※本ページ内の情報は2023年12月時点のものです。

物流・搬送業界では、人手不足が深刻化しており、業務効率化のミッションが急務となっている。そのために自動搬送ロボットを開発し、労働不足解消に向けて動く企業が増えてきた。

そんな中、果敢にもコロナ禍の中で創業し、物流問題の解決に取り組む新たなスタートアップ企業として注目されているのが、株式会社LexxPlussだ。

今回は、代表取締役社長の阿蘓将也氏から、起業に至ったきっかけや製品の強み、今後の展望などをうかがった。

お客様の課題解決に社会的意義を見出し、起業を決意

ーー起業のきっかけを教えてください。

阿蘓将也:
前職はタクシーの自動運転を可能にするシステムの開発に携わっていました。とても将来性があると感じていたのですが、「社会的なインパクトをいつ起こせるのか」といった点で、次第に違和感を抱くようになりました。

そんな中で、物流センターなどの生産設備の実態を見てみると、まだ自動化されていない領域が多く、一方で、オンラインショップの物販需要は伸びているという点に大きな歪みを感じました。

自動運転といった技術は「まず当該産業から導入していかなければ、効率化を進めていくことはできない」と感じ、そこにビジネスとしての社会的な意義もあると思ったのです。

同時に、物流の「24年問題」もあり、物を運ぶという当たり前のことができなくなるという大きな課題にも直面していると感じました。

もともとエンジニアとしてあった自動運転という技術への興味が、課題解決することへの興味に変わっていき、それが実現できる会社をつくるために起業を決意しました。

ーー海外経験も長く積んでこられたと思いますが、今の仕事に活かせていることはありますか?

阿蘓将也:
「グローバルで戦えるビジネスとは何か」を前提条件として物事を考えるようになれたことは、弊社のビジネスを成長させた大きな要素だったと感じています。

弊社はアメリカにも法人があり、日本のメンバーがアメリカへ行き、現地のプロジェクトに取り組むといったことも行っているので、グローバル展開を視野に入れた動きを広げることができたと思っています。

ーー創業当初の印象に残っているエピソードがあれば教えてください。

阿蘓将也:
創業当初は会社としての強みがまだ明確でなかったため、興味を持たれないのが当たり前の状態でした。そこで、最初は前職時代にお付き合いのあった物流会社にヒアリングを行い、次につなげていったのです。

また、2020年の創業当時はコロナ禍でしたが、幸いにも物流業界はあまり影響されることがなく、むしろビジネスをどう維持していくのかといった点が注目されていました。

さらには当時、起業のための支援施設が作られたり、スタートアップ企業向けのプログラムが多く開催されたりと、スタートアップに対する周りのアクションが活発だったので、それらを利用する中で、弊社がお役に立てるお客様を設定していくことができました。

現場に寄り添ったユニークな自動搬送ロボットを提供

ーー貴社の製品の強みを教えてください。

阿蘓将也:
自動搬送ロボットは、電車のように決まったラインを動くものと、自動運転のように自由に動き回るものと主に2つのパターンがあるのですが、弊社の製品にはそのどちらにも対応できる機能が備わっています。

どちらの要望にも応えられるユニークなところは、他社と差別化が図れている点かと思っています。

ーーお客様に製品の設計図を公開されているとお聞きしましたが、その理由や背景を教えてください。

阿蘓将也:
弊社の製品を導入できたものの、使い方がわからなくなったり、故障でメンテナンスが必要になったりといった場面で、現場が商品の中身を知らずに運用するといった状況は良くないと思っています。

そのようなトラブルが起きたときに、現場ですぐに解決できるような環境を作るべく、製品の設計図を公開することに決めました。

プロダクト志向ではなく、課題解決志向の方を募集

ーー貴社が求める人物像について教えてください。

阿蘓将也:
主に2つあります。

1つ目は、弊社の行動規範である「Start from Customer’s Challenges(スタートフロムカスタマーズチャレンジ)」を体現していただける方です。

弊社は「お客様の課題は何か」「その課題をどう解決していくのか」といった考え方をベースに、仕事に取り組んでいます。

ロボット製造は、「あくまでもお客様の課題解決の手段であって目的ではない」という価値観を大切にしているので、まずはここに共感していただける方と一緒に働きたいと思っています。

2つ目は、インターナショナルに活躍したいという意欲を持っている方です。

弊社は日本だけでなく、海外展開を視野に入れてビジネスを行っているので、「インターナショナルな環境で会社に貢献したい」「海外で活躍できる企業づくりに携わりたい」といった考えを持った方に入社していただけると嬉しいですね。

ーー採用難に陥っている企業が多いですが、貴社の現在の採用状況はいかがでしょうか?

