株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ 年間約12,000組の結婚式を手がけ、取扱組数で国内トップを誇る、プライム上場企業 株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ 代表取締役社長 岩瀬 賢治　 (2024年7月取材)

【ナレーター】
ウェディング事業を中心に、ホテルやレストラン、コンサルティングなど多様なビジネスを手掛ける株式会社テイクアンドギヴ・ニーズ。

「一軒家完全貸切」形式のハウスウェディングを業界に先駆けて展開し、現在は全国61店舗を運営している。

近年では、リアルな料金データを基にした業界初となる結婚式費用シミュレーションサービスの導入や、2025年より5日連続で一斉休館日を設けることを発表するなど、業界変革に向けて挑戦を続けている。

「ホスピタリティ業界にイノベーションを起こし日本を躍動させる」というパーパスのもと、歩みを進める企業と経営者の軌跡に迫る。

【ナレーター】
自社の強みについて、岩瀬は他社にはない充実したサポート体制を挙げる。

【岩瀬】
貸切の空間で行われる結婚式はそれ自体が魅力的ですが、どうサポートするかが重要です。弊社は、他社と比較して、圧倒的に人・モノ・お金を注いでいると思います。

例えば、カスタマーセンターを作った時には、1万組のお客さまに電話をして、結婚式場を申し込むときの期待値をはじめ、「打ち合わせの際に不都合がなかったか」「実際に式を挙げての満足度」「ご列席いただいた方の評判」などを伺いました。

ウェディングプランナーやシェフ、サービススタッフも、「お客さまにどう評価いただいているか」が自身の提供するサービスの前提になっています。カスタマーセンターを自社で持っている会社は、今も弊社以外にはないでしょう。その本気度はお客さまにも従業員にも伝わってると思います。

もうひとつは、会場の装飾に非常に力を入れていることです。500坪ほどの倉庫を保有して装飾に使うあらゆる什器・備品を保管し、札幌から鹿児島までの店舗が社内レンタルできる仕組みがあります。こんな仕組みを持ってる会社はなかなかないと思います。

店舗のメンバーだけでなく、会社全体で結婚式をサポートをする体制を構築できていることが強みなのです。

【ナレーター】
岩瀬のファーストキャリアは地元・名古屋で60年以上続くホテルだった。レストランや営業企画などの業務を経験し、順調にキャリアを重ねる中、2002年にテイクアンドギヴ・ニーズから声をかけられ、転職。当初は断っていたという岩瀬だが、何がその心を動かしたのか。

【岩瀬】
2002年の春に、名古屋の店舗の支配人を探しているということでお声がけいただいたのが、テイクアンドギヴ・ニーズという会社を知ったきっかけです。

当時、私が勤務していた創業から60年も経つホテルとは真逆のベンチャー企業でしたから、カルチャーがあまりに違うということで最初はお断りしました。一旦お断りした後、名古屋の開業準備室に来ていたメンバーとお話しする機会があったのですが、何の根拠もないはずなのに、「日本の結婚式を変えるんだ」と言うんですよ。

その時、「会社も人間と同じように大人になっていく。この志を持ったまま、成長して大人になった時には、きっといい会社になるのだろうな」と思ったのが、働いてみようと思うきっかけになりました。

【ナレーター】
入社後は、支配人、グループマネージャーを経て、営業統括部長に就任するなど、前職以上のスピードでキャリアを重ねる。そして、入社から5年後の2007年、岩瀬にとって大きな転機が訪れる。

【岩瀬】
入社当時の弊社は売上も利益も市場にコミットし、とにかく走りまくっていた印象です。一方、現場に近い私たちは非常に疲弊していたため、「このままじゃ、無理なんじゃないか」と思いながら結婚式を作っていたのです。

この状況を改善すべく、2007年に私が営業部長になった時に、営業の社員だけを集めて、「いい結婚式が作りたくて入社してくれたのに、教えるのは営業のテクニックや、売上を伸ばす方法ばかりで申し訳なかった。もう一回、お客さまを見て頑張るぞ」と伝えました。

そして、同年4月に、野尻から“人の心を人生を豊かにする”というミッションを全社員に対して発表してもらったのです。しかし、社員全員が非常に疲弊していたこともあって、2007年は残念ながら赤字になりました。

それでも、社員はきっと何かを感じてくれたと思います。例えば、結婚式のご契約をいただいた際、以前は「1件とった」と話していた社員の言葉が「1組お手伝いさせてもらえることになった」に変わっていったのです。このことから、会社が変わることが、社員にも浸透していったのではないかと思います。また、「企業理念を作って理念経営をするんだ」という覚悟も伝わったと思っています。

あの時がなかったら今はなかったかもしれません。まだ数字だけにこだわっていたら、多分今では私たちの会社はなかったでしょう。