株式会社NSアセットマネジメント 創設者 藤山大二郎氏

公式HP:https://nsam.jp/

ー創業の秘話などございましたら、お聞かせいただけますでしょうか。

藤山氏:
元々29歳くらいの時に不動産投資を始めたのですが、当時の私は不動産投資の情報を得る場所が極めて少ないと感じていました。

不動産投資が流行り始めたタイミングで、一般的に「投資」という言葉が若者にも浸透してきた頃でしたが、それでもそもそも20代から不動産投資をやっている人はまだ少なく、今よりも興味を持つ人が少ない時代でした。

一般的に馴染みがないかもしれませんが、大家同士で情報交換するコミュニティとして”大家の会”というものが各地に複数あり、実際に投資家同士で話して情報を得られる場所として多くの投資家が参加しています。

当時Twitterやブログなど、インターネットでも情報収集していましたが、実際に投資家の声を聞きたくて、私もいろいろな大家の会に参加しました。

参加者の大半は50代くらいで自分の親世代。若くても40代までで、同年代の投資家はほぼおらず、参加者からはかわいがってもらえるものの、得られるアドバイスはどこまで本当なのかも掴めずいまいちピンとこないものばかりでした。

不動産投資を長年やっている人ばかりなのでいろいろ教えてくれそうな気がしますが実際はそんなこともなく、年代も違うし話を聞くことにも疲れてしまって。次第に”同じ年代の大家の会をやりたいな”と思うようになりました。


そんなある日、大家の会の忘年会に参加し、そこで現在取締役の薩摩と初めて出会いました。「若い人がいる!」とお互いに感じた部分もあり、喫煙所で一緒になった時に話し、連絡先を交換しました。

当時薩摩は25歳くらいで、大勢の参加者の中でもひときわ若く、目立つ存在でした。

薩摩とはすぐに意気投合し、友人関係に。「同じ年代で不動産投資家の飲み会するから良かったら来なよ!」と誘われ、行った先で後々一緒に会社を手伝ってくれる仲間とも出会います。

品川の普通の大衆居酒屋での飲み会だったのですが、今でも鮮明に思い出せるくらいすごく盛り上がりました。

皆同じ年代で、不動産投資に対し同じ熱量を持っていて、今の現状に不満を抱えていたのです。

「20代のための大家の会を立ち上げよう!」その言葉をきっかけに『20代サラリーマン大家の会』というコミュニティを立ち上げることになりました。

資本関係は全くないですが、今考えるとこの大家の会はNSアセットマネジメントの前身となるコミュニティだと思います。

有益な情報を交換する会を立ち上げることが目的だったので、入会条件は一定の投資規模以上(毎月のキャッシュフロー〇〇万以上等)という条件付きで運営していました。

知識や情報格差があるコミュニティになると、経験のある人は初心者の方から質問攻めになってしまい、人によって得られる情報量にばらつきが出てしまうからです。

利益を出すつもりもなく会費は経費を払うとほぼプラマイゼロのような運営スタイルでした。

条件付きでも入りたい人は後を絶たず、規模はどんどん拡大していきます。200名規模になったくらいの段階で、運営メンバーの負担が相当大きくなっていました。

今までは利益を全く出さない運営方針でしたが、コミュニティをより質の高い会にして継続していくためにはどうするべきかを運営陣で話し合い「20代サラリーマン大家の会」という法人を作りやっていく事に決めました。

大家の会で何かイベントを行う時は自分たちでLPを作ったり、準備をしたりと忙しく、さらには個人で依頼されるコンサルの仕事やブログ、自分の不動産投資事業もあり、私と薩摩はサラリーマンをリタイアしていました。


大家の会は大所帯となり、運営メンバーでも手伝う人とそうでない人が出てきたりと中だるみを感じるようになりました。

このままだらだら続けていくのかどうか、運営メンバーとも議論し、大家の会は終了。私個人で頂くコンサルティングの依頼などを薩摩が手伝ってくれていたのですが、その延長線上で弊社NSアセットマネジメントを立ち上げることになりました。

ー貴社のサービスの中でも特に強いこだわりがあるという点がございましたら、ご教示いただけますでしょうか。

藤山氏:
不動産投資家による不動産投資家のためのサービスを提供するところが他社にないこだわりポイントです。

経営陣や社員が自ら不動産投資をやっている人が集まっている不動産会社はそんなに無いと思います。だからこそ一般的な不動産投資の商品よりも専門性の高い、ぱっと見難しい案件(例:再建築不可物件や法的瑕疵など)を扱えるのです。

不動産投資に対するリスクをとることで、利益を出すという手法を自信を持ってお勧め出来るのはそもそも私たちが投資家として自分で再現出来ているからなんですね。

一般的に会社で新しいサービスを作り出そうとすると、ユーザーがこんなものを求めているのではないか、という仮説を立てて作っていきますよね。

弊社は既に自分たちでやったことのある投資法をサービスにしています。

さすがにある程度投資規模のある私たちと初心者の方が同じ取り組みをするのとでは、資金力や、知識と経験の無さによる心理的ハードルに差があります。その差をどう埋めるのかが弊社側の課題です。

例えば、弊社のコンサルティングプログラムの一つに再建築不可物件を法的手続きで建築可能にしてバリューアップし利益を得る投資法があります。

少額で挑戦出来る上に、再建築可能に出来れば高い利益が望めるものの、この投資法は再建築できると思って購入した物件が必ずしも再建築出来るとは限らないというリスクがあります。

