※本ページ内の情報は2023年11月時点のものです。

団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる2025年以降は、、医療・介護人材の不足や社会保障費の増大が日本の大きな懸念材料となっている。

そんな中、医療機器用ソフトを開発するためのツールと医療情報システムを提供し、現場を支えているのが、株式会社アストロステージだ。

同社は各部門の検査システムや、過去の検査データ、診察履歴を一括で閲覧できる診療統合システムなどを開発・提供している。

患者の診療データを共有できる自社の製品を通じて、地域全体を医療ネットワークでつなげ、「地域完結型医療」の実現を目指す平本社長の思いを聞いた。

創業時の苦労とアストロステージの強みについて

ーー創業するにあたってどのようなところが大変だったのでしょうか。

平本淳一:
はじめは自宅で開業して、一人で運営していたので、なかなか周囲から一企業として受け入れてもらえず、信用を得るまで1年近くかかりましたね。

ただ、弊社はソフトウェアを扱っているので、それほど多くの資金は必要ではありませんでしたし、事業自体は順調なスタートを切れたと思います。

私が前職で培った医療機器メーカーさんとのコネクションを活かせたおかげで実質的な赤字というのは今までなくて、成長スピードはややゆっくりですが、右肩上がりに業績を伸ばせました。

医療業界はリーマンショックなどの社会的な変動に影響を受けにくいことも、業績が継続的に安定している大きな要因と言えます。

ーー他社との差別化としてどのような部分が挙げられるでしょうか。

平本淳一:
システムの作り方の発想がそもそも違うところですね。

弊社では全体を包括的に見ながらシステムを構築しているため、どの科の医師や医療従事者でも操作しやすいのが特徴です。

たとえば血液画像システムを作るにしても、血液の専門家の方の意見だけを反映してシステムを組むと、他の分野の方にとっては使いにくいものになってしまいます。

また、他社の場合はそれぞれの分野によって製品が異なるので、ユーザは20から30の製品を使い分けなければならないのが実情です。

弊社は、システムを開発するにあたり、さまざまな分野の専門家にヒアリングを行うだけでなく、それを診療全体でどうあるべきか?診療全体を考慮して製品化を行っています。

それが弊社の最大の特徴である診療情報統合システムであり、診療情報統合システムでは過去の検査データや手術歴、診察履歴を患者ごとに一括で閲覧でき、さらに部門を含めたチームで診療に利用できるシステムに仕上がっています。

従来の電子カルテでは科ごとに患者さんの情報を部門システムで記録しているため、他の診療科ではその方がこれまでどのような検査を受けてきたかということや、検査結果の値の推移などをその場では確認することが困難でした。

しかし、弊社のシステムは患者さんの診療データをすべて管理できるので、ひとつの画面でこれまでの診療・検査データや、CT・MR画像などを閲覧でき、治療に必要なデータをすぐに取得できます。

なお、このシステムは診察をする側だけでなく、患者さんにとっても自分がどんな治療を受けてきたのか、病状がどのように変化しているのかを把握しやすくなるといったメリットもあります。

ーーこうした包括的なシステムを作ろうと思われたきっかけは何だったのですか。

平本淳一:
医療システムを開発する際に、複数の医師に普段感じている困りごとを聞いて回ったときに、科ごとに分離されている情報をトータルで見られるシステムがあると便利ではないかと思ったのがきっかけです。

地域医療ネットワークの構築による医師不足の解消

ーー平本社長が実現したい未来についてお聞かせください。

平本淳一:
私がかねてから実現したいと思っているのが「地域医療ネットワーク」と「生涯カルテ」の普及です。

今の日本では患者さんが総合病院に集中しており、1人の医師が対応しなければならない患者数が増えることで、医師不足の状態に陥っています。

そこで、弊社の地域連携システムが、治療やケアを病院単体で終わらせる「施設完結型医療」から、地域全体で1人の患者さんをみる「地域完結型医療」への移行に貢献できればと思っています。

地域完結型医療とは、総合病院や大学病院を主体にしたハブ病院を作り、診療所や医院、検査センター、リハビリセンター、訪問看護ステーションなどとネットワークで結ぶことで、どこでも同じ治療を受けられるようにし、地域全体で1人の患者さんを診ていく仕組みのことです。

地域完結型医療が定着すれば、患者さんが総合病院からそれぞれの分野の施設へと分散し、医師1人が対応する患者の数を軽減できる、ということです。

また、地域完結型医療を広めるため、生まれた頃からの診療履歴をすべて把握できる生涯カルテも普及させたいと思っています。

生涯カルテがあれば、これまで病院ごとに管理していたデータをすべての医療施設で共有でき、病院と在宅看護ステーションとの連携などにも役立つでしょう。

すでに岩手県では26の県立病院が弊社の診療情報統合システムを活用しており、患者さんの情報を共有できる体制が整っています。

このように少しずつ私どもの目指す目標に近付いているところなので、これからも草の根活動を続けていきたいと思っています。

社員教育と今後の営業戦略について

ーー貴社ではシステムエンジニアの採用が積極的に行われていますね。

平本淳一:
毎年採用を行っていて、昨年も20名ほど入社しました。

特にここ数年は中途採用よりも新卒採用にシフトしていて、若手の育成に力を入れています。

OJTを中心に各マネージャーが教育を行っているのですが、今の体制はマネージャーに依存しているところがあるので、今後は教育カリキュラムを体系化し、網羅的に学べるようにしていこうと考えています。

ーー営業職についてはいかがですか。

平本淳一:
弊社のシステムを販売する際には、それぞれの医師がどんな課題を抱えているのかを把握し、それらを解決できる製品を選び出す必要があります。プロダクトの販売というよりソリューションの提供が求められます。

そのため何年か経験を積まないと営業として一人立ちできないので、人員をなかなか増やせていないのが今の課題です。

ーー今後はどのあたりに販路を広げていこうと考えてらっしゃるのですか。

平本淳一:
これまでは総合病院を中心に販売してきたので、今後は医療機関全体に販路を広げていきたいと思っています。

来年には診療所やクリニック向けの製品をリリースする予定なので、地域全体に弊社のシステムを導入していただけるよう尽力して参ります。

ーー今後の貴社の目標についてお教えください。

平本淳一:
今後も医療分野を中心に事業を展開していく方針ですが、2年ほど前から始めた不動産事業がようやく軌道に乗ってきたので、こちらも力を入れていこうと考えています。

新製品もリリースするので、これらが伸びてくれば5年以内に年商50億円を達成できると予測しています。

さらに長期目標として年商100億円を目指しているので、IPOも視野に入れながらさらに業績を伸ばしていきたいですね。

編集後記

たった1人で事業を開始し、創業当初は周囲からの信用を得られなかったと話す平本社長。それでもあきらめずに少しずつ業績を伸ばしていき、現在では社員150名以上、全国に2つの支社と5つの支店(2023年10月時点)を構える企業にまで成長させた。患者さんの診療情報を共有するシステムを活用して、地域全体を医療ネットワークでつなぐ地域完結型医療の実現を目指す、株式会社アストロステージの活躍に注目だ。

平本淳一(ひらもと・じゅんいち)/東京都出身。幼少時に千葉県に移り、同県で育つ。大学の経済学部を卒業し、医療事務代行の最大手である株式会社ニチイ学館に就職。クボタグループの子会社への転職を経てソフトウェア開発会社に勤め、2002年に有限会社アストロステージを設立(2004年に株式会社アストロステージとして組織変更)。札幌と大阪に支社を置き、岩手、仙台、愛媛、福岡、鹿児島に支店がある。