近年、企業による、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)を考慮した取り組みや成果を投資判断の指標とする「ESG投資」の気運が高まっています。
とりわけ、環境と社会に関する課題を具体的にまとめた“SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)”は、今や耳にしない日はない言葉ではないでしょうか。
これまでは、企業が売上高や利益を優先し、環境、社会、法令を軽視するケースがありました。
しかし、近年では、環境問題や社会課題への解決に取り組み、健全な経営を行っていることが企業の安定性、ひいては中長期的な利益につながるという見方が拡大。
投資家の判断基準として重要性が増したことで、各企業がSDGsに関する活動を加速させている一因となっています。
SDGsが声高に叫ばれるのは、環境問題や社会問題の深刻化に歯止めが効かなくなっているからです。
「wbcsd SDG Essentials for Buisiness」によると、2011年から2020年の気温は1850年から1900年の気温と比較して1℃以上上がったといわれており、気温の上昇にともない海面上昇率も高くなっています。
環境汚染においては、海洋プラスチック量は2050年までに魚の量よりも多くなる見込みであり、労働・家庭面においても、2017年には8億2100万人が栄養不足とみなされています。
よりよい社会の実現に向けて、これらの環境汚染や貧困などの社会的な問題を解決していくためには、SDGsへの取り組みは避けられないものとなっています。
今回は、『社長名鑑』に掲載している、SDGsの最前線で取り組みを推進する注目企業を厳選し、3社のインタビュー動画を紹介します。
各社の取り組みから、その真意やSDGsの達成に向けた経営者の想いを探ります。
【目次】
1.株式会社ユーグレナ 2.株式会社荏原製作所 3.株式会社サンリオエンターテインメント まとめ |
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1.株式会社ユーグレナ
2005年12月、世界で初めて微細藻類ユーグレナの食用屋外大量培養を成功させた株式会社ユーグレナ。
ビタミン、ミネラルなど59種類もの栄養素を有する画期的な微生物であるユーグレナをもとに、食品や化粧品の製造販売を行っています。
その一方で、豊富な栄養素を持つ『ユーグレナクッキー』をバングラデシュの子どもたちに届ける『ユーグレナGENKIプログラム』を展開。
外務省が開催したSDGs達成に資する優れた取り組みを行っている企業・団体などを表彰する『第5回ジャパンSDGsアワード」にて“バングラデシュにおける貧困農家の収入増と難民への食糧支援を実現”し、SDGs推進本部長(内閣総理大臣)賞を受賞しました。
近年では、バイオ燃料の開発やバイオテクノロジー関連ビジネスの事業開発、投資などを行うなどサステナビリティ領域にも事業を拡大。
バイオ燃料の完成、バイオジェット燃料でのフライト実現、定款の事業目的においてSDGsを反映した内容に全面刷新したという取り組みが評価され、『Beyond Sustainability 2021」の環境賞も受賞しています。
同社の創業者である出雲充社長は、定款で定める事業目的を全面刷新した真意について「より伝わりやすく当社のやりたいことを表現するため」としています。
以前は、バイオ燃料の取り組みに対して誤解されることもあったといい、「新しい産業は、その産業の境目が今までとは全く違うものになりつつある。そのため、定款そのものを、勇気をもってSDGsにフィットする形でつくり直しました」と述べています。
ユーグレナという栄養価の高い微細藻類の可能性を追求し続け、事業化とその拡大を実現させた出雲充社長の想い、SDGsの達成に向けた姿勢など詳しくはインタビュー動画をご覧ください。
2.株式会社荏原製作所
株式会社荏原製作所は、インフラ整備に欠かせないポンプ技術を祖業とし、100年を超えて世界の産業と社会を支え続けています。
イタリアのグループ会社Ebara Pumps Europe S.p.A.と、水処理施設向けの再生可能エネルギー ソリューションを専門とするドイツのBoreal Light GmbHの協働による、安全できれいな水を途上国に供給するプロジェクトを2021年にケニアで開始。
地域社会の人々の健康と持続可能な浄水・給水システムのモデルケースを創ったことが評価され、2021年に外務省が開催したSDGs達成に資する優れた取り組みを行っている企業・団体等を表彰する「第5回ジャパンSDGsアワード」にて特別賞を受賞しました。
2022年の活動においても、東アフリカ地域においてポンプや灌漑設備の販売を行う支店として、EBARA Pumps East Africaをケニアに設立。
ソーラー灌漑設備を用いた農業の発展支援にも取り組んでおり、長期ビジョン「E-Vision2030」の中で掲げている「水や食べるものに困らない世界」の実現を目指しています。
長期ビジョン「E-Vision2030」の実現を目指し策定した中期経営計画『E-Plan 2022』 について、浅見正男社長は「これから100年先、10年先の社会はどうなっているか、当社はどのように貢献できるかを考え、そこからバックキャストして2020年~2022年の3年間でやらなければならないことを初めて考えた」と語ります。
創業100年を超える老舗企業が、起こりうる未来に対してどのような想いを持ち、ビジョンを策定していったのか。その全貌はインタビュー動画をご覧ください。
3.株式会社サンリオエンターテイメント
エンターテイメント業界において、SDGsの達成に向けた取り組みをひときわ推進している企業が、テーマパークの『サンリオピューロランド』を運営する株式会社サンリオエンターテイメントです。
2021年10月24日の「国連デー」では、『みんなで考えるSDGs in ハーモニーランド』と称したイベントを開催。人気キャラクター『ハローキティ』がSDGsの大切さを訴えるステージや、女性が活躍するためのトークセッションなどが行われました。
また、『ハローキティ』がSDGsを応援するコンテンツも動画で配信しており、外務省のSDGs公式HPにも掲載されています。
さらに2022年4月より、「SDGsの輪を広げていきたい」という想いを込め、『みんなnakayoku 地球を笑顔に!ハーモニーランドSDGs DAY』と銘打ったイベントを定期開催。
紛争地域の女性支援を目的とした募金活動やペットボトルのキャップ回収などを行い、集まった募金は紛争地域の女性支援に、ペットボトルキャップは「認定NPO法人 世界の子どもにワクチンを 日本委員会」に寄付し、子どもたちの未来を守る活動を支えています。
今後の目標・夢について、小巻亜矢社長は「女性のQOL(生活の質)を上げること」と語っています。
「女性の生理をタブーではないものにすること。どう変わったら男性も含めてお互いが思いやりをもてるようになるのか、ということを、まず『Lets' talk!』というイベントを通してムーブメントとして立ち上げています。より良く、自分と向き合いながら、女性ならではの課題を解決していくということに人生を捧げたいと思います」
自身の目標・夢の実現に向け前進を続ける小巻社長。
同じく女性経営者であるのマネックス証券、清明祐子社長との対談では、自身や自社の在るべき姿、ダイバーシティ経営における考え方なども語られています。詳細は下記の対談動画をご覧ください。
まとめ
食糧問題、環境汚染、女性の社会進出など、我々が向き合わなければならないさまざまな課題に対し、SDGsの掲げる17のゴールを通してそれぞれの事業領域の中で取り組んでいる3社の例をご紹介しました。
これらの企業の行動は、社会課題改善の一助となることでしょう。
各社のSDGsへの取り組みと経営者の想いに触れたことで、今、社会が何を求めているのか、そのニーズを満たすために自身ができることは何かを考えるきっかけになれば幸いです。