阿蘓将也:
ありがたいことに、結構な数の応募をいただいている状態です。

なぜ上手くいっているのか振り返ってみると、採用活動・人材獲得のために時間をしっかり使ってきたからだと思っています。

多くのエージェントに協力していただいているのですが、まずは人材を集めていただくエージェントの皆様に、弊社の魅力を知っていただけるようアプローチしています。

また、私自身も初回の面談にはほとんど出るようにしており、そこで応募者の方にも弊社の魅力を伝え、弊社を好きになっていただいてから本選考に進んでいただくよう意識しています。

お互いのミスマッチも避けられ、人材の取りこぼしも避けられるしっかりとした採用プロセスを運用できていると感じています。

ーー今後の人員計画を教えてください。

阿蘓将也:
2035年までに、弊社を1兆円以上の価値のある会社にしたいと考えており、そのためには従業員が1000人を超える規模にならないと、グローバルで活躍できず、目標達成は難しいと思っております。

弊社は現在50名ほどの組織ですが、まずはあと2、3年ほどで50名以上を採用したいと考えています。

日本だけでなく海外でも活躍できる強い会社にしていきたい

ーー技術開発の部分で、現在注力されていることは何でしょうか?

阿蘓将也:
アメリカの電気自動車の生産にも対応できる設備を開発しています。また、今まで日本では主に物流業界からの需要が高かったのですが、現在は製造業や自動車業界向けの製品も開発しています。

アメリカと日本で横断的に売り出せるように、今後も注力していきたいですね。

ーー海外展開のために今後注力していくことがあれば教えてください。

阿蘓将也:
海外への販路拡大に特に力を入れており、そのために主に2つのことに取り組んでいます。

1つ目は、アメリカの現地メンバーでチームをつくることです。

今は日本国内のメンバーとアメリカのメンバーで協力してビジネスを進めていますが、ゆくゆくは現地のメンバーのみで、ビジネスを進められるように体制を整えています。

2つ目は、アメリカでのパートナー開拓です。

アメリカで弊社の製品を導入できても、その後のメンテナンスやサポートに日本のメンバーは対応できません。そこで、現地でメンテナンスを担うパートナーや、弊社の手が届かない企業へ営業してくれるパートナーなどを開拓し、一緒に成長できる体制を整えたいと思っています。

新しい価値観を身につけるための経験をたくさん積んでほしい

ーー最後に読者の方へメッセージをお願いします。

阿蘓将也:
新しい価値観を得られる経験を積極的にしてほしいと思っています。日本において日本人はマジョリティですが、海外に行くとマイノリティになります。それが原因で辛いことや苦労することも多いのですが、逆に言えば新しい価値観を身につけるチャンスでもあるのです。

日本の中で得られる新しい価値観もありますが、個人的には日本の外に出て初めて知る価値観はそれよりもはるかに多いと感じているので、そういった経験が積めるように意識的に行動してほしいと思います。

編集後記

日本国内にとどまらず、常に海外展開を視野に入れた施策を行っている阿蘓社長。世界中のお客様の課題解決ができる組織にするべく、採用活動にも積極的に取り組み、規模を大きくしている。挑戦と成長を続ける株式会社LexxPlussから、今後も目が離せない。

阿蘓将也(あそ・まさや)/1990年生まれ、名古屋大学機械航空工学科で装着型ロボットの研究、宇宙開発チームNAFTの設立。その後、イギリスのマンチェスター大学の大学院に進学し、機械工学デザインを学び最高位で卒業。2015年10月に世界最大級の自動車部品メーカー・ボッシュ株式会社にJMP(Junior Managers Program)として入社し、ドイツ赴任を含め、自動運転開発に携わる。2020年3月に株式会社LexxPlussを設立。