新型コロナウイルス感染症の流行によりテレワークが急速に普及し、日本企業は大きな転換期を迎えています。

コロナ禍以前には全国で10.3%だったテレワーク実施率は、1年間で21.5%(2020年12月)に上昇。東京都23区の従業員数30名以上の企業に限ればテレワーク導入率は63.5%(2021年2月時点)となっており、この割合は都市圏を中心にさらに高まることが予想されます。

しかしながら、テレワークに移行しながら独自の取り組みによって業務を継続し、業績アップにつなげる企業がいる一方で、生産性の低下など様々な理由でテレワークを断念する企業も存在します。

感染症という不測の事態によって図らずも進んだ国内の働き方改革。新型コロナウイルス感染症の影響の長期化を含む情勢の変化に対し、企業はどのように向き合っていくべきでしょうか。

テレワーク環境をいち早く構築した4社の姿から、働く場所を問わず生産性を向上させるためのヒントを探ります。

※本記事ページ内の情報は、2021年3月15日時点のものです。

【目次】
1.株式会社ウエディングパーク
2.株式会社チームスピリット
3.株式会社カケハシ
4.株式会社RevComm(レブコム)
まとめ

1.株式会社ウエディングパーク

https://www.weddingpark.net/

緊急事態宣言下のテレワーク全面実施をきっかけに、オフィスの意義から見直しを始めた企業が、日本最大級の結婚準備クチコミ情報サイト『ウエディングパーク』を展開する株式会社ウエディングパークです。

同社は以前よりG Suite(現Google Workspace)などクラウド上でのデータ管理へ移行を進め、2019年より在宅勤務の試験導入も実施していたため、2020年3月末に決定した全社員の在宅勤務は、必要に応じてポケットWi-Fiを貸与した上での即日開始を実現させました。

出社率30%未満の継続

2020年3月末~5月末までは自宅での完全テレワークを実施し、その後は事前申請制により出社率を30%未満に抑えて出社を再開。

2021年3月時点においても、出社時はマスク着用、席の間隔を2m以上あける、時差出勤や午前/午後のみ出社などで混雑のピークを避けるといった対策を行いながら、出社率30%未満のルールのもとテレワークを中心とした勤務形態を継続しています。

オンライン交流での自社カルチャーを推進

出社を前提としない業務フロー・ITツールの整備やマネジメント研修、リモートワーク手当の支給等を行いつつ、オンラインでの社員総会やイベント、オンライン交流会の飲食費一部補助など自社のカルチャーを推進する社内制度を実施しています。

オフィスは「未来を共創するコミュニティスペース」

インナーコミュニケーション強化を目的とした施策により社内の一体感が向上したことから、同社はプライベートの時間を充実させるテレワークと、社員同士の偶発的なコミュニケーションが生まれるオフィス業務の両立が、自社らしいカルチャーをさらに発展させる「ニューノーマル」な働き方と位置づけて、東京本社のリニューアルを決定しました。

テレワークと出社を両立する勤務形態を前提に、仲間と同じ場に居合わせるからこその刺激を提供する「未来を共創するコミュニティスペース」としてのオフィスが、2021年3月1日に誕生しています。


仕事とプライベートの両立がしやすくなった社員が増えたというウエディングパーク。

ウエディング業界に向けても、360°バーチャルツアーができる結婚式場向けオンライン接客支援ツール『フェアつくonline β版』をリリースするなど、ウエディング業界全体のDX支援強化を目指し、活動を続けています。

▶ウエディングパーク 代表取締役社長 日紫喜 誠吾氏のインタビュー動画はこちら

2.株式会社チームスピリット

https://www.teamspirit.com/ja-jp/

日本国内で初の新型コロナウイルス感染者が確認された2020年1月、世の中に先駆けて全社員の在宅勤務を発表したのが、勤怠管理、就業管理、工数管理、経費精算、電子稟議等の社内業務を一元化するクラウドサービス『TeamSpirit』を開発・提供する株式会社チームスピリットです。

世の中に先駆け、全社員テレワークでの勤務へ移行

1月30日には全社員が原則在宅勤務に移行することをプレスリリースで発表。以降、緊急事態宣言発令期間は一時的に対応レベルを上げるなど、社員の安全を第一に考えたオベレーションを行いつつ、在宅勤務を原則継続させています。

同社がこれだけ迅速にテレワークに移行できたのは、週に一度の在宅勤務を奨励する制度「CloudWork1(クラウド・ワーク・ワン)」を2014年9月から実施しており、既にテレワークのスタイルが定着していたからに他なりません。

電子署名導入でフルテレワーク化を実現

さらに、電子署名『DocuSign eSignature for Salesforce』と自社サービス『TeamSpirit』の電子稟議機能を連携し、2020年4月より社内で本格稼働したことによって、一部で残っていた印鑑による押印作業の電子化も実現。

ほぼ全ての社内業務がテレワーク可能となるだけでなく、決裁スピードの迅速化にも成功しました。

また、働いた時間と成果を可視化できるシステムを活用してチームの生産性を高めたり、社員にテレワーク環境を整えるための支援金を支給したりして、テレワークでの業務効率向上を図っています。

「Hidden Heroes」を投票で選出

テレワーク環境下では、直接的なコミュニケーション機会が減少し、個別でのフォローがしづらい状態が続いていたことが課題となっていました。

その解決策の一つとして打ち出したのが、社員の素晴らしい取り組みを月1回の投票により表出し、発表する「Hidden Heroes」です。

また、新入社員のオンボーディングを充実させ、ウェルカムランチなども織り交ぜたコミュニケーションの機会を意図的に設定。チームに馴染みやすい環境を整えました。


コロナ禍以前から積極的にテレワークを進めていたチームスピリットでは、この1年で出退勤の時間や中抜けを社員が任意で行うことができる仕組みと風土がより一層強まったといいます。

