※本ページ内の情報は2025年2月時点のものです。

ハイスペックなプラスチックの射出成形加工をはじめ、幅広いジャンルの部品を扱う株式会社新興化学。同社が広く信頼されている背景には、長年の経験や技術の蓄積、そして、複雑な課題にも積極的に取り組む姿勢がある。今回は、代表取締役の小野寺誠氏に、経営における戦略や新興化学の強み、未来への展望などを聞いた。

高校時代に湧いた家業への興味をきっかけに、父の後を継ぐ道を歩む

ーー小野寺社長の経歴をお聞かせください。

小野寺誠:
新興化学は家業で、私は創業者である祖父から会社を代々引き継いだ5代目です。幼いころの私は、家業への興味は薄かったのですが、将来の進路について考え始めたときに興味が湧き、専門学校で機械設計を学ぶことにしました。

専門学校卒業後は、デザインモデルやワーキングモデルの製作を行っている、試作加工会社に入社し、試作品製作等をメインに、CAD/CAMを用いた業務に従事しました。当時学んだモックアップ制作や生産管理のスキルは、現在に続くキャリアの土台となっています。

当時の同社は創業者が会社を引っ張っており、創業者の熱量や価値観に直接触れられたのは幸運だったと思います。新興化学に戻ったのは、父の病気が悪化したことがきっかけです。弊社に戻ってからは生産現場から管理、経理まで幅広い業務を経験し、2015年に社長に就任しました。

ーー社長が経営において重視していることは何ですか?

小野寺誠:
なによりも「お客様との信頼関係」の構築に尽力しています。品質や納期、価格のどれを取っても高い水準を維持し、期待を裏切らないことを徹底しています。

また、会社の運営においては、設備の最新化や職場環境の改善を進めることで、社員が働きやすく、力を発揮できる環境を維持できるよう努力しています。それと同時に、顧客の安心感を担保するために財務状況の透明性を保つことも重要です。そのため、顧客が最初に着目するであろう決算書で経営の健全性を示せるよう、財務管理に力を入れています。

難易度の高いハイスペック部品にあえて飛び込み、独自ポジションを維持

ーー貴社の事業内容を教えてください。

小野寺誠:
弊社の主な事業は、プラスチックの成形加工です。主な品目は、OA機器部品や光通信機器部品、インフラ関連部品、工業用部品各種、美容系機能部品などで、中でも高精度が求められるハイスペック部品を得意としています。

大手企業の取引先としては、OA、電気、光通信業界などですが、特にプリンター複合機に使う製品はニーズが高い部分です。国内多数の中小企業とも取引があり、業務分野と組織規模において、幅広い対応力があると自負しています。

また、高い品質を維持したまま、コストや納期をオーダーに近づけることも得意としています。これにより、海外企業との価格競争下においても、品質を優先した信頼される製品作りを続けることができます。

ーー貴社独自の強みをお聞かせください。

小野寺誠:
弊社の強みは、新しい材料や複雑な工程にも果敢に立ち向かう「チャレンジ精神」です。弊社が扱っているハイスペック部品は他社が参入しにくい分野であり、この分野において技術を高め続けることが、顧客と弊社両方にとって良い結果をもたらすと考えています。そのために、オートメーション化や独自の技術開発にも取り組んでいます。

また、社員からの意見を積極的にとり入れる「ボトムアップの文化」も弊社の強みです。管理職のマネジメントのもと、従業員が自発的に提案できる風通しの良い環境を整え、事業の改善につながるアイデアが生まれやすい下地を整えています。

受け継がれてきた「技術力」と「信頼」を大切にし、さらなる競争力獲得に挑戦

ーー今後、特に注力したいテーマは何ですか?

小野寺誠:
特に注力したいのが、売上のリスク分散です。以前、弊社の売上における最大手が占める割合は、約90%というハイリスクな状況にありました。現在は新規顧客の獲得によって約60%まで下げることに成功しましたが、いまだにリスクは高い状況にあります。今後も、売上のリスク分散を進め、より安心して働ける状況をつくっていきます。

また、最新の測定機器や自動化設備の導入による生産性と品質の改善や、バックオフィス関係を効率化するためのDXも推進していきます。さらに、デジタルマニュアルや動画の導入により、さまざまな国籍の従業員が働きやすい環境を目指しています。

そして、製造業に携わる会社の責務として、SDGsの理解や具体的な活動も進めていきます。現在は、専門講師を招いたワークショップや、製品の製造過程で生じる廃棄物を循環型に処理する仕組みづくり、省エネルギー設備の導入を進めています。

ーー中長期的な成長に向けて、重視していることをお聞かせください。

小野寺誠:
特に重視しているのは、製造業の国内回帰が注目され始めていることを受けた、国内市場への再注力です。国内競争が激化する前に技術の研鑽や生産キャパシティの拡大、生産体制の効率化などをスタートし、国内におけるアドバンテージ獲得を目指します。

また、弊社の根本にある「顧客からの期待に応え続ける」という信念に従い、多くの顧客から信頼される会社であり続けることも大切です。そのためにも、技術、組織、社会と、多方面に責任を持ち、信頼できる顧客との関係を築きながら、持続可能な成長を続けていきます。

編集後記

新興化学は、難易度が高い事業領域を主戦場としつつ、さらなる技術革新や取引先の開拓に挑戦することで、業界における地位を確立しようとしている。DXやSDGsの理解もその一端であり、同社の信頼を強固にしていくことだろう。確かな歩みを続ける小野寺社長が、次にどんな未来を描き出すのか注目だ。

小野寺誠/1977年東京都生まれ、日本工学院専門学校設計製図課卒業。試作加工会社に入社し、試作やモックアップの製作に5年間従事。2005年に株式会社新興化学へ入社し、2015年に代表取締役社長に就任。