オンラインでの英会話レッスンや、英語教育に関する様々なアプリを提供する、株式会社レアジョブ。質の高い講師陣と、気軽にレッスンを受けられるという利便性で業績を上げ、2014年にはマザーズ上場を果たした。そんな同社のシステムを支えている1人が、Cross Border TeamのTeam Leaderである穴澤八代氏だ。エンジニアとして生きてきた穴澤氏の苦悩と成長の軌跡を追った。

エンジニアとして生きるきっかけを得た学生時代

―学生時代にはどういった分野を専攻されていたのでしょうか?

穴澤 八代:
大学では機械工学を学んでいました。特に、車のエンジンやエアコンのタービンといった領域ですね。私が学生の頃は、ちょうどWindows95がリリースされ、家庭の中でインターネットが使えるという環境になりつつある時代でした。同時に、いわゆるシステムエンジニアという職業について、学生たちが認知し始めた頃でもありました。そんな中で、当時まだ学生の買い物としてはかなり高額だったのですが、なんとかノートパソコンを購入し、インターネットに触れることができたというのが、エンジニアとしての人生を考える1つのきっかけになったのではないかと思います。

コンピューターを扱う仕事に就きたいと考えていた中で、自宅近くの企業から内定を頂きました。ただ、実際にはお客様先にSIer(システムインテグレーター:顧客の課題を解決するためのシステムの構築や運用などを行う企業)の立場で常駐することが多く、自分が所属する会社で仕事をする期間はごくわずかでしたね。


―周囲に相談できる人もあまりいない中でお仕事をするのは、やはり大変でしたか?

穴澤 八代:
お客様の状況によっては半年や1年という長期間常駐することもありましたし、やっと慣れてきたところでまた現場が変わるということもありました。特に私の場合は1人で現場に行くことも多く、業界全体のことやノウハウを先輩社員から1つ1つ教えていただくことが難しい環境でした。その分、現場で自ら学んだり、お客様先の社員の方から教えていただいたりする中で、課題解決のためのスキルを身に付けていくことができました。ただ、やはり自分の会社に対する帰属意識というのは、当時は希薄だったところはあります。

職場が変わって気づいた帰属意識の重要性

―3年ほどお勤めになられた後、退職をされ、新たに別の企業でお勤めになられたと伺っておりますが、その経緯についてお聞かせいただけますか?

穴澤 八代:
退職してしばらくした時に、前職の同期の1人で、既に転職をされていた方から、エンジニアとしてシステム開発を手伝ってほしいとお声をかけていただき、最初はアルバイトのような形でお手伝いに行きました。その企業も、最初の会社と業務内容は大きく変わらないのですが、お客様先に常駐するということはなく、自社の中で開発をしていました。ですので、初めて同僚や上司に相談ができるという環境に身を置くことができたのです。やはりいくら情報を共有していたとしても、あちこちに散らばっていては仲間がいるとか、自分と同じ仕事をしている人がいるということは、日々の中で感じることができません。

自分の拠点で仕事をするというのは、自分がどこに所属しているかという意識をつくるためには非常に重要なことだというのを、その時痛感しました。

一念発起して始めた新たな仕事

―その後はどういったキャリアを歩まれたのでしょうか?

穴澤 八代:
アルバイトから契約社員となり、その後も正社員にならないかとお声がけをいただいていたのですが、自分の中で仕事に対する情熱が一旦失せてしまい、家からあまり出ずにパソコンを触っていた時期もありました。そんな生活をしばらく続けた後、このままではいけないと思い立ち、営業代行サービスを行う企業に就職しました。

割と大掛かりなシステム移築などを手掛けることになり、「これは本腰を入れなければ」とスイッチが入ったんです。もともと凝り性ということもあり、一度やると決めたからには、とことんやり抜く主義ではありました。その会社では、日々のメンテナンスから、社内インフラやミドルウェアの構築まで任せていただいたほか、お客様へのサービスなどにも携わることができました。当時エンジニアが私を含めて2人しかいない環境でしたので、課題が出てきても、何が何でも自分たちで解決しなければならないという使命感を持っていました。この会社での経験が、今のエンジニアとしての私の基盤をつくったのではないかと思います。

システムの向こう側を想像する喜び

―エンジニアとしてのやりがいは何でしょうか?

穴澤 八代:
もちろんシステムをつくることも好きですし、学生の時のように、つくったものがきちんと動くことに喜びを覚えますが、今はそのシステムを使ってくださる人たちのことを考えることが一番の原動力になっています。その気持ちが、仕事に対する責任感を生むことに繋がっています。今でもレアジョブのメンバーとは、システムの先にいるお客様のことを考えて仕事をしようという話をしています。


―その中で、レアジョブのエンジニアとして感じた喜びはありますか?

穴澤 八代:
前職にいた時は、どちらかというと社内向けのシステムが多かったということもあり、エンジニアとしてサービスを世の中に届けられる仕事をしたいと考えてレアジョブに転職しました。当時、Skypeを通してレッスンを提供するというサービスモデル自体がまだ珍しい時期でしたが、レアジョブのことを知っているエンジニア仲間たちは多くいました。入社して1年ほど経った頃、ちょうど自分が関わっていたサービスがリリースされました。そんな時、あるエンジニアの人が、私がレアジョブに勤めているとは知らずに、そのリリースされたサービスについて褒めてくださったんです。自分のつくったサービスを使った人がいて、その人が本音で喜んでくれている。それが私にとってはとても嬉しかったんです。そういった経験は今まであまりしたことがなかったので、「私が感じたかった気持ちはこれだ」と思った記憶があります。

新規事業への挑戦が、海外勤務へと繋がった

―2012年に御社にご入社されて以降、どのようなお仕事に携わられてきたのでしょうか?

