競合よりも圧倒的優位に立てるKudanの武器
御社の技術が持つ強みについてお聞かせいただけますか?
大野 智弘:
弊社のAR技術はパフォーマンスが大変良いのが特徴です。ARは対象となる風景やモノを認識して、そこに3D画像や音楽をはめ込むものですので、画像認識技術が重要になります。その場の明るさなどの状況によって読み込みが上手くいかない場合もありますし、非常に高性能なカメラで読み込めば動くけれども、携帯のようなスペックの低いカメラでは動かないなどということも多々あります。しかし、弊社のARは様々な状況と機器に柔軟に対応することができるように作られているのです。
そして、Kudanの最大の強みというのは、先進的な技術を取り入れ、“次世代に行くための準備”をしているという点にあります。デバイス類の進化のスピードは凄まじいものがあります。1年後、2年後の状況もわからない程、この分野における技術の進歩は速く、予想をすることが困難です。弊社では今、携帯やタブレット向けの技術をメインに提供していますが、開発の段階では高性能のカメラとプロセッサを搭載する端末向けにエンジンを作ります。それをわざわざ機能を削り、ダウングレードして現在の携帯やタブレットのスペックに合わせているのです。そうすることで、今後、一般の消費者が今より高機能なスマートフォンを手にした際に、対応できるだけの余地を残しているのです。
現段階のデバイスや技術に依存していたら、次に登場するハードでは動かせない可能性がありますからね。“見えない変化への担保”こそが、競合よりも圧倒的優位に立てるKudanの武器だと考えています。
未来を見据え、技術の深層に潜り続ける
御社の今後の展望についてお聞かせください。
大野 智弘:
Kudanは創業以来“非競合の戦略”を取り続けています。要は独占の戦略ですね。いかに他社と競合せず、新しい市場にいち早く降りていくかということを考えてきました。我々がARアプリの開発をし始めた時には、同業はほとんどいませんでした。だからこそ、大手のクライアントが我々を選択してくれたのです。その後、ARアプリの世界に他社が参入してきて、だんだんと市場が混雑してきたと感じたので、我々はそこから下の層、つまりエンジンの世界に降りました。そして今、エンジンからアルゴリズムの世界に入ってきています。
技術の世界のイメージは、逆さピラミッドのようなものです。根幹に近い技術になればなるほど、その技術を使った製品の数や種類は増えていきます。深堀りしていくほど、横展開できるようになるのです。ですので、いかに深く掘り下げ、そして広げていくかということが、今後の我々の戦略になります。今から3年後、あるいは1年後に、今よりも1段階も2段階も深い技術の開発に取り掛かれるよう、現在動いている最中です。
少数精鋭の真意
今、御社に足りないものはありますか?
大野 智弘:
敢えて言うのであれば、人材については人数や分野を含め考えているところです。今は少人数で運営しておりますが、同じことを他の会社でやろうと思えば、おそらく3倍、4倍の人数が必要になると思います。ただ、社員が少ないのは雇えないからではなく、1人で何人分もの活躍ができる人材だけを採用しているからなのです。先ほども申しましたように、我々の要素技術は想定できない部分にいかに対応できるかということに重点を置いています。
私は組織も同じだと思っていまして、想定外の状況になったときに大人数、あるいは単機能の人たちが集まっていると対応できなくなってしまう時があります。多機能な人たちだけを集めた少数精鋭で動くことで、様々な状況にも柔軟に、かつスピーディに対応することができると考えています。人材は必要ですが、一気に人数を増やすというのではなく、そういったスキルを持った人たちを少しずつ増やしていけたらと思っています。起業やベンチャーを考えているような人たちは、我々の会社と相性がいいかもしれませんね。
編集後記
最先端だと言われた技術でさえも、瞬く間に使い古されていってしまう現代において、大野社長は、拡大した技術の市場に固執するのではなく、その更に奥にある技術に焦点を当て、まだ世の中で本格的な開発が始まる前に着手している。まさにブルーオーシャンを常に狙い続ける姿勢、そしてそれを可能にする優秀なスタッフの存在が、他の企業の追随を許さない技術力を維持しているのだと感じた。今後、同社の技術が一般ユーザーの手元にどのような形で届くのか、非常に楽しみである。