
2012年にたった1人で起業した小澤隆史氏は、現在、社員数400人を超える企業グループを率いている。スマートフォン周辺機器の販売から事業を起こし、現在は「IP(知的財産)×プロダクト×マーケット」の独自モデルでエンタメ業界を牽引する。データ分析に基づき、属人性を排除した「仕組み」で急成長を続ける株式会社A3。激変する業界の中で彼らはいかに勝機を見出し、世界へ挑むのか。創業からの軌跡と、描く未来のビジョンに迫る。
目的から逆算した起業とスマートフォン周辺機器事業からのスタート
ーーまずはこれまでのご経歴と、起業に至った経緯についてお聞かせください。
小澤隆史:
もともとは中国と関わりのある会社で営業としてキャリアを積んでいました。その後、2010年頃に独立することになります。IPビジネス参入のきっかけとなったのは、前職から付き合いのあった知人から「中国で手に入るモバイルバッテリーのサンプルを売ってみないか」と誘われたことです。ちょうどその頃はスマートフォンが普及し始めたタイミングで、市場にはまだモバイルバッテリーなどがあまり出回っていませんでした。そこで、当初は周辺機器の販売から始めていったのです。
私自身、最初から事業内容を明確に決めていたわけではありません。「世の中に大きな価値を残す」という目的から逆算し、まずはやれることをやってみようという発想からのスタートでした。
ーー事業は、そのまま順調に拡大していったのでしょうか。
小澤隆史:
前職のつながりを活かして中国の工場で製造し販売する手法をとっていたため、最初は営業すればすぐに売れる状態でした。しかし、1人で参入できるビジネスだったため、あっという間に参入者が増えて過当競争に陥ったのです。
そこで差別化を図るために家電量販店などを市場調査する中、人気キャラクターの商品を見て衝撃を受けました。価格が高くても独自のコーナーが設けられ、飛ぶように売れていたからです。そこから私は、「日本といえばアニメだ。アニメでこのようなコレクションアイテムをつくれば勝機がある」と考えました。
熱狂的な市場への参入と感覚を数値化する組織の強み
ーーその着想から、どのようにアニメ領域へ参入していきましたか。
小澤隆史:
まずは業界を知るため、大手アニメグッズ専門店に足を運びました。当時は昔ながらのコアなアニメファン層のイメージを抱いていましたが、実際には20代の女性客が圧倒的に多く、レジには長蛇の列ができていたのです。「これほど熱量が高く、潤っている市場があるのか」と驚かされましたね。
さらに当時、スマートフォン周辺機器でアニメやマンガなどのIPを活用したニッチな市場には競合が存在していませんでした。私は「ここでなら勝負できる」と確信し、この領域へ一気にリソースを集中させていきました。
ーー現在の貴社における強みはどこにあるとお考えですか。
小澤隆史:
「マーケットイン」の発想の徹底と、感覚の「数値化」です。私たちが何をしたいかではなく、世の中が何を求めており、私たちがどう付加価値を出せるかを起点としています。エンタメ業界は、作品へのセンスや個人の感覚に依存しやすい傾向にあります。
しかし、個人の感覚と実際の市場ニーズには大きな乖離が生じることも少なくありません。だからこそ私たちは、「人気が出そう」という感覚値をすべて分析し、数字に落とし込んで指標化しています。個人の突出したセンスに頼るのではなく、全体最適を重視します。チームとして一貫してビジネスを展開できる「仕組み」こそが弊社の最大の強みです。
組織の壁を越える規模拡大に伴う社長の役割の変化

ーー400人を超える規模の組織づくりにおいて、カギとなったのは何でしょうか。
小澤隆史:
組織規模に応じた、私自身の役割と会社のルールの変革です。よく「1・3・10・30・100・300人の壁」といわれますが、規模の節目ごとに組織のあり方は全く異なります。30人を超えると一人ひとりに目が届かなくなり、100人を超えればゲームのルールそのものが変わります。その節目ごとに、私自身がポジションを変え、組織の仕組みを変えてきました。
現在はさらに規模が拡大し、法務や財務など、専門家を配置したチーム体制の強化を進めています。今後はM&Aなどでグループ会社も増えるため、より高い次元での組織設計が必要不可欠です。
ーー今後3年から5年先の未来に向けて、どのような展望を描いていますか。
小澤隆史:
グローバル展開の本格化です。まずは韓国、台湾、香港といった東アジアに拠点を築き、ネットワークを構築します。今年から来年初頭にかけて韓国に現地法人を設立する計画をはじめ、3年以内には東アジア圏でのネットワークプラットフォームを確立したいと考えています。その後は東南アジア、さらに北米やヨーロッパへも影響力を広げていく予定です。
実店舗などのリアルな領域のビジネスを海外展開するには、現地での物流や流通網が必須となり、容易なことではありません。しかし、だからこそ大きなチャンスが眠っているはずです。リアルな領域において、業界トップクラスの「確固たるポジション」として圧倒的な価値を出せる企業を目指します。
「好き」はあくまで手段 世の中に大きな価値を提供したい次世代に向けて
ーーこれから社会に出る20代や、貴社に興味を持つ方へのメッセージをお願いします。
小澤隆史:
可能性を広げて、20代のうちから大きな打席に立って価値を高めたい人には、弊社は非常に合っている環境だと思います。「世の中にどれだけ大きな価値を出せるか」を目的としているからです。一方で、「アニメが好きだから」という理由だけの人はミスマッチになる可能性が高いでしょう。「好き」が目的になってしまっているからです。
「好き」はあくまで手段であり、ビジネスの目的は世の中に価値を生み出すことにあります。この業界が好きであることはプラスに働きます。だからこそ、それを武器にして世の中に大きなインパクトを与えたいという、野心を持った方とぜひ一緒に働きたいですね。
編集後記
たった1人での起業から始まり、データと論理に基づく徹底した「仕組み化」でエンタメビジネスを開拓してきた小澤氏。業界特有の「感覚」に頼らず、数値化と全体最適を追求する姿勢からは、経営者としての冷静なロジックが見てとれる。一方で、日本のIPを武器に世界市場を狙うその言葉の端々には、確かな情熱が宿っている。「好き」を単なる趣味で終わらせず、社会を動かす手段へと昇華できる若き才能にとって、同社は類まれなる成長の舞台となることだろう。

小澤隆史/大手企業やベンチャー企業で新規事業開発などを経験し、2012年に株式会社A3を1人で創業。2014年、アニメ・ゲームなどのIPビジネスに参入し、「IP」×「Product」×「Market」を組み合わせた独自戦略を展開。これを機に会社は急成長を遂げ、現在はグループ従業員400人を超える規模へと拡大させている。「楽しむ機会を提供し、人々と社会をより豊かにする」を理念として、海外へも事業領域を拡大し、IPの可能性を世界に広げ続けている。