※本ページ内の情報は2024年2月時点のものです。

住宅火災において、特に65歳以上の高齢者の逃げ遅れによる死亡事故が多く発生していることから、政府は、2011年6月1日からすべての住宅に対して火災警報器の設置を義務づけた。

今まで世の中になかった新しい火災警報器を開発し、火災から一人でも多くの命を救いたいという想いで奮闘しているのが、ガス警報器の大手メーカーである新コスモス電機株式会社だ。

今回は、代表取締役社長である髙橋良典氏から、50年以上も続くガス警報器開発の裏側や、同社が掲げる思いについて話をうかがった。

設立から50年以上続くガス警報器のパイオニア企業の内情

ーー会社を経営する中で意識していることはありますか。

髙橋良典:
社長に就任してからは、当然自分で手を動かして商品をつくることはなくなり、製品をつくる立場の人や、企画を立ち上げる人など、それぞれに仕事を任せる立場となりました。

各々の仕事を迅速にこなしてもらうためにも、社員には、今会社がどこへ向かって進んでいるのか、何に力を入れているのかがはっきりわかる方針を示す必要があります。

そのためにも日頃からコミュニケーションとぶれない会話を第一に心がけています。

ーー昔から社長になりたいという思いはありましたか。

髙橋良典:
私は弊社へ入社後、率先して新しいことをしてきました。

その時々は、それをやるのが自分の会社での役割だと思ってやってきましたが、そのうちにもっとこうしたらいいのにという想いがでてきました。ただ、それをやみくもに押し通そうとしても反対されてしまうだけ。

ですから私は、自分の方針を実行するために相応の責任と権限を目指しました。
その結果として、社長になったというのが正しいかと思います。

家庭用ガス警報器業界をけん引する

ーー事業展開において今後の目標を教えてください。

髙橋良典:
海外展開を第一目標に掲げています。

私たちの仕事の根底には、世界中のガス事故をなくしたいという思いがあります。達成のためには、弊社の技術やノウハウを世界に広めることが必要不可欠です。

世界にはまだまだガス警報器を必要としている国やエリアがあると考えています。たとえば、イギリスには、150年も前からずっと同じガス管を使っている建物が多くありますから、どうしてもガス漏れなどに関する事故が増えてしまいます。

東南アジアも視野に入れています。東南アジア諸国では、いまだに台所で使う燃料に炭や薪(まき)が使われており、徐々にLPガスが普及している状況です。使い方も慣れておらず、もちろん安全装置等も備わっていないので、事故につながる危険性が増えます。

そのような場所にガス警報器を設置することで、救える命を救いたいと考えています。

「火災からも人々を守りたい」という強い思いを込めて

ーーこれからも多くの命を救うためにどのような取り組みをされていますか。

髙橋良典:
私たちが掲げる「世界中のガス事故をなくす」という目標は、新人研修時から社員全員と共有しています。社員も強く共感してくれていますから、会社の方針について尋ねると全員から同じ言葉が返ってくると思いますよ。

しかし、「ガス事故」よりもっと身近な事故に毎年1,000人以上(※)の命を奪っている「火災」があります。私たちは今、当社のガス検知技術を用いて火災による死者を減らしたいと考えています。
(※)建物火災

火災から命を救うためには、まず火災を早期発見することが重要です。消防庁によると、建物の火災の死因の約40%は一酸化炭素中毒によるもの。私達はその40%を救うために、一酸化炭素センサーを搭載した「プラシオ」という新しい火災警報器を開発しました。

プラシオは一酸化炭素を検知すると、煙センサーの感度を通常の約2倍に引き上げる仕組みとなっており、火災をより早く検知できるようになりました。この仕組みは、検定の特例基準として総務大臣に認められています。

プラシオは、ネットやホームセンターで気軽に購入できるので、是非、大切な両親やお年寄りの方々にプレゼントをしてください。身近な方々を守るためにも積極的にそういった商品を購入し、「防げるリスク」に備えていただきたいと思っています。

ーーお仕事をする中で特に力を入れていることは何でしょうか。

髙橋良典:
私が特に力を入れるべきだと考えるのは人材育成です。専門の知識やスキルの習得はもちろんですが、まずは人として恥ずかしくない社員、社会人になってほしいと思っています。挨拶をする、嘘をつかない、借りたものは返す、靴を揃える、子供の時に親から言われたような当たり前のことが当たり前にできることが人として恥ずかしくない生き方だと思っています。

持論ですが、苦手と得意は裏腹だと思っています。例えば、細かい性格で人から煙たがられるような人が、仕事はとても正確にこなすというように。そういった時、人はどうしても悪い方に目がいってしまうもので、優れた人材の潜在能力は隠れてしまいがちだと感じるのです。

私は、そんな誰にでも必ずあるキラリと光るよい所を上司が、同僚が、見つけて、お互いに伸ばしていけるような会社を目指しています。それは、結果として会社の発展にもつながるのではないでしょうか。

編集後記

髙橋社長が抱く熱い思いを形にした新商品、プラシオ。火災事故による死亡を減らすことを目的に開発されたプラシオは、「命を救うためのギフト」であると強く感じた。今後も日本のみならず、世界全体を見通してガス事故・火災事故を減らすために取り組みを続ける髙橋社長。

新人研修から徹底して企業理念を教育しているほど、その思いは熱い。様々な事故を減らすために奮闘する新コスモス電機株式会社の今後にも注目したい。

髙橋良典(たかはし・よしのり)/1953年岡山県生まれ。岡山理科大学卒。1977年新コスモス電機株式会社に入社し、取締役上席執行役員技術開発本部長や国内営業本部長を歴任後、2017年に代表取締役社長に就任。