ」と確信したのです。だからこそ、お客様が普段選ばないような服をあえてお勧めして新たな魅力を引き出すなど、私にしかできない提案を心がけています。
在庫リスクを極小化する「SNS×イベント販売」の仕組み

ーー独立を決意された理由についてお聞かせいただけますか。
松本和博:
アパレル販売員が自身の仕事を低く評価する業界の現状を、根本から変えたかったからです。販売職は、四季の変化や流行、無数のブランドの中から最適な組み合わせを提案する、高度な専門職です。それにもかかわらず、現場では「賢い人がやる仕事ではない」と自虐的に語る風潮があり、私はその状況に納得できませんでした。そこで、販売員が自信を持って働ける会社をつくろうと決意したのです。最初は販売代行業からスタートし、その2ヶ月後には自身の店舗を持つに至りました。
ーー現在展開されている事業の強みは何でしょうか。
松本和博:
新品のブランド商品を定価より安く提供する「オフプライス」という販売形態と、独自の集客手法です。自社で卸売会社を買い取って中間の流通費用を削減し、海外と日本の需要の差を活かした仕入れを行うことで、新作でも価格を抑える仕組みを構築しました。販売面では、SNSで集客を行い、全国各地で毎週末開催する期間限定のポップアップショップで一気に販売します。この手法によって商品を素早く売り切るため、在庫回転率が非常に高く、売れ残りのリスクを極限まで減らせるのが弊社の強みです。
「売上高は感謝の数」 AIを活用した次世代の組織づくり

ーー現場で働く社員の方々に対して、日頃からどのようなことを伝えていますか。
松本和博:
「売上高とは、お客様からの感謝の数である」と常々伝えています。お客様が商品を購入し、「ありがとう」と言ってくださる。その影響の大きさを数値化したものが売上高です。だからこそ、利益を追求することを恐れず、人としての魅力、すなわち「人間力」を高めていこうと話しています。年齢は関係なく、いくつになっても成長を忘れないでほしいと指導しており、意欲次第で若くても幹部を担えるなど、採用やキャリアアップにおいても挑戦できる環境を用意しています。
ーー社員の日々の行動や意識は、どのような基準で評価しているのでしょうか。
松本和博:
人の主観や感情に頼りがちな評価を客観的かつ公平に行うため、AIを活用した行動評価の仕組みを導入しています。日報をもとにAIが分析を行い、単なる売上高の数字だけでなく、日々の意識や行動面も評価に組み込んでフィードバックしています。さらに、毎週末のイベントで得られる地域ごとの売れ筋や人気のサイズといった傾向をAIで分析し、商品の仕入れや在庫管理に活かすシステムの構築も進めているところです。
ーー最後に、今後の事業展開や組織としての目標をお聞かせください。
松本和博:
アパレル業界で「日本一強いセレクトショップ」になることが最終的な目標です。そのために、SNSを利用しない層にもアプローチできるよう、テレビやアナログな手法を含めたマーケティングの強化を進めています。また、リユースアイテムの取り扱いや海外ブランドの販売権取得など、新たな事業の柱も模索しています。何よりも、現場で働く社員が、「この会社で働いている」と家族や友人に胸を張って自慢できる組織をつくり上げていきます。
編集後記
「服ではなく、自信を売る」。松本氏のその言葉には、現場で一人ひとりの顧客と真摯に向き合ってきたからこその確かな熱量が宿っていた。アパレル業界の古い常識を打ち破り、SNSとポップアップイベントという独自の販売モデルで急成長を遂げる株式会社REISIN NOVA。情熱的なビジョンの裏側で、AIを活用した客観的な評価制度や緻密な在庫管理など、個人の感覚に依存しない論理的な仕組みづくりを進めている点も非常に興味深い。業界の地位向上を掲げ、新たな挑戦を続ける同社が、今後どのような熱狂を生み出していくのか期待は尽きない。

松本和博/1994年生まれ。香川県出身で18歳でアパレル業界に飛び込み、販売・バイイング・店舗マネジメント・売上高管理を経験後、23歳で独立。「アパレル業界の常識を変えたい」という思いから株式会社REISIN NOVAを設立。全国各地で行列のできるポップアップイベントを次々と開催するまでに急成長している。「令和の虎」に虎として出演実績あり。