※本ページ内の情報は2025年6月時点のものです。

米国製のBIM・CADツール「Vectorworks(ベクターワークス)」のローカライズ・販売・サポートを一手に担うベクターワークスジャパン株式会社。同社が提供するソフトウエアは、直感的な操作性と業界別の専門機能を組み合わせたラインナップを持ち、個人や法人を問わず、幅広いユーザーから支持を集めている。「デザイナーから愛されるフレンドシップカンパニー」をビジョンに掲げ、顧客との長期的な関係構築に取り組む代表取締役社長の横田貴史氏に話をうかがった。

元上司の紹介を機に入社し、営業経験を活かして会社の変革を推進した

ーー貴社に入社したきっかけは何だったのでしょうか。

横田貴史:
大学卒業後、キヤノンマーケティングジャパンの前身であるキヤノン販売に入社して、IT系商材の販売を担当していました。その後トランス・コスモスに転職してBPOビジネスに従事していた頃、キヤノン販売時代の上司から「営業責任者を探している会社があるから、やってみないか」という話をいただいたのです。

当時の弊社は独立系の会社で、ものづくりに対して熱心に取り組んでいましたが、販売面ではあまりノウハウがありませんでした。私はこれまでのキャリアで営業を経験していましたので、そのスキルを活かしたいと思い、入社を決意しました。

ーー入社後はどのようなことに取り組みましたか?

横田貴史:
入社当時に配属された販売部から営業部へと名称を変更し、従来からの顧客の依頼に応じて製品を提供する受け身の姿勢から、こちらから積極的に価値を提案する姿勢へと切り替える取り組みと体制づくりを推進しました。と同時に組織基盤の土台作りにも着手しました。こうした取り組みを1つずつ積み重ねていった結果、2017年に代表取締役へ就任することが決まりました。

幅広い業界を支えるユーザーフレンドリーなBIM・CADツール

ーー貴社の事業内容について教えてください。

横田貴史:
弊社は、米国のVectorworks社が開発している「Vectorworks」というBIM・CADツール(CADソフトウエア)の日本語化と、その販売やサポート、プロモーション全般を手がけています。BIM・CADツールとは、コンピューター上で建物や空間の設計図を作成するためのソフトウエアのことです。

「Vectorworks」は建築関連分野への提供が約7割で、残りの3割はさまざまな業界でご活用いただいています。例えば、舞台美術や照明などを扱うエンターテインメント業界でも広く採用されています。

ーー製品の特徴や強みはどのような点にありますか?

横田貴史:
「Vectorworks」は非常にユーザーフレンドリーなソフトウエアです。直感的な操作性が特徴で、ユーザーからは「他のCADソフトウエアと比較すると、自分の頭の中でイメージしたものを形にしやすい」と評価されています。

また、専門的な機能をプラグインとして展開しているため、用途に合わせて拡張できるという強みがあります。基本機能の上に専門機能が加わる形であるため、幅広い業種や業態で活用できる汎用性の高さも強みといえるでしょう。「ユーザーの創造性を引き出す」という部分が、この製品の最大の魅力であり、多くの方に支持される要因だと考えています。

顧客と末永くつながり続ける企業を目指して

ーー経営を行う上で大切にしていることをお聞かせください。

横田貴史:
社員にとっての物心両面の豊かさを追求することを大切にしています。経営者として、社員が物心両面で豊かになることは、企業の成長につながっていくと考えているからです。会社として利益を上げることも、もちろん大切ですが、社員が物心両面で豊かになることで会社が成長し、ひいては社会貢献にもつなげていけるように取り組んでいきたいと思っています。

仕事にやりがいを感じ、プライベートも充実できるような環境を整えるため、時には社員とも意見を交わしながら、社員視点で物事を考えるよう心掛けています。しかし、課題はまだまだ多く、今後も試行錯誤しながらより良い環境づくりに取り組んでいくつもりです。加えて、顧客の声に耳を傾け、顧客視点でのものづくり、また顧客を中心にした活動に注力しています。

ーー今後注力していくテーマについて教えてください。

横田貴史:
「いかに顧客とつながり続けられるか」を最重要課題と位置づけています。弊社の製品は決して安いものではありませんので、投資に見合う価値を提供し続けることが重要です。そのためには、ソフトウエアの機能向上だけでなく、ユーザーへの活用支援やサポート体制の充実が必要だと考えています。

価値ある情報をどのように届けていくかを模索しながら、現在行っている全国でのセミナー(Vectorworks オープンキャンパスやBIM CAMP)やオンラインでの情報発信を強化し、1人でも多くのファンをつくっていきたいですね。

編集後記

製品を売って終わりではなく、ユーザーがその価値を最大限に引き出せるよう支援することの重要性を語る横田社長の言葉には、確かな説得力があった。顧客とのつながりを重視する姿勢こそが、同社が多くの分野で支持を集めている理由なのだろう。情報発信の充実に向けた取り組みからは、テクノロジーと人間の架け橋となる企業としての誠実な思いが伝わってきた。

横田貴史/1965年、東京都生まれ。早稲田大学卒業。大学卒業後、キヤノンマーケティングジャパンの前身であるキヤノン販売に入社し、PCを中心としたIT系商材の販売に従事。その後、トランス・コスモス株式会社に転職、BPOビジネスに携わる。2005年、エーアンドエー株式会社(現:ベクターワークスジャパン株式会社)に入社。2017年、代表取締役に就任。「デザイナーから愛されるフレンドシップカンパニー」になることをビジョンに掲げ、顧客の真のパートナーになることを目指している。