※本ページ内の情報は2026年6月時点のものです。

人口減少や少子高齢化により新設住宅着工戸数は減少傾向にあり、不動産業界には陰りが見え始めている。そんな中、大阪府枚方市を中心に不動産管理・建設工事・土地活用・注文住宅・リフォーム・葬祭事業など多角的に事業を展開し、地域住民の生活を支えているのが株式会社サンエースだ。

創業50年を超える老舗企業でありながらも、2023年には全社員平均13.6%の賃上げなど、大胆な働き方改革を実行した。かつてのハードワークを厭わない組織文化から、社員の幸福を第一に考える「従業員ファースト」への転換を果たした。DXへの取り組みや次世代リーダーの育成など、地域に必要とされ続けるための新たな挑戦について、代表取締役社長の谷岡倫常氏に話を聞いた。

父親が経営する会社に入社してから社長に就任するまで

ーー貴社に入社されたきっかけは何だったのでしょうか。

谷岡倫常:
父は仕事が忙しく、ほとんど顔を合わせることがありませんでした。そのような環境もあり、家業のことを意識せず過ごしていた私は、会社を継ぐなどまったく考えていなかったのです。転機となったのは、前職の不動産仲介業時代です。営業回りをしているときに、父の名前を聞く機会が多く、次第に「近くで父の仕事を見てみたい」という思いが募っていきました。その後、父と話し合って2004年に弊社に入社しました。

ーー入社されてみてどのような印象を持たれましたか。

谷岡倫常:
いざ入社してみると、分譲住宅をやってること以外は何をやっているのかよくわからない会社でした。上司は何も指示を出してくれなかったので「何かしなければ」と思い、前職での経験を活かして自作したチラシをポスティングしたら「勝手なことをするな」と叱られ、理不尽だと思いましたね。当時は、従来のやり方を重んじる組織ならではの難しさを感じた瞬間でした。

自らの意識変革で乗り越えた「創業者の壁」と3年での目標達成

ーー役職に就かれ、直面した葛藤や意識の変化についてお聞かせください。

谷岡倫常:
入社して6年くらい経った頃に役職へ就いた当初は、周りが年上の方ばかりで自分の意見を強く言えないもどかしさがありました。そんなときに経営者・後継経営者のための研修セミナー「松下幸之助経営塾」に参加したことがきっかけで、自分の思いを表現することの大切さに気付いたのです。

また、会社である以上は利益を出さなければいけない、それにより社員やその家族あるいは取引先を守ることで地域貢献へつながるのだと知り、会社経営のイメージも固まっていきました。

ーー社長就任後は、どのようなことに取り組まれてきたのでしょうか。

谷岡倫常:
私が社長になった後も、社員たちは会長の指示に従って動いている場面が多々ありました。「このままでは一向に成長できない」と危機感を覚え、幹部を集めた経営者会議を始めたのですが、会議で出した答えが会長の一声で覆る状況が続きました。どうしてこうなってしまうのか考えた結果、私自身が会長の意見を理解しようとしてなかったことに気付いたのです。

そこで、社員へ直接指示を出すのを控え、問題が発生した時は担当者ではなく私を叱ってほしいと会長にお願いしました。そのうえで、真剣に意見を交わす時間を重ねることで信頼を築き、少しずつ仕事の