※本ページ内の情報は2026年9月時点のものです。

学生時代にアルバイトとして日幸ライト工業株式会社で働き始めた後に新卒で入社し、製造現場から生産管理、営業などあらゆる業務を経験し、代表に就任した吉村功一氏。プラスチック成形を主力とする同社は今、「30ビジョン」を掲げ、社員一人ひとりが主役となる組織づくりを推し進めている。なぜ今、“上意下達”を脱却し、自律的な変革を目指すのか。20代の原点から、創業100周年を見据えた壮大な展望まで、同氏の熱き思いに迫る。

若手時代の抜擢と困難な事業整理 「仕事は自分でつくる」当事者意識の芽生え

ーー社会人としてのキャリアは、どのようにスタートされたのでしょうか。

吉村功一:
学生時代にアルバイトとして3、4年ほど働いていた縁があり、一度は他社への就職が決まっていたものの、先輩社員に声をかけていただいたことで改めて弊社にご縁を感じ、新卒として入社しました。最初は組み立て工場に配属され、その後は生産管理や営業を兼ねる業務部へと異動しています。

私の原点となっているのは、20代半ばで「企業イメージを落とさずに取引先の整理をする」という難しい課題を一人で担った経験です。若手ながら歴史ある取引先に対して、さまざまな交渉から実務までを任されました。自らトラックに金型を積んでお返しにうかがうなど、お客様と真摯に向き合いながらとにかく愚直に動きましたね。

ーー困難な役割を全うできた背景には、どのようなお考えがあったのでしょうか。

吉村功一:
「これは自分の仕事だ」という強い当事者意識を持って取り組んでいました。上司から言われたからやるという受け身の姿勢ではなく、できればサポートなしに、自分の力で成し遂げたいという思いがあったからです。最初は初心者マークがついていても構いません。しかし、その期間をどう過ごすかで今後の成長が決まると考えています。「仕事を与えられないと動けない人」になるか、「自分で仕事をつくり出せる人」になるかの分かれ道です。与えられた職務を自らの責任範囲として全うしようとする意志が、私自身を成長させてくれたのだと感じています。

「仕事があって当たり前」からの脱却 社員全員で未来を描くビジョンを構築

ーー現在の事業内容や強みについて教えてください。

吉村功一:
弊社はプラスチック成形を主力とし、外部の主要なお客様へ製品を提供しています。24時間稼働する工場において、ご年配の方も含めた多様な人材が調和し、協力し合いながら生産に向き合う姿勢が根付いているのが弊社の特徴です。

一方で、「強み」に関しては、まさにこれからつくり上げていく段階だと捉えています。これまでは業界全体の成長に後押しされてきた面もありましたが、今後は既存の取引先との事業基盤を大切にしつつ、私たちならではの確固たる価値を全員で確立していく方針です。

ーー現在、どのような課題に直面しているのでしょうか。

吉村功一:
長い歴史があるがゆえに、少なからず「仕事があって当たり前」「売上が確保できるのは当たり前」といった甘えが、組織内に生まれてしまう危険性があることです。現状に甘んじることなく会社を変えていかなければならないと、強い危機感を持っています。お客様から注文をいただけるのは、決して当たり前ではありません。常に感謝の気持ちを忘れず、既存の取引先からも選ばれる企業へと成長しなければならないのです。

ーーその危機感を打破するために、どのような取り組みをしていますか。

吉村功一:
現在、全社で「30ビジョン」という新たな目標を掲げています。これは2030年に向けたものですが、私から提示したゴールは「強みで仕事をとる」「生き生きとした会社をつくる」の2つだけです。かつては役員層だけで方針をつくり、社員に下ろす上意下達のやり方をしていました。

しかしそれでは押し付けになり、社員が自分ごととして捉えきれません。会社というのは、結局のところ「個人の集まり」です。会社が何かをしてくれるのを待つのではなく、自分たちで会社をつくっていく。だからこそ、目標に向かう道中はあえて縛らず、社員と一緒に考えていく手法へ変えました。弊社では、社員一人ひとりが主体的に未来をつくり上げる環境を重視しています。

他者の情熱の火を消さない組織づくり 次世代が「大切な人に自慢できる会社」へ

ーー社員の主体性を引き出すために、会社として大切にしていることをお聞かせください。

吉村功一:
心理的安全性を大切にしながら個人の成長を全力で支え、強いチームワークを築いていくことを大切にしています。行動指針として、いくつか明確なメッセージを伝えています。特に強調しているのが「決して他者の情熱の火を消すような言動はしない」ということです。自ら燃える人もいれば、そうでない人もいますが、誰かのやる気を削ぐようなことだけは絶対にしてはいけません。また、単なるもたれ合いではなく、自分の足で歩ける強さを持った上での「自立した助け合い」を求めています。

ーー最後に、未来への展望をお願いします。

吉村功一:
目指すのは、社員が「自分の大切な人に自慢できる会社」です。2053年の100周年を迎えるころには、今いる若い世代が会社の中核を担っているでしょう。そのときまで、企業理念という根本はしっかりと守り抜きます。

一方で、「昔はプラスチック成形をやっていたんだよ」と言えるくらい、事業内容が劇的に変化していても良いと思っています。それくらい柔軟に、新しい価値を生み出し続ける姿勢を持っていたいですね。

世の中の変化のスピードは速く、厳しい側面もあります。今はまだ、新たなスタートラインに立ったばかりの段階かもしれません。しかし、全員で一緒に立ち上がり、歩もうとすること自体に大きな価値があります。数年後に、「あのとき、みんなであんな風に話し合って会社をつくってきたね」と、笑顔で振り返り、お酒でも飲みながら語り合えたらそんなに嬉しいことは無いですね。

編集後記

「仕事があって当たり前」という甘えを捨て、自らの手で未来を切り拓く。吉村氏の言葉には、20代の頃に培われた圧倒的な当事者意識が通底している。上意下達で正解を与えるのではなく、あえて「ゴールは2つだけ」と道中の余白を残すのだ。社員とともに歩む姿は、これからの時代に求められる真の自律型組織のあり方といえる。「昔はプラスチック成形をやっていた」と言えるほどの進化を見据える同社。今後どのような「大切な人に自慢できる会社」へと成長していくのか。その明るい未来が非常に楽しみである。

吉村功一/1976年生まれ。学生時代から日幸ライト工業株式会社でアルバイトをしていた。1999年、同社に入社。2025年に代表取締役社長に就任。