※本ページ内の情報は2025年5月時点のものです。

株式会社ジャパン・アーツは、クラシック演奏家やオーケストラ、オペラ団体、バレエダンサーなどを世界中から招聘し、音楽公演を企画している会社だ。ウィーン少年合唱団など、有名団体の公演も数多く手がけてきた。

音楽への熱い思いを持つ同社の代表取締役社長、二瓶純一氏に話をうかがった。

指揮者の高いカリスマ性に憧れ、「指揮者のマネージャー」になることを決意

ーー貴社に入社したきっかけや背景を聞かせてください。

二瓶純一:
幼い頃からバイオリンを習っており、小学校から大学までクラブ活動としてオーケストラに関わるなど、もともと音楽が好きだったことが大きく影響しています。

大学卒業後は、自分が一般企業で働いている姿を想像できなかったことを理由に、しばらくは結婚式場のアルバイトなどで演奏活動を続けていました。

アルバイトを7年ほど続けていた中、大学時代のオーケストラ活動で仲良くなった指揮者である友人から頼まれ、彼のマネジメントを手伝うことに。これが、現在の仕事につながる大きな転機となります。

そこでプロの音楽家の世界を垣間見て、大きな感動を覚え、音を奏でずにメンバーを率いる指揮者という存在に対して、カリスマ性の高さを感じました。

もともと私はカリスマ的な存在に惹かれていたことから、指揮者に強く憧れ、職業にすることを本気で考えていました。しかし、専門的な勉強をしてこなかった私が、そこからすぐに指揮者を目指すのは現実的ではありませんでした。

それならば「マネージャーとして、指揮者の手伝いをしよう」と考え、アーティストのマネージャー職に就ける弊社への転職を決意し、マネージャー業からキャリアをスタートしました。

創業時から引き継がれるのは、社員や演奏家といった「人を大切にする」こと

ーー入社から現在に至るまでで、特に印象的なエピソードを聞かせてください。

二瓶純一:
特に記憶に残っているのが、2011年に起こった東日本大震災です。原発事故の影響で海外の団体が次々と来日をとりやめてしまったのです。

自らドイツやオーストリアに足を運んで説得しましたが、彼らの「放射能の影響が分からないから、日本に行くのが怖い」という気持ちは覆せませんでした。

私たちの事業が、天変地異により簡単に崩れ去ってしまうものだということを実感しましたし、結局ツアーの開催が正常化されるまでには3年ほどかかりました。

ーー社長としてどのような考え方を大切にしていますか。

二瓶純一:
創業者から引き継いだ考えとして、「人を大切にすること」を最も意識しています。

弊社はクラシック音楽や舞台芸術のアーティスト・団体を日本に呼び、公演を企画・制作・運営する会社です。そのため、工場や設備などはなく、固定資産を持っていません。

その代わりに持っているのが社員や演奏家といった「人」です。多くの人が支えてくれているからこそ弊社は成り立っていますし、「人を大切にする」という理念は特に重視しています。

感動や共感を提供し続けることで、「世界平和」の一助になりたい

ーー今後の展望や貴社がクラシック音楽の公演事業を行う意義について聞かせてください。

二瓶純一:
今後の展望は、時代に合ったイベントをどんどん開催することです。具体的には、インバウンド観光客が増えている今、彼らが夜の時間帯に楽しめるような上質なイベントを開催することなどを考えています。

人間にとって大切な「感動すること」や「他者と気持ちを共感すること」を人々に与えることができる点が、弊社がこの事業を行う意義だと感じています。そしてこれは、最終的に世界平和につながっていると思うのです。

世界が平和になるためには、それぞれの国が互いに「気持ちを通じ合わせること」が重要です。私たちが手がけている文化や芸術に関する公演事業は、この「気持ちを通じ合わせる」ためのきっかけになると考えています。

弊社は、感動や夢を世の中に提供し続けることをミッションに掲げていますので、今後も観客の心を動かすような公演の主催に力を入れていくつもりです。

編集後記

「今後は社会問題に即したコンサートなどを開催したい」と、これからの展望を力強く語った二瓶社長。たとえば少子化が進んでいる今だからこそ、子ども向けのクラシック音楽の企画を開催することで、社会に貢献していくことも考えているとのこと。

「世界平和」という壮大な未来図を描いている同社なら、これからも音楽を通して日本だけでなく、多くの国の人々に夢と希望を与えてくれるに違いない。

二瓶純一/2001年に株式会社ジャパン・アーツへ入社し、2018年に代表取締役社長に就任。世界第一級の芸術団体やソリストの招聘、および数多くの日本人演奏家のマネジメントに携わる。日本クラシック音楽事業協会専務理事、ジェスク音楽文化振興会理事、アジア文化交流促進連盟(FACP)副会長。