※本ページ内の情報は2023年12月時点のものです。

電設資材・制御機器と情報通信機器の専門商社として、さまざまな商品を販売してきたテルヤ電機株式会社。

現在、電気機器の販売に加え、顧客の課題解決を提案するソリューションも構築しており、新たな柱としての成長を目指している。

社内の教育制度や評価制度を見直すなどして職場環境を整備し、社員が長く働けるような環境を作り上げているほか、企業文化として「仕事も遊びも一生懸命」という精神のもと、メリハリをつけた働き方を推進して社員のモチベーション向上に努めている。

2024年に創業100年の節目を迎えるにあたり、江川和宏氏から事業を継ごうと思った理由に加え、新規事業や社員育成など同社のさらなる飛躍への取り組みをうかがった。

祖父、父と続く家業の3代目

ーー3代目の社長になりましたが、もともと会社を継ごうと考えていたのでしょうか。

江川和宏:
祖父が創業して、父が2代目です。私は一人っ子ですので、当たり前のように事業を継ぐのだと思っていました。当時は会社の隣に自宅があり、トラックが入ってきて荷物を積んだり下ろしたり、さまざまな人が働いている風景を見て会社に対する親近感のようなものはありました。ですので、それ以外の仕事をしようとは考えませんでした。

ーー入社してプレッシャーを感じたり、大変だったことはありますか?

江川和宏:
社員の方には温かく迎えていただき、特別何か苦戦したということはありませんでした。社長の息子として入社して、「将来社長になるのだろうな」とか、「社長としてふさわしいのか」などと見守られていました。

社長だった父には、社員からの評価がなければ私を社長にしない選択肢もあったと思います。私も「頑張ろう」と意気込み、結果的に社長になることができたのは、社員からの一定の評価と信頼を得たからだと感じています。

創業100年企業を支える主力事業

ーー貴社の主力事業について教えてください。

江川和宏:
私たちは電気製品の商社として事業を展開しています。メーカーが作った商品を仕入れて、お客様に販売しています。電気とひと言で言っても非常に幅が広いです。たとえば、身近なところで照明器具などを販売しています。

他にも、エアコンや照明を入り切りするスイッチや、天井裏には電気を送るための電線がたくさんあります。このような電気設備に関する資材、電設資材の販売が中心事業の1つです。

加えて、工場の生産ラインなどで使われている電気制御に関する制御機器の販売もしています。電設資材と制御機器の事業は地域密着で、関東地区で事業をしています。

ーー近年取り組まれているソリューション営業について教えてください。

江川和宏:
これまでは電設資材と制御機器の2本柱で事業を展開してきました。

近年は、新たにお客様の課題を解決する「ソリューション」事業という柱を構築しています。私たちはいろいろなメーカーの商品を扱っています。その商品を組み合わせることで、お客様の仕事が円滑に進むようになったり、効率が良くなったり、課題解決の提案をして、売上につなげていきたいと思っています。

ソリューション事業に関しては、北海道から沖縄まで、広く全国に展開しています。現在は電設資材、制御機器、ソリューションの3つの柱で事業を行っております。

ーー課題解決の提案をするときに重要なことは何ですか?

江川和宏:
お客様に何か提案するときは、「お客様が何に困っているか」を私たちが知らないと良い提案ができません。まずはお客様と日々のコミュニケーションを円滑にして、その中でどのような悩みや困りごとがあるのかを見つけていきます。

そして、それが「このような商品がありますよ」とか「今度新商品が出るので試してみませんか」などの提案につながっていきます。このような小さな提案を積み重ねることで、手間が省けたり、時間が節約できたり、コスト削減ができるなど、お客様が喜ぶ結果を生み出すことが私たちにとっても有益であると考えています。

今、電気代が高く規模の大きい工場だと、何千万円もコストが増えているところもあります。「この機器を使えば、このくらい電気代が下がりますよ」とか、「機器を導入しても3〜5年ほどで採算がとれますよ」などと提案するのが私たちの役割だと思っています。

