【ナレーター】
その後、電子機器等の設計や製造受託を行うEMS企業を子会社化、中国・ASEAN諸国への進出など、順調に成長を続けているnmsホールディングス。この成長を支えているのは、かねてから意識している「限界を設けない」という考え方にあると小野は言う。
【小野】
「できない」とか、「難しい」とか、「前例がない」という言い訳をしたくなかったですし、限界点を自分で設けるとその器で終わってしまうと。これはずっと自分に言い続けてきたことであり、律してきたことです。
何かに挑戦する際、「それは成功しづらい」とか「難しいんじゃないですか」と周囲から意見されることもありました。
EMS企業の子会社化に関しても、当時の感覚から「そんな簡単じゃないよ」と何度も意見されましたが、顧客ニーズがある以上は進んだ方がいいという考えがありましたので、この方向(EMS事業の立ち上げ)に進めたと考えています。
また、「夢を語らない」ということも大切にしています。
人は夢を語りますが、夢は夢で終わってしまうんですよ。私の考えでは、夢という体(てい)ではなく、目標やKPI、達成するためのベンチマークとして捉えています。ビジネス上で夢というものはなく、実現するものだと考えていますね。
達成するためのひとつの指標であって「夢」ではない。だから夢を語らないし、指標を「夢」と定義しないと自分の中でずっと決めてきたことですね。
【ナレーター】
2023年4月、nmsホールディングスは新たな中期経営計画を策定。重点施策として挙げた3つのこととは。
【小野】
1つ目は、外国人材の活用ですね。
今は半導体の工場が新しくでき始めていますけれども、「やっぱり日本でモノづくりをもう1回やりましょうよ」と。
もともと基幹部品の製造は日本で行うことが多かったのですが、「最終組み立てまで日本でやりましょう」という製造業も増えてきているため、ますます人材が必要とされています。
当社ではすでに人材の選定と適切な教育をして、派遣するシステムが構築されていますので、これを見直し、日本で働きたい優秀な外国人の方々をきちんと教育・雇用して、安心して働けるような就職先を紹介することで、外国人材を活用したいと思っています。
2つ目は、中高年者の雇用促進。製造業で働いた経験があり定年退職した方の再就職先の提供ができると考えています。
高齢化が進む中で、製造業で働いた経験のある方々へ機会を与えていけばいくほど日本の経済は潤うと思いますし、雇用された方々の収入も増えますよね。今後はこの枠をさらに拡大し、社会へ貢献していこうと思っています。
3つ目は、メキシコ工場の黒字化です。おそらく今年の10月か11月に単月黒字が達成できると考えています。
外国人材の活用と中高年齢者の活用、メキシコ工場の復活。これが中期経営計画における大きなポイントになります。
【ナレーター】
今後は製造派遣以外の事業領域にも積極的に参画していきたいと語る小野。見据えている展望とは。
【小野】
家電の物販や修理に特化した事業を、もう少し体系化しようと一部、動き始めています。これが大きな柱になる可能性も十分あると思いますね。
あとは、もう少し海外のネットワークを強化して、グローバル人材の調達や工場の展開など、グローバルに事業を拡大させていきたいという思いもあります。
もうひとつは「農業」ですね。
世間では限界集落の増加や過疎化により、農業を引き継ぐ人がいないと言われています。しかし、若者がIターン・Uターンで戻ってくれば、高齢者が持っている農業のノウハウや知識、バイタリティを受け継いで、村を復活させることができると考えています。
たとえば、小さな集落で田んぼを再生したり、畑をつくったりとその一助となる取り組みをしていこうと思います。
これら以外にも、たくさんの事業を構想中でして、おそらく直近では2つの事業が中期経営計画以降にスタートできると思っています。
【ナレーター】
さらなる成長のためには、より多くのチャレンジャーを育てていくことが必要になると小野は言い切る。
【小野】
先程「限界を設けない」と申し上げたように、自分の後継者はどんどん挑戦をしていく人間じゃないと困るなと思います。
社員においてもチャレンジ精神がある方を、もっとたくさん育成していかなきゃならない。
これから50年100年と、この企業が続いていくのであれば、それぞれがきちんとこの会社としての志を突き詰めないと存続できませんし、存続したとしてもいい企業にはなれないんですね。
また、志を具現化する方法を、私自身もまたこれからつくっていかなければならないと感じています。
常に経営層、中間層を含めて、志というものを大切にしてほしいと思っていますね。
―大事にしている言葉―
【小野】
“臥薪嘗胆”という言葉を座右の銘にしています。
この言葉は元々紀元前5世紀の呉と越の戦争に由来するものです。言葉の意味としては「復讐するために今を耐えるんだ」なのですが、私の解釈としては、「目的を達成するために努力を重ねる」というような意味合いで捉えています。
これから経営していく中でいろいろな困難やアクシデントがあると思いますが、日々努力を重ねて成功するために頑張るということで、この言葉を座右の銘にしています。
経営者プロフィール
氏名 | 小野 文明 |
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役職 | 代表取締役社長 |
生年月日 | 1959年2月1日 |
出身地 | 長崎県 |
座右の銘 | 臥薪嘗胆 |
愛読書 | 青春の門/五木寛之 著 |
尊敬する人物 | SBIホールディングス株式会社 代表取締役会長兼社長 北尾 吉孝氏 |
1996年、移籍したテクノブレーン株式会社で新たにアウトソーシング事業を立ち上げ、1999年、製造分野を中心とした請負事業を行う会社(1985年設立、当社の前身会社)と合併。アウトソーシング事業の営業権を譲受し、事業責任者として事業拡大を推進。
2000年9月、社名を「日本マニュファクチャリングサービス株式会社」に変更、2002年4月同代表取締役社長に就任。
2017年4月からは持ち株会社体制に移行、nms ホールディングス株式会社へ社名変更し、現職。
会社概要
社名 | nms ホールディングス株式会社 |
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本社所在地 | 東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー45階 |
設立 | 1985 |
業種分類 | サービス業 |
代表者名 |
小野 文明
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従業員数 | 13,885名(グループ連結/2023年3月31日現在) |
WEBサイト | https://www.n-ms.co.jp/ |
事業概要 | ヒューマンソリューション(HS)事業・エレクトロニクスマニュファクチャリングサービス(EMS)事業・パワーサプライ(PS)事業におけるグループ事業統括および経営管理等 |