穴澤 八代:
入社した時は、1人のエンジニアとして社内システムのリプレイスに携わり、今まで使っていたレガシーなシステムを変更したり、無駄を削ぎ落したりしながら、根本的に仕組みを変えていきました。その中でレアジョブのサービスが持つ面白さを改めて認識し、手応えを感じるようになりました。その後、スマートフォンアプリをつくるということが決まり、フィリピンのオフィスにいるエンジニアと共に仕事をすることとなりました。それが今のサービスの1つ、英語のスタンプを使ってチャットをしながら英会話が学べるアプリ『Chatty』に繋がっています。そこでは国内のエンジニアとだけでなく、フィリピン人のエンジニアと遠隔で業務を進める必要がありましたが、その経験が現在のキャリアに繋がっているのだと思います。


―その後、2016年11月から約1年間、フィリピンに駐在されるわけですが、海外勤務はご自身の希望でもあったのでしょうか?

穴澤 八代:
フィリピンでエンジニアとして仕事をしている社員も当時から既におりましたので、そういう人たちと一緒に海外で仕事ができるチャンスがあるなら頑張りたいということは、常々上司に話していました。レアジョブにいるからこそフィリピンで働けるチャンスがあると思っていたので、他の会社にはない環境で仕事ができるのならば、それに挑戦してみたいと、ずっと考えていたのです。

現地マネージャーからの思いがけない言葉

―フィリピン滞在の中で、印象的なエピソードはありますか?

穴澤 八代:
私の仕事内容の中には、現地の社員がそれまでやってきたことを改善するなど、どちらかというとスタッフからは煙たがられても仕方ないと思うものもありました。私自身は、そういう役目だと割り切った上で仕事をしていたので、辛いと思ったことはなかったのですが、1年間の滞在期間を経て帰国する日が近づいてきた時、私の直属の上司から「フィリピン人マネージャーが、君がフィリピンに残ることを非常に望んでいる」と聞かされたのです。

現地のメンバーたちと1年間、様々な議論を重ねてきて、時には彼らにとって耳の痛い話をしなければいけない時もあったので、現地スタッフから必要とされているということを伝え聞いた時には自分が1年間やってきたことが報われた気がして、とても感動した記憶があります。

チームリーダーとしての新たな挑戦に向けて

―現在、Cross Border TeamのTeam Leaderでいらっしゃいますが、マネージメントではどういったことを心掛けていますか?

穴澤 八代:
それぞれのメンバーが抱えるプロジェクトの種類は多岐に渡っていますので、同じチームのメンバーがどんな仕事をしているのかわからなくなる可能性があります。一丸となってレアジョブのサービスをつくるという気持ちが薄れてしまうのを避けるため、日々のミーティングはもちろん、仕事内容の相談や他愛ない会話なども含め、チーム内のコミュニケーションを活発化させ、お互いを補完し合えるチームづくり心掛けています。


―エンジニアという職種自体、男性に比べまだ女性が少ないように思われますが、今後どのようになっていってほしいとお考えですか?

穴澤 八代:
私は「女性だから」ということを仕事の上で一度も意識したことはありません。ただ、個人的には、女性はエンジニアリングに向いているのではないかと思います。きめ細かなコミュニケーションを取ることに関しては女性が長けていると思いますので、それはシステムを細かく見ていく際のアドバンテージにもなります。働き方が多様化していく中で、職種の男女差の偏りは徐々に減っていってほしいと思いますね。


―最後に、今後の目標についてお聞かせください。

穴澤 八代:
現在、英語学習を提供するサービスが次々に台頭してきている中で、やはりチームや自分が所属している組織のパフォーマンスを上げることが重要だと考えています。「ここはレアジョブでなければ、求める学習効果は得られない」というサービスの強みを、更に大きくしていきたいと思っています。

編集後記

様々なキャリアの中で、常にエンジニアとしてモノづくりに真摯に向き合ってきた穴澤氏。1つのプロジェクトを完遂する中で見出したエンジニアとしての喜びは、更にその先の課題を解決するための原動力となっている。今後、新たな挑戦を続ける穴澤氏が手掛けるサービスが、英語教育を大きく変える1歩になるかもしれない。

穴澤 八代(あなざわ・やしろ)/1976年生まれ。法政大学卒。
SIer(システムインテグレーター:顧客の課題を解決するためのシステムの構築や運用などを行う企業)でキャリアを積んだのち、2012年、株式会社レアジョブに入社。現在、Cross Border TeamのTeam Leaderとして活躍を続けている。趣味はお酒を飲むこと、居酒屋めぐり。座右の銘は「酒は飲んでも飲まれるな」。

※本ページ内の情報は2018年2月時点のものです。

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株式会社レアジョブ 代表取締役社長 中村 岳 (2018年1月取材)