どんなに可能性が高くても100%ではないので、最終的な判断は投資家自身が下すしかありません。

弊社では
・そもそも絶対再建築出来ない物件はわかる
・再建築できる度合いがわかる
・再建築不可物件を仕入れ、再建築可能度合もあわせてご紹介している
・何年も再建築不可物件が建築可能になる経緯を見続けているため、再建築可否の違いに対する膨大な経験値とデータがある
・どの部分がリスクになりそうか根拠をもとにアドバイスできる
・土地家屋調査士や測量士など、再建築不可物件に関する知識と経験を弊社と共に積んできたプロが提携している

といったメリットがあり、投資家の方が取り組みやすい環境を用意しています。

ー貴社がヒットしたその秘訣を伺えますでしょうか。

藤山氏:
大きくわけて2つあります。

1つ目は投資家のニーズに沿ったサービスを展開していることです。

こういう投資をすれば利益が出るだろうなと現役の投資家が考えてサービスを作っています。

リアルに投資家から求められているニーズに対してサービスを作ることが出来ているので、需要と供給が一致しヒットに繋がっています。


2つ目は不動産業界の中でインターネットを駆使してマーケティングしていることです。

良い商品があっても、知ってもらえなければ意味がありません。

弊社では立ち上げ当初からメルマガ、LINE、ブログ等を駆使して情報発信しており、リアルで行っていたセミナーをいち早くWEBセミナー化したりと、他の不動産会社に比べITに強い組織でした。

不動産売買というと、一般的には個人の営業マンの営業力でお客さんに物件を販売し、会社を伸ばすようなイメージがあると思います。

特に投資となると売る相手によって勧める物件は違ってきます。顧客の属性、自己資金など様々なことをふまえて物件を紹介しなければいけません。

対面や電話で営業して買ってもらうことになるので、営業マンを増やしていくことで事業を拡大していくイメージです。

しかし私も薩摩も不動産会社出身ではありませんし、私はサラリーマン時代にWEBを使った集客を行ってきました。

インターネットを使って自社サービスを広めていくことに抵抗感や不安がなく、業界的にそこで突出出来たことは大きかったです。


ニーズのある商品開発とWEBでの集客、この2つが嚙み合ったことがヒットの理由となります。

ー採用に関する質問です。貴社が採用に関して重要だと考えていることはなんでしょうか。

藤山氏:
自分より優秀だと思える人を採用できるかどうかだと思います。

特に”仕組みを作れる人であるかどうか”や”弊社のカルチャーに合うかどうか”を重要視しています。

例えば1人で売り上げ5000万を作れる人よりも、1人がさらに5人に協力してもらって2億、3億と作れる人。

営業マンとして数字を重要視されるような会社にいた人は自分だけの数字を伸ばすことを考えがちですが、チームで働いてきた人は自分で動いて数字を作るのではなくいろんな人を巻き込んで1人では達成できないような大きな数字を追っていきます。

弊社は少ない社員数で高い利益を出していこうとしているので、この仕組みを作れる人は大きな存在感を発揮します。

不動産業界の印象は体育会系の営業マンがいて、インセンティブで荒く稼いでいくようなイメージを持たれがちですが、弊社みたいな会社ではそういう方は合わないかもしれません。

NSアセットマネジメントのこういった考えやカルチャーは私が脱サラする前まで働いていたDeNAという会社から影響を受けています。

私がDeNAで営業マンをやっていた頃、何ヶ月も連続で個人目標150%達成をしており、それに対して凄く自信も持っていました。しかし、上司との考査面談で「いつも達成しててすごいね。でもなんで300%達成を目指さなかったのか?」と問われたことがありました。

何故一人で150%達成が出来るのに、チームで300%達成を目指さなかったのか?という意味なのですが、まさしくその言葉からDeNAのカルチャーが伝わってきますよね。

一人の力なんて頑張っても高が知れていますが、複数の人と協力することで、一人では到底掴めなかった大きな成果を掴むことができます。

それは同時に会社を大きく成長させることにも繋がります。

NSアセットマネジメントにもDeNAで良いと思ったカルチャーを多く取り入れており、新しく入社する方がそこに共感出来るかどうかは会社の成長にとって大きな影響を与えると思っています。

ー貴社の今後のビジョンや目指す姿などを教えてください。

藤山氏:
中長期でいうと、会社としてはIPOを目指して組織を作っています。IPOはNSアセットマネジメントの個人向けのコンサルティングという事業で、信用力を得る、事業を伸ばすために必要不可欠だと思うからです。

結果的にIPOしないという判断もありえることですし、本当に必要かどうかも今後詰めていきますが、いずれにせよパブリックカンパニーとして信用力のある会社を作っていくということは重要だと考えています。


弊社には不動産投資をやりたいと思って入社してきている人たちがたくさんおり、不動産投資をしながら会社で働く安定感やメリットを感じている人も多くいます。

お金を稼ぐために仕事をしている人は、弊社の社風に合わないかもしれません。

私を含め創業メンバーはほぼ全員が投資家で、家賃収入で生活することができたからこそ、自分たちの利益を考えずにサービスを作ることができました。

不動産投資をやっていたからこそ、個人の経済的な安定と会社を伸ばすことは別で考えることができたのです。

IPOをすれば会社としての信用力が大きくなり、社員も不動産投資しやすい環境になると思います。そのため、中長期的なビジョンとしてIPOを目指しています。