今後は体制をさらに充実させるため、テレワークマナーの策定と、採用ブログを通じた自社や社員のノウハウ提供の実施を検討されています。

働き方改革プラットフォーム『TeamSpirit』を運営し、テレワークの先進企業として既に多くのメディアで企業のテレワーク導入や、社員に聞いたテレワークのコツなどについて発信しているチームスピリット。

事業環境の変化に柔軟に対応したワークスタイルへの取り組みは、今後も注目を集めそうです。

▶チームスピリット 代表取締役社長 荻島 浩司氏のインタビュー動画はこちら

3.株式会社カケハシ

https://www.kakehashi.life/

株式会社カケハシは、薬局体験アシスタント『Musubi』により薬局から医療体験を変えようとするスタートアップです。同社も2020年4月の緊急事態宣言発令直後より、全社で完全テレワークに移行しています。

勤務時間と場所を各自が選択できる体制を以前から導入

新型コロナウイルス感染症拡大以前からテレワークも選択可能な社内体制を構築していたカケハシ。

既に、パフォーマンスを最大化するための勤務時間と場所を各自が選択できるような勤務形態と勤怠システムや、『Slack(スラック)』などのオンラインコミュニケーションを円滑にするシステムを導入しており、全社でのテレワーク移行は特に障害なくスムーズに実施することができました。

出社は完全承認制

2020年4月~5月の緊急事態宣言発令中は、原則出社を禁止。業務上どうしても出社が必要な場合は、上長に理由を添えて申請し、許可を得てから出社するフローを採用しました。

2021年3月時点においてもテレワークは継続中で、業務に必要な社員のみ出社可能としています。

在宅環境構築のための補助金を継続的に支給

カケハシでは、テレワークでの業務効率向上のため、在宅環境構築のための補助金を一時金及び継続的な手当として支給しています。また、ベビーシッター利用時の割引や、在宅環境構築のためのオフィス家具購入割引も設けました。

社員間でのコミュニケーション機会を設定

社員のモチベーションを高めるために、オンラインでの新入社員ウェルカムランチ制度や社員交流補助金制度を設けました。

感染状況が落ち着いている期間中は、感染対策を厳守しながら敢えてチームで顔を合わせる機会をつくり、社員間のコミュニケーションにも配慮しています。


入社オリエンテーションのオンライン化を実施した以外のテレワークに関する施策は、今後は必要に応じ適宜検討するとしています。

社員からは、テレワークによって「家族との時間が持てるようになった」「食事内容が改善され健康になった」「好きな環境で作業ができるため、集中して取り組める」「移動時間が無くなったことにより睡眠時間や趣味のための時間が増えた」といった肯定的な意見が上がりました。

一方、「移動時間の減少分がそのまま労働時間の増加になっている」「腰痛や肩こりが悪化した」「業務時間とそれ以外の時間の切り分けが難しい」といった声も寄せられており、ヘルスケアやタイムマネジメントを今後の課題に、新しい働き方がブラッシュアップされていきそうです。

▶カケハシ 代表取締役社長 中尾 豊氏のインタビュー動画はこちら

4.株式会社RevComm(レブコム)

AI搭載型クラウドIP電話 『MiiTel(ミーテル)』を開発・提供する株式会社RevCommは、コロナ禍以前よりテレワークを推奨している企業です。

https://www.revcomm.co.jp/

完全テレワーク推奨で地方・海外勤務15%

緊急事態宣言下の完全テレワーク終了後も出社は必要時のみという体制を続けている同社では、移住やリモート前提の採用を行ったことで、本社のある東京以外から働く社員が増え、全社の15%が地方・海外で勤務しています。

社員・部署間のオンライン交流会

一人10万円のリモート手当を支給し、Slack、Google meet、Confluence、AsanaといったITツールのフル活用を強く推奨。

同じ場所に集わないからこそ、オンラインでの社員間の交流には積極的に取り組み、月一回の全社集会や、各部署でのリモート交流会を設定してコミュニケーションの機会を設けるほか、各部署について理解するための説明会「Ask me anything」も開催しています。


RevCommが2021年1月に発表した、オンライン商談をAIが解析・可視化するオンライン商談ツール『MiiTel Live(ミーテルライブ)』では、在宅勤務で希薄化しやすいコミュニケーションの活性化にも配慮されております。

「人が人を想う社会」を創造するべく、リモートでの営業活動の可能性を追求し続けています。

▶RevComm 代表取締役 會田 武史氏のインタビュー記事はこちら

まとめ

緊急事態宣言下では完全テレワークに移行した各社とも、共通するのは「どうすれば生産性を維持・向上できるか」という考えのもと、新施策を積極的に取り入れている点にあると言えます。

・働いた時間と成果を可視化できるシステムの導入
・従業員の負担や孤立を防ぐため、新たな表彰制度や、社員交流の補助金制度を導入
・テレワーク手当を支給し、出社時と同等またはそれ以上のアウトプットができる環境づくりをサポート

など、様々な取り組みの検討をするのはもちろんですが、まずは経営陣及び管理職が「テレワークを導入し、働く場所を問わず生産性を向上させる」という強い意思を持たなければなりません。

そのために、出社は「完全承認制」というルールを取り入れるのも手段の一つでしょう。

テレワークを一時的な制度とせず、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方として採用する各社の取り組みは、今後の「働き方改革」の大きなヒントになるのではないでしょうか。