※本ページ内の情報は2023年11月時点のものです。

タカギ産業株式会社は1973年に創業し、2023年に創業50年を迎えた業務用食品容器メーカーだ。

会社や工場などに届けられる仕出し弁当の容器を提供するトップメーカーで、取引先は全国に約5000社。給食業界でタカギ産業の「ミリオン印」のお弁当箱を知らない会社は無いだろう。

さらに、夕食宅配や中学校給食のオリジナル容器にも事業フィールドを拡大するなど、これまで順調に成長してきた。

過去数年に及んだコロナ禍では自宅で食事を取る傾向が強まり、テイクアウトや宅配サービスが台頭するなど、食のライフスタイルに変化が見られるが、同社はこうした時流も味方につけている。

好調の秘密は、同社をけん引する髙木雅之社長のリーダーシップにあるようだ。髙木社長にご自身の歩みや経営哲学について聞いた。

原点は18歳で参加した研修

ーー社長は大学時代にサークルを立ち上げるなど、若いときからリーダーシップを発揮なさっていたようですが、何かきっかけがあったのでしょうか。

髙木雅之:
大学に入学する前、18歳のときに弊社の現会長である父親に経営者向けの能力開発研修に無理やり出席させられました。ただ、いざ参加してみるとその内容が濃く、期せずして心を奪われたのです。初回は親が費用を出してくれたのですが、2回目、3回目からは自分で費用を負担して参加しました。

その研修を受けて、人生で初めて「自分で何か作りたい」という思いを抱いたんです。もうこの辺りから人生が変わりましたよね。

それで大学入学後、さっそくスポーツサークルを立ち上げて、人を50人集めて活動しました。ある意味では、あの頃から今でもずっと“サークル活動”をやっているようなものですよ。

そして大学卒業後は弊社に入社するのではなく、サービス業をプロデュースする会社へ入社。3年程で最優秀店舗賞を取りました。それで社内ではちょっと有名にもなりまして、まあまあ自信も付きました。

高い営業力の秘訣はリフレーミング

ーー貴社に入社された後、東京支店を立ち上げるなど営業力を発揮され、現在は社長として営業部を指導されていると思いますが、何か極意のようなものはございますか。

髙木雅之:
コーチング用語ではリフレーミングといいますけど、物事の捉え方のフレームを変えることが大事ですよね。

たとえば、コロナ禍でテイクアウト需要が急増して、それをきっかけに弊社もある大口のお客様を開拓でき、月の売上が2000万円増えました。それが2、3年で他社に負けて無くなり、担当者がガッカリしていたのですね。

そこで私は、「いやいや、すごくラッキーだった」と。「これだけの売上を得られたのだから、お前はよくやった」と伝えました。

失ったものに焦点を当てて悲観するのではなく、もともと無かったものを得たのだから良しとすることもできますよね。

また、 十何年もの付き合いがあったお客様との取引が無くなるということがありました。それも正月、挨拶に行く前日に、担当社員から突然聞かされたのです。

でも、私は「そうか。もう感謝しかないよな」と先方の意向を受け止めて、挨拶当日は「十数年買っていただいた感謝しかありません、本当にありがとうございました」とそれだけを伝えて帰りました。そうしたら、 1年で仕事が戻ってきました。

普通は悲壮感を出して「いや、そこはなんとか」と闘う姿勢で臨むものかもしれません。それを「闘うのではなく、感謝を述べにいこう」と捉え直したことが良い結果につながったのだと思います。

不満ベースではなく満足ベースの取り組みを

ーー貴社では活躍した社員を表彰したり、実際に換金できる社内通貨制度をつくられたり、働きがいのある社風づくりに取り組まれていると伺っています。どんな思いがあって行われているのでしょうか。

髙木雅之:
正直なところ、不満を解消するために工夫をしているのではなく、満足しているからこそ行っていることです。「弊社の社員は最高、お客さまも最高、私は最高だ、幸せだ」と常に言っています。

「渇き」に軸を置いていたら、それを感じるような状況を引き寄せて実際に渇いてしまうものです。だから社員にも「自分なんて」という言葉や、否定的な言葉ではなく、必ず肯定的な言葉を使おうと伝えています。

今日の朝礼でもそんな話をしました。やっぱり朝礼で、毎朝5分10分と話をすると効いてくるようですね。

もちろん言葉で指導するだけではありません。たとえば、営業が目標を達成したらサポートしている事務員にも金一封を授与します。すると、お互いに協力するようになりますよね。

簡単なことですが、皆が頑張りやすくなって全体が良くなる。そういう細やかなアイディアを常に見つけて、仕事の随所に活かしています。いつも現在が最高の状態で、不満は持たないのです。

編集後記

18歳という若さで企業人向けの研修に参加し、主体的な学びの大切さを知った髙木社長。

「社員にも結果を出せと圧力をかけるのではなくて、主体性を重んじ、応援する・協力するという姿勢を大切にしたい」と語る際の優しいまなざしが印象的だった。

2023年で創業50年を迎えた同社は「誇りと使命を持ち沢山の喜びを咲顔の器で包みたい」という企業理念の通り、半世紀もの間、日本の食生活・食文化を支えてきた。

どんな状況でも美点を見つけてチャンスをつくる髙木社長率いる同社なら、これからも食を巡る時代の変化を乗り越えて進み続けるだろう。今後の挑戦に目が離せない。

髙木雅之 (たかぎ・まさゆき)/高校卒業後、「可能思考研修」を受講。大学1年生でスポーツサークルを立ち上げ、50人を集める。大学卒業後、サービス業のプロデュース会社に4年勤める。その後タカギ産業に入社。東京で5年間、営業社員として新規開拓を担い、東京支店を立ち上げる。その後、後任に東京を任せて本社大阪に帰省。翌2009年、父である先代が会長に退き代表取締役に就任。現在も多くの研修に参加し、学びに余念がない。