ただ商品を売るだけでなく、いろいろなことをトータル的に提案してお客様のメリットにつなげ、喜んでもらうことが私たちが目指していることです。そして、そのような姿勢に共感していただけるお客様が弊社を選んでくださるのではないかと思っています。

ーー同業他社と比べて貴社の強みは何でしょうか。

江川和宏:
私たちの強みは独自の提案力です。他社が行っていないような提案をすることで、価格が若干高くても、お客様から購入されることが多いです。ほかにも、約束の日にきちんと納品するのは当たり前のことですが、それができていない会社も実は多くあります。

約束をきちんと守ることが長期的に見れば、お客様との信頼関係にもつながっていきます。また、約束の値段を間違えないことも当たり前ですが、徹底することが実はなかなか難しいです。長年、継続して取り組むことで信頼される企業になってきていると思っています。

社員育成での社長の役割は「強烈なリーダー」ではなく「応援団長」

ーー社員育成では社長としてどのような役割が大切ですか?

江川和宏:
先代は私とはタイプが180度違い、ワンマン系のカリスマ経営者でした。ワンマンで「俺についてこい」というカリスマ性が当時は受けていました。それに、社員もそれを求めていました。

ところが現代は、ワンマン社長は少ないです。仮にいたとしても、今の若手社員はついていかないと思います。社員主体というのは企業文化になっています。

上から「やれやれ」というのではなく、「社員がやりたいことをやろう」という逆転の発想です。会社は社員のやりたいことを取り入れ、「応援するから皆で良いアイデアを出してくれ」というようにしています。

ーー何かおもしろいアイデアはありましたか?

江川和宏:
実は今、社員からのアイデアで屋上で養蜂をしており、蜂蜜が取れます。普通なら却下です。ただ、弊社は「面白そうだからやってみよう」と会社が資金を出して養蜂のための設備を整備しました。社長からの指示は最小限にし、社員が主体性を持つことで社員のモチベーションを上げていこうというのが、今の経営スタイルです。

ーー貴社の社風について教えてください。

江川和宏:
企業文化として「やってみなはれ」と「仕事も遊びも一生懸命」というのがあります。ここでの「遊び」はプライベートよりも会社の中で遊べるという感じに近いです。

たとえば、社内でカーリングしたり、サバイバルゲームをしたり、雪合戦をしています。取引先と毎年旅行に行って、一緒に遊ぶこともしています。これからも、本気で遊ぶいろいろな会を増やしていきたいと思っています。

ーー従業員教育では何か意識していることはありますか?

江川和宏:
これまでは新入社員研修を一定期間行ったら、現場に配置し、現場の教育に任せていました。ですが、そうすると営業所の所長の経験値や能力、タイプによって教育の基準がバラバラになり、数年経つと成長する社員とそうでない社員とにかなり差が出てしまいます。

そこで、管理職になるまで継続的にサポートしていこうと、教育の均一化を図っていく取り組みも最近始めました。

ーー制度面で何か変更したことはありますか?

江川和宏:
賞与の評価を見直しました。特に若手の社員は自分への評価を非常に気にしているので、もう1度制度を見直して、適正な評価をしようと思いました。現在、外部の方とも連携して制度設計をしており、来年以降に導入予定です。

社員は頑張ってると自分で思っていても、私たちからの評価との間には多少のズレは生じてしまいます。ですので、しっかりと評価について説明できないといけません。現在はこの段階だけど、「このようなことをやれば次の段階に行けますよ」と、説明をして相手も納得できるような評価制度にするべきだと思います。

編集後記

取り扱う商品の量や種類、そして顧客サービスの質などで他社より優位に立ち、成長を続けてきた同社。

創業100周年を見据え、顧客の課題に耳を傾けながら解決策を提案する、まさにビジネスの原点に立ちもどった事業だ。今後同社はさらなる飛躍を遂げるだろう。

江川和宏(えがわ・かずひろ)/1965年神奈川県生まれ、國學院大學卒。松下電工(現パナソニックエレクトリックワークス社)に入社。3年の修業期間を経て、1991年テルヤ電機に入社。2005年に同社代表取締役社長に就任。仕事も遊びも一生懸命をモットーに精力的に活動している。