※本ページ内の情報は2023年12月時点のものです。

メディアプラットフォーム「飲食店ドットコム」を運営する株式会社シンクロ・フード(2003年創業、東京都渋谷区)は、飲食出店者とそれに関わる事業者をつなぐことで相互のマッチングをサポートするIT企業。

創業から飲食業界の内外で幅広く登録会員数を伸ばし続け、2016年には東証に株式を上場。
業績もそれに伴って拡大し、売上高はコロナ前の2019年3月期17億8700万円から、2023年は同29億3000万円まで大幅に伸長している。

こうした好調のカギはどこにあるのか、創業者である代表取締役社長の藤代真一氏に、強化中の人材戦略や経営方針についてインタビューを行った。

飲食業の不便をIT技術でフォローした新ビジネス

ーー起業に至るまでの経緯をお聞かせください。

藤代真一:
父が青果卸会社を経営していた影響で、子供時代から起業する意思はありました。
大学を出てITコンサルティング企業に就職したのですが、将来独立したときのために経営を学べると思ったのがその理由です。

30歳を前にして、何をするかを決めるより前に、起業のために会社を辞めました。決まっているのは飲食店に携わること、ITを使ってできること、そのコンセプトだけでした。

その頃、飲食店の経営者が出店する場所を不動産情報で探す際、飲食店ができる物件が限られていて、探すのに苦労しているという現状を知りました。立地で良し悪しが決まる商売ですからね。
そこで、飲食店が出店可能な物件だけを集めた情報を扱い、ビジネス化することを思いつきました。

最初はまったく相手にしていただけない不動産会社もありました。収益を上げるまで1年かかりましたが、徐々にネットワークが広がり参加してくれる人が増え、事業化にこぎ着けました。

ーー改めて貴社の特長をお聞かせください。

藤代真一:
飲食店ドットコムは、インターネット上のメディアプラットフォームで、店舗物件探しから内装会社のマッチング、仕入先のリサーチまで網羅しています。

それ以外にも人の募集など、求人課題の解決を得意としており、飲食店経営に必要なサービスがすべてワンストップでそろうというサービスは、独自性が高いものと自負しています。

人事・評価制度を大幅リニューアル

ーー直近で進められている社内改革についてお聞かせください。

藤代真一:
コロナショックの大打撃を受けて、サービス内容の拡充や、社内体制の見直し、強化を行う必要性を感じました。採用強化や従業員に対しての教育、評価制度を大きく変え、もっと強い会社にしようと舵を切ることにしたんです。

具体的には、これまでの評価は年功序列寄りでしたが、本当に能力のある人の評価を上げる制度に変えました。

成果を出した人に報いる評価を与え、若手でも能力があればそれに応じた難易度の高い仕事を任せます。もちろん報酬はその業務に見合ったものです。
ステップが上がれば当然厳しい基準になりますが、そこで結果が出せればさらに難しい仕事を任せるという制度です。

新卒で入って2年目、3年目の若手がリーダーになり、年長者をメンバーにするケースも増えています。
評価を単純にその年次ごとに修正するのではなく、実力のある人を重用する体制ですから、頑張れば頑張るほどステップアップすることができます。

入社後もやる気と成長を後押しする多彩な取り組み

ーー人材育成やスキルアップのためにどんな方針を採られていますか?

藤代真一:
業績のいい社員がいると、そこにノウハウが溜まっていく傾向があります。そのノウハウを属人的にせず、会社の皆が吸収できるよう、ナレッジ(知識)の共有化を進めています。

半期に1回、全国の営業スタッフを集めてノウハウを発表してもらい、みんなに知ってもらうことでスキルの底上げをし、チーム力や会社の組織力を上げようと取り組んでいる事業部もあります。

個々の能力開発については、環境によりその可能性が活かされないことも多々ありますから、それをうまく広げてあげられるような配慮は欠かせません。
そのため人材開発会を開き、業績に加え、個々の能力や志向と照らし合わせて「この人はまだ伸びる」とか、「この人はこういうことをやりたいと言っている」など、役員も入れて育て方を話し合う機会を設けています。

実例としては、営業を任せていた3年目の若手社員が「新しくいろんなことに挑戦したい」と言っていたので、新規事業を体験させようと、2023年の10月から担当してもらっています。
本人から「大変ですが、楽しいです!」とニコニコ話すのを聞くと、こちらもやりがいを感じますね。

フランクに話し合える風通しの良さが採用環境を整える

ーー新卒、中途採用の割合と採用状況について教えてください。

藤代真一:
新卒・中途の割合は大体半々くらいで、職種はエンジニアとディレクター、営業の3種です。エンジニアは技術ポテンシャルを重視して採用していますので新卒が多く、今年は総数で30人採用しました。

飲食業界はコロナで大打撃を受けましたが、右肩上がりの業績・プライム市場上場の安定感に魅力を感じてくださり、多くの方に集まっていただいています。

ーー新規採用が進む背景を教えてください。

藤代真一:
1つには、人事部の中に採用チームを設けてしっかり戦略を立てているのがその要因だと思います。

また、私たちの組織はフラットで風通しの良いところが特長で、コミュニケーションを取りながら、いいものがあれば是々非々でどんどん取り入れる風土があります。

立場を超えて成長するためのアイデアや自身の意見などを積極的に意見交換しながら、より良い組織にするべく切磋琢磨できる環境があります。

編集後記

藤代社長は若い世代に次のようにアドバイスする。
「世の中そう簡単に成功するものはないと思います。頭で考えてこれは無理だと決めつけないこと。何事もやってみて執着して向き合った先に何かが見えてくる」。

社長自身も事業の黎明期、自分のプランをバカにする不動産担当者もいたが、諦めずに取り組んできた経験を持っている。
チャレンジする意味を改めて教えられたインタビューとなった。

藤代真一(ふじしろ・しんいち)/1973年生まれ。神奈川県出身。1997年、東京理科大学理工学部卒業、1999年、東京工業大学大学院修士課程修了後、アンダーセンコンサルティング株式会社(現アクセンチュア株式会社)入社。2003年、株式会社シンクロ・フードを設立し、代表取締役に就任。