※本ページ内の情報は2024年1月時点のものです。

経営の危機に陥っていた株式会社ジャルコを、電子部品製造の会社からパチンコ店向け不動産賃貸の会社として再建させた代表取締役社長の田辺順一氏。

その後、JALCOホールディングス株式会社として事業規模を拡大し、不動産賃貸や貸金などの事業を通してアミューズメント業界を支援している。

大規模な業態変更という形で会社を立て直した田辺氏だが、現在のJALCOホールディングスができるまでにどのような苦労があったのか。同社の歴史や強み、経営者としての考え方を聞いた。

電子部品事業からパチンコ店向け不動産賃貸事業へ転換して会社を再建

――JALCOホールディングスの社長になるまでの経緯と、今の貴社ができあがるまでの歴史を教えてください。

田辺順一:
もともと私は野村證券に勤めていて、そのときに担当していた顧客のオーナー社長からの誘いで「MTラボ」という金融サービスを提供する会社に転職したのがきっかけです。その会社で、コネクタという電子部品の上場会社を数社買収するという話がありました。私はその電子部品を製造していたジャルコへの出資を担当していたのですが、当時は経営状態が芳しくなく、結局出資は見送りになりました。

私は自分のスポンサーである上場会社のオーナー社長から1億5,000万円を借りて、ジャルコに融資しましたが、状況は良くならず借入金を回収できる目途も立たない。この状況をどうにかしようと思い、取締役としてジャルコに入社して、1億5000万を株にスワップしました。

結局、経営が上手くいってなかった電子部品製造部門は譲渡することにし、それからパチンコ店向けの不動産賃貸事業や貸金業に業態変更することで会社の再建を図りました。

パチンコ店向けの不動産賃貸事業を選んだのは、パチンコ店は20年、30年先まで読めるからです。たとえば一般的なアパートは賃貸契約が2年間なので、大家さんは2年先までしか賃料収入が得られる目途が立たないですよね。しかしパチンコ店の場合は、契約したら20年、30年と支払いがあるので、安定した家賃収入を得ることができます。

顧客と同じポジションをとれることが強み

――電子部品事業を続けながら会社を立て直そうとは考えなかったのでしょうか。

田辺順一:
電子部品をビジネスにするのは本当に大変です。研究開発をし、マーケティングを行い、大量生産の体制を構築し、いくらで売るか考えているうちに3年は経ってしまいます。この3年の間に他社がより良い商品を開発すれば、今までの投資はすべて無駄になるわけです。

私も最初は電子部品で逆転しようと考えました。実際に台湾へ単身で行って、現地のメーカーに投資をお願いしたこともあります。そうやってできることはすべてやったけれど、それでももう無理だと感じたので、事業を譲渡することを決めました。

私はこの再建に携わるとき、創業者の山川義定さんのお墓の前で「あなたのつくった事業はなくさない」そして「あなたの雇った従業員には退職金を払う」と誓ったんです。

会社を再建するためには、従業員をリストラし、電子部品事業を畳む必要があった。しかし、創業者に誓ったこの2つの約束は果たそうと、従業員には退職金を支払いました。また、電子部品の事業は譲渡しましたが、譲渡先で製品は残り、販売され続けています。

――現在の貴社にはどのような強みがあるとお考えですか。

田辺順一:
強みはお客様と同じポジションをとれることです。お客様がパチンコ屋を始めたいなら弊社が土地を買って、建物も建てて、パチンコ台導入のための資金も提供します。

パチンコ店が儲からないと弊社も儲かりません。だからこそ、お客様と同じポジションをとって、お客様が儲かるためにワンストップサービスを行うことを重視しています。

学生たちには「10年後の大企業に入りたい人は来い」と伝えたい

――貴社ではどういった人材が活躍できると思いますか。

田辺順一:
先回りして物事を考えられる人でしょうか。上司から何か指示されたとき、すぐに要点をつかめるような頭の回転が速い人はやはり活躍しやすいです。あとは、ずるをしない人、良い意味で欲望が強い人も向いています。

私は最終的に社員が、弊社で培った技術やノウハウを使って新たに自分でビジネスを始めてくれると嬉しいと思っています。ただ、社員たちには「独立するスキルはあるけれど、それよりもJALCOホールディングスで働いたほうが良いな」と思ってもらえるような会社にしていきたいですね。

私自身、野村證券という大企業で働いた経験を通して思うのは、学生たちは「とにかく大企業に行け」ということです。ただ、「10年後の大企業に入りたい人はうちに来い」と思っています。今はまだ大企業ではありませんが、弊社に加われば共に会社を大企業に育てる経験ができます。

編集後記

田辺社長は取材中、「理と利」という考え方を大切にしていると教えてくれた。「理」は物事の筋道のようなもの、「利」は利益。自分だけでなく、周りの人がどうしたら極限まで幸せになれるかをしっかりと考えることが大切だと語る。

「一生の仕事をするなら頂点に立ちたい」と話す田辺社長が、JALCOホールディングスをどのように大きくしていくのか。今後の動きから目が離せない。

田辺順一(たなべ・じゅんいち)/1965年三重県生まれ。一橋大学卒業後、1990年4月野村證券株式会社に入社し、14年の就業期間を経て、2004年8月アイ・キャピタル証券株式会社へ入社。2007年8月MTラボ株式会社へ入社。2009年6月株式会社ジャルコへ入社、取締役就任。2011年10月JALCOホールディングス株式会社設立、同社代表取締役社長に就任。