※本ページ内の情報は2024年4月時点のものです。

Sinumyとは、本人認証技術と高速・高精度な位置測定技術を活用したハンズフリー認証・決済システムだ。ユーザーはスマホをポケットやカバンに入れておくだけで、ショッピングから交通機関の利用、支払いまで、さまざまなサービスをハンズフリーで受けられる。面倒な手間や時間が省けるのはもちろん、事業者にとっては新たな事業の創出やコスト削減にもつながる。まさに「新しい認証のスタンダード」を生み出す次世代のサービスである。

今回は、代表取締役の足立安比古氏に、学生時代のエピソード、大手電機メーカーでの経験、起業のきっかけ、事業の強み、今後の展望などについて話を聞いた。

中学時代には起業を目指し、大学時代にはベンチャー2社を起業

ーー学生時代から起業を目指して活動されていたのですね?

足立安比古:
「まだ存在していない職業に就くこと」が将来の夢で、好奇心旺盛に新しいものを求めていたことで、考える習慣が身についたと思います。

中学生の頃には、もっと面白いことに挑戦し、将来は起業したいと考え始めていました。高校時代には生命保険を比較するサービスを提供しようと事業を考えていたのですが、ちょうど同じ時期に「ほけんの窓口」が第1号店を出店しました。これにより、自分の考えた事業は正解だったのだと自信を持ち、大学時代にはベンチャーを2社設立することに成功しました。

そのうち1社は30名程の規模にまで成長させることができ、事業を始めるタイミングや人と一緒に会社をつくることについて、楽しいこと、つらいことも含めて、さまざまな経験を積むことができました。

大学3年の時にはペンシルベニア州立大学の客員研究員として超音波研究に専念し、大学院進学をめざすため、2社を事業譲渡しました。

専門性を身につけるため、大手電機メーカーの研究職を選択

ーー最初のキャリアとして大手電機メーカーを選んだ理由を教えてください。

足立安比古:
ペンシルベニア州立大学の客員研究員を務める中で「専門性を高められる仕事をしよう」と思い、メーカーの研究職に就くことを決めました。

就職活動の際、8社程あった大手電機メーカーのうち、2〜3社からは「面接は免除するので入社してほしい」というありがたいお誘いをいただきました。

その中で、面接時に良いところも悪いところも全て話してくれた会社があり、素直さや誠実さを感じる良い会社だと思い、入社を決めました。

大手電機メーカーに在籍していた5年間で約50個もの特許技術を開発しました。

大きなプロジェクトにかかわり、多くの方々と一緒に開発を進めて良い経験を積むことができました。

起業のきっかけは、複数の電鉄会社の乗り換えで感じたストレス

ーー貴社の事業に取り組むきっかけとなった出来事を教えてください。

足立安比古:
大手電機メーカーに在職中、日々の生活の中で、いくつもの交通機関に乗り換える際にICカードを何度も取り出し、しまう手間にストレスを感じました。

「これをハンズフリーで対応できるようにすれば良いのではないか」と思い、問題を解決できる方法がないか探しました。

しかし、従来の技術では、Wi-FiやBluetoothを使っても、ラッシュ時に改札をくぐる前後の人を区別する精度がないので実現できず、また、顔認証機能も何百万人といる人の中で個別に認証を行うのは難しいことがわかりました。

そこで、独自の技術で研究を進めたところ、Bluetoothを使った認証技術の開発に成功し、そのタイミングで弊社を起業しました。

スマホアプリ1つでさまざまなコストを削減できる独自のサービス

ーー貴社の高速認証サービスである「Sinumy」の特徴を教えてください。

足立安比古:
Sinumyは、生活やビジネスでのあらゆることをスマートにする次世代の認証・決済システムです。

たとえば、スマホをポケットやカバンに入れたまま改札機をウォークスルーで通過することが可能になります。

従来、雨の日など両手が塞がっている時や外国人で切符などを買わなくてはいけない場合など不便を感じていた場合も、Sinumyだとスムーズに通過できます。

顔認証だと行列ができてる際に顔を正確に識別が困難ですが、スマホアプリ1つで簡単にスピーディーに認証できるサービスなので、事業者は改札機を削減したりインバウンド対応などをスムーズに行うことができます。

また、セミナー会場の受付で、受付のタブレットにスマホをかざすと自分の名前が表示され、それをタップするだけで受付が完了します。

従来だと何百人と表示される名前の中から探さなければならなかったことが、Sinumyだとスムーズに対応できます。

QRコードも紙もICも不要で、セミナー主催者もユーザーもスマホアプリ1つで簡単に認証できるサービスなので、セミナーを主催する会社は受付対応の人件費を削減できます。

ここが他の会社には見られない弊社独自のサービスの強みであると思っています。

アプリの普及促進とハードウェアの強化で、さらなるサービスの拡大を目指す

ーー貴社の今後のビジョンについて教えてください。

足立安比古:
シームレスな世界を作るための取り組みとして、主に2つあります。

1つ目は、弊社のアプリで共創パートナーを探す体制づくりです。弊社は認証や位置測定などに関して、ソフトウェア、ハードウェア含めさまざまな技術を持っていますが、普及させるには課題があります。弊社のサービス単体では事業にはならず、決済やポイント付与といった他のサービスが関わって初めて事業になるからです。ですから、これらのパートナー企業に使っていただける体制をつくる必要があります。

2つ目は、認証が必要になるデバイスを使って利用可能になるサービスを拡大することです。位置測定・個人特定のためには特別な技術を使った電子基板システムが必要です。弊社はこの電子基板システムを実際に組み込んだハードウェアのゲートもつくっているので、ここで弊社ができることをさらに広げていきたいです。

日本最大のIT・DX展示会「Japan IT Week」(2024年4月24日〜26日)で当社のタッチレス/ハンズフリー認証技術を体感していただけます。ぜひ、お越しください。

編集後記

幼少期から新しい仕事に興味を持ち、中学生の頃には既に起業を目指していた足立氏。

交通機関の乗り換え時のストレスがきっかけで生まれた高速認証サービス「Sinumy」は、交通機関やセミナーの受付など既に様々な場面で活用されているが、その幅はさらに広がっているのではないだろうか。

スマホアプリ1つでさまざまな場面をスマート化するという、他社にはない独自の強みを武器に、ハンズフリーの生活・ビジネスの環境を提供し続けるSinumy 株式会社の飛躍が楽しみだ。

足立安比古(あだち・やすひこ)/京都大学学部時代にベンチャー2社を設立し、3回生でペンシルベニア州立大学の客員研究員として超音波を研究。4回生の時にQNDE国際学会で発表。学部時代は素粒子物理学を、大学院ではテラヘルツ波などのレーザー光学の研究を行った後、大手電機メーカーの本社直轄研究所にてレンズレスデジタル顕微鏡や光トランジスタなどの研究を行い、5年間で50件の特許を出願。レンズレスデジタル顕微鏡についてSPIE Photonics West 2016国際学会で発表。2018年Sinumy 株式会社設立、代表取締役に就任。