※本ページ内の情報は2023年10月時点のものです。

もやしは一般家庭や外食店で価格が安く使いやすいと、近年は生産量を伸ばしている人気の食材だ。
天候が不安定な現在でも、工場生産により一年を通して安定供給できる商材としてますます注目を集めている。

1975年に創業した株式会社大生は、もやしを中心とした健康野菜製造ラインのメーカーとして、もやしの栽培段階から加工までの各種自動機の加工までの各種自動機の開発・設計を手がけている。

現在では国内にとどまらず、アジアをはじめ欧米など世界14ヵ国に進出し、栽培技術から生産ラインを供給する、いわば技術の伝道師としても活躍中だ。

そんな同社は2023年9月、社名を変更して西日本のグループ会社と統合し、製造と販売を一体化した創業期の組織体制に戻し、再スタートを切った。

業界の有力カンパニーとして期待の大きい同社で指揮を執る、代表取締役社長の鈴木徳身氏に詳しく話を聞いた。

3本の矢を集めるようにグループを結集して新体制に

――もやしの生産ライン製造で高い実績を積まれていますが、これまでの会社の歴史について教えてください。

鈴木徳身:
主にもやし生産ライン用の機械メーカーとして設立して48年になりますが、その後、営業部門とアフターサービスの部門が独立することになりました。
より地域に密着した営業展開を行うことで、お客様との関係を深くしようと考えたわけです。

東と西のエリアに分かれて、東海から北海道までが“大生エンジニアリング株式会社”、近畿から沖縄までが“西日本大生株式会社”となり、設計製造を行う“株式会社大生機械”の3社の分業体制で展開してきました。

それから長らく分業体制でやってきたわけですが、業界の姿もどんどん変わっていきましたね。
技術的により高度になり、生産者様はさらに次のステップに進んでいかなければいけない。それに伴って、もやしメーカーの寡占化や集約化が起きたりもしました。世の中全体が変わってきたということもあって、私たち機械メーカーもこのままでは立ち行かない、変化が必要という流れになってきました。

「もう一度、製販一体で技術開発を目指そう」と決断した5年前、東日本の営業/サービスを担当していた大生エンジニアリングを、大生機械の営業部門として統合しました。

この統合を足がかりに、今年9月に西日本大生が加わり、“株式会社大生”として原点に回帰。グループ一丸で次の時代に向けて再出発することになったのです。

原料の分析から技術を提供できる強み

――もやし生産ライン専門の製造機メーカーとして、強みはどのあたりにあるとお考えですか?

鈴木徳身:
独自の技術を構築するために研究室を設けていますので、上流の原料の分析から栽培、加工に至るまで一貫した技術提供をさせていただけることが強みだと思います。

例えば、栽培システムそのものの構築も当社が手がけています。また、原料である種子の質も非常に重要になってくるので研究室を設けて、原料の資質がどうであるかといった評価を行い、分からないところがあれば探っていく作業を続けています。

また製品化の段階では、日配食品であるがゆえに短い時間の中で大量に生産する技術が必要になってきます。
それだけでなく、もやしはご存知のとおり完全に工場生産ですから、何よりも安定化させるということが命題中の命題でもあります。

これらのことを長年のノウハウで間違いなく実現させ、確立したものとして顧客に技術を提供できるのが弊社の最大の強みといえます。

モノづくりで持続可能な社会に貢献する

――メーカーとして技術面でのこだわりを感じますが、今後の方針を聞かせてください。

鈴木徳身:
もやしは日配食品の宿命といいますか、製造した新鮮なものをできるだけ早く供給しなければなりません。工場で大量につくって遠方に届けるということもあり、そうすると輸送コストはかかる、フレッシュさは落ちるという状況にもなります。

生産地が消費地に近いほど食べ物の良さを消費者が享受できますから、これを意識した生産体制が理想的といえます。またこれは同時に、地球環境の保護に寄り添った考え方でもあります。

新製品の開発にしてもそうです。これまでに培ったノウハウと技術で、未来のために資源の使用を抑えた環境にやさしい技術と高度健康食材の開発を進めていきたいと思います。

――人材採用に関して、求める人物像を教えてください。

鈴木徳身:
私どもは技術立社として活動していますので、「技術で世の中に貢献していく」という気概のある方にぜひ来てほしいですね。
また開発業務にはチームワークが欠かせませんから、協調性のある方が望ましいです。

厳密な教育カリキュラムは設けていませんが、入社後には先輩社員からの丁寧な指導を行っています。そばに先生がいるような環境でコツコツ技術を習得できるのは、弊社ならではと思います。

編集後記

鈴木社長の穏やかな口調の中に、技術屋としてのこだわりが随所にうかがえる談話だった。
一方で、もやしは生産量を伸ばしても単価が落ちるという側面もある。同氏のコメントにはもやし/豆腐業界全体の発展に配慮する姿勢も感じられた。

時代に合わせて組織体制を改変し、今秋にリニューアルした株式会社大生の奮闘に期待したい。

鈴木徳身(すずき・なるみ)/1961年東京都出身。1984年拓殖大学商学部卒業。1988年株式会社大生機械入社。栽培プラント部部長を経て、2015年4月に代表取締役に就任。