※本ページ内の情報は2026年6月時点のものです。

音楽ライブからアニメ・バーチャルコンテンツまで、幅広いステージをワンストップでプロデュースする株式会社M&S。代表取締役の野村光宏氏は、大学時代に競泳選手として活躍し、教育の道を志した経歴を持つ。知人を介した縁から芸能界の裏方へ足を踏み入れた。海外で触れた本場のショーに心を奪われ、舞台制作の道を志す。デジタル化が進む現代において、あえてアナログな「人の力」で感動を生み出すことに、野村氏はどのような価値を見出しているのか。舞台監督としての信念と、同社が描くエンターテインメントの未来像に迫った。

教員の道から一転エンタメの最前線で見つけた「生」の感動

ーーまずは、エンタメ業界へ進まれた経緯をお聞かせいただけますか。

野村光宏:
大学時代は、4年間水泳に打ち込んでいました。卒業後は中高の教員になろうと考えており、4年次には教育実習へ赴き、そこで自身の経験や培った技術を次世代へ伝えることに確かなやりがいを感じていました。

そんな中、卒業間際に転機が訪れます。音楽関係の知人を介して、あるマネジメント事務所から「人手が足りないから手伝ってほしい」と誘いを受けたのです。教員という安定した道と迷う気持ちもありましたが、「厳しい世界で自分がどこまで通用するか試したい」という野心が勝り、未知の芸能界へ身を投じる決断を下しました。

ーーその後、舞台制作や舞台監督の道へ進まれた理由は何だったのでしょうか。

野村光宏:
マネジメント事務所では、マネージャーとしてテレビやラジオ、出版、コンサートなど、あらゆる現場を経験し、多忙を極める日々を送っていました。そんな中、仕事で訪れた海外で大きな衝撃を受けました。世界的パフォーマンス集団のステージや著名なアーティストのロングラン公演です。本場の圧倒的なショーを目の当たりにした瞬間、「私が生涯をかけてつくり出したいのはこれだ」と心が震えました。数あるメディアの中でも、瞬間の熱量を共有する「ライブ」こそが人々の心を強く揺さぶる。その確信を胸に、舞台制作の道へ進むことを決意しました。

食わず嫌いをしない姿勢と「ワンストップ」がもたらす価値

ーー改めて、貴社の事業内容とその強みを教えていただけますか。

野村光宏:
弊社は、ライブやコンサートにおける、演出や進行など「ステージ」に関わる部分をマネジメントする舞台制作事業を展開しています。最大の強みは、舞台監督業務から映像やCGの制作、照明・音響といった舞台制作に関わること全般をワンストップで担える点です。分野ごとに特化する企業も多い中、弊社は総合的なマネジメント機能を持っているのです。また、小規模なライブハウスから大規模なスタジアムまで柔軟に対応できる体制を整えています。

近年は、アニメやバーチャルコンテンツのライブ演出においても多くの実績を重ねてきました。同ジャンルが黎明期だった頃から「映像とリアルのステージをいかに融合させるか」を模索し続け、その結果、現在ではその手法が業界の一つの基準として定着しつつあります。映像機材の重量や構造計算といった物理的な制約まで踏み込み、現実のステージへ安全かつ正確に落とし込む技術力。それが弊社の大きな強みです。

ーー多岐にわたるジャンルを手がける上で、常に意識されていることはありますか。

野村光宏:
「食わず嫌いをしない」という姿勢です。私自身はもともとヒップホップ音楽が好きでした。しかし、実際にアイドルのコンサートに携わった際、現場の熱量や演出の奥深さに強く心を打たれたのです。自身の嗜好に固執せず、そのアーティストが最も魅力的に輝く方法を徹底的に考え抜きます。私たちは、いわば「料理人」です。優れた素材に対し、どのような調理を施せば最高の味、つまり最高のステージを引き出せるか。常にプロフェッショナルとしての視点を持ち、真摯に作品と向き合っています。

「ライブは虹」アナログな人のつながりが感動を呼ぶ

ーーチームとして、どのような人材を求めていらっしゃいますでしょうか。

野村光宏:
強い「野心」と「意志」を持つ人です。エンターテインメントを心から愛し、この領域で高みを目指す熱意を持つ方と共に働きたいと考えています。私たちの仕事は華やかなステージをつくり上げることですが、その舞台裏は泥臭い人間力の積み重ねに他なりません。

また舞台監督の役割は、スポーツの監督のように、現場でいかに人々と連携し、的確に動かすかに尽きます。完成したステージに観客が感動を覚えるのは、決して機材やシステムによるものだけではありません。根底に「人が人を動かし、情熱を込めてつくり上げている」という極めてアナログなプロセスがあるからこそ、その熱量が形となり、完成したステージが観客の心を動かすのだと思います。

ーー表舞台の華やかさとは裏腹に、泥臭い作業の積み重ねによって成り立つのでしょうか。

野村光宏:
その通りです。私はよく「ライブは虹のようなものだ」と表現します。遠くから見上げる虹は美しく輝いていますが、その真下へ行けば、ただの土砂降りです。裏方のスタッフは皆、その土砂降りの中で汗水流して、必死にステージを支えています。しかし、過酷な環境での尽力があるからこそ、観客の目に映る景色は美しい虹色に輝きます。現場の苦労を理解した上で、そこに確かなやりがいを見出せる方をお迎えしたいですね。

常に先駆者として新しいエンタメの形を創り出す

ーー最後に、今後の展望についてお聞かせいただけますでしょうか。

野村光宏:
国内トップクラスの舞台制作会社へと成長を遂げることです。特定の路線にこだわることなく、様々な魅力にあふれるアーティストの方々とご一緒させていただき、かつて私自身が海外で衝撃を受けたようなクリエイティブを徹底的に追求できる質の高いステージを数多く手がけていきたいと考えています。

また、昨今ではVTuberをはじめとする、デジタル技術を活用した新たな表現が次々と誕生しています。だからこそ、最新の技術やトレンドに対して常に敏感であり続ける必要があります。今後も業界の先駆者として、前例のない新たなライブの形を提示し続ける組織でありたいですね。

編集後記

教員を志していた青年が、本場での衝撃的な体験を経て、エンターテインメントの裏方として確固たる地位を築くまでの軌跡。野村氏が語った「ライブは虹」という表現。そこには、現場の過酷さと乗り越えた先にある美しさへの深い敬意が込められている。「人が人を動かすからこそ、感動が生まれる」。テクノロジーがいかに進化しようとも揺るがないその信念こそが、株式会社M&Sが創り出すステージの最大の魅力である。

野村光宏/1982年、東京都出身。日本体育大学卒業後、芸能マネジメント事務所に入社。「より魅力的なエンターテインメントを自分の手で作り上げたい」という思いに基づき、2009年に退職。フリーランスとして舞台監督業を営む。2013年に会社化し、合同会社M&Sを設立。2023年に株式会社へ組織変更。コンサート・イベント等に関連する舞台制作・舞台演出・舞台監督・CG制作・映像コーディネート等、事業領域を拡大中。