※本ページ内の情報は2025年4月時点のものです。

機械、電気・電子、ソフトウェアの3分野で技術支援や研究開発を行うイー・バレイ株式会社。同社は高い技術力を活かして基盤の設計や部品の実装のほか、質の高い技術者の派遣事業も行うことで、ものづくり業界に貢献している。

そんな同社の代表取締役、池田徹弘氏は「イー・バレイというブランドを確立する」という目標を掲げ、次の一歩を踏み出している。今回、同氏が起業した理由や人材への取り組み、今後の展望などを聞いた。

日本の技術を底上げする選択肢として、技術支援事業をスタート

ーー起業の経緯をお聞かせてください。

池田徹弘:
1人の技術者との出会いが、弊社を起業したきっかけになりました。出会った当初、彼は派遣の技術者でしたが、現在は弊社の取締役を務めています。

彼は技術者が派遣で働くことに自信と誇りを持っていました。なぜ誇りを持てるのかを聞いたら「技術派遣は景気や経済と同じ。お金が回るスピードが速いほど景気が回復するのと同様に、技術が日本国内を高速に流通できれば、日本全体の技術力を底上げすることができる」と答えたのです。この言葉が、私の考えに好影響を与えました。

終身雇用の名残などもあり、日本の技術は海外に負けています。彼の言葉を聞き、この現状を打破するために日本で技術を流通させる仕組みとして技術支援事業を始めるべきだと思い、イー・バレイを創業したのです。

仕事の流れを学べる独自の成果体験型学習キット「e-NeIRO」を研修に導入

ーー貴社では派遣と正社員がどのくらいの割合で働いていますか。

池田徹弘:
弊社の社員は、社内で働くケースもありますし、客先で働くケースもあります。そのため、捉え方によっては「全社員が派遣社員」といえるかもしれません。実際に弊社の取締役も客先で開発を行うことがあります。

取締役が最初に客先へ行って、お客様に開発テーマを提案します。それが受け入れられたら取締役が仕事をある程度整理し、ほかの社員にバトンタッチ後、開発を進めていくという流れで仕事が進むこともあります。

ーー社員教育として、どのような取り組みをしていますか。

池田徹弘:
たとえば客先でソフト開発をしようと思ったとき、C言語などいろいろな言語を使うことになります。技術者たちはその言語を一生懸命覚えてから、仕事に取り組むのが一般的です。ただ、こういった言語を覚えることよりも、仕事の流れ、つまり開発プロセスを学ぶことの方が大切です。現場に行けば、言語は自ずと覚えるわけですから。

そこで弊社では、電子オルガンをテーマにした成果体験型学習キット「e-NeIRO(いいねいろ)」を研修に活用しています。これは組込ソフトウェア技術者の初期学習向けに開発したもので、技術の基礎知識だけでなく、仕事の進め方についても学ぶことが可能です。

見た目はオルガンのようですが、ピアノやゲームなど最終的には何にでも完成させることができます。技術者は、何をいつまでにどのようにつくるか自分でテーマを決めて、DR(設計開発活動)を行い、ほかの社員からフィードバックをもらいながら進めていくのです。

1か月ほどかけてこの研修を受けてもらい、最後に自分がつくったものを披露します。これにより、実際の仕事と同じ流れを経験できるという仕組みです。この「e-NeIRO」は弊社の社内研修用につくりましたが、他の会社からも使いたいとの要望があり、現在は商材として販売しています。

他社が真似したくなる製品を開発し、「イー・バレイブランド」を確立していく

ーー貴社のターニングポイントについてお聞かせください。

池田徹弘:
自社製品に取り組むようになったことが1つのターニングポイントです。創業当初はいろいろなメーカーへの技術支援を主な業務にしていましたが、「イー・バレイというブランドを確立する」というビジョンを掲げ、自社製品を出すことを目指すようになりました。

そこで、他社が真似したくなるような製品を出そうという思いで、自動枝打ちロボット「eddy(エディ)」を活用した林業ロボットを開発しました。これは、木登りが必要で危険な枝打ちをロボットが代わりに作業するというものです。

ーー貴社ではどのような人材を求めていますか。

池田徹弘:
やる気と素質がある方ですね。学歴や経験は一切関係なく、自分で考えて行動できる地頭の良い人に来てもらいたいです。

ーー最後に、今後の展望をお願いします。

池田徹弘:
今後の展望は、会社としてイー・バレイブランドをつくること、イー・バレイという会社の魅力を知ってもらうことです。そのために他社が真似したくなるような製品を世に送り出し、すべてのお客様から「イー・バレイは他社と違う」と言ってもらえるように邁進いたします。

編集後記

人材派遣という枠から抜け出し、新たに自社のブランドを確立していこうとしているイー・バレイ。今後の展望について力強く語る池田社長の姿からは、新たな一歩を踏み出すことへの覚悟と自信が感じられた。自社製品の開発に力を入れ始めた同社が、これから一体どのようなものを世に届けてくれるのか。次の製品の発表が楽しみだ。

池田徹弘/1965年愛知県生まれ、愛知教育大学卒。株式会社オリンピックスポーツに入社し、4年間人事経験を経てテクノブレーン株式会社に入社。2000年にイー・バレイ株式会社を設立。同社代表取締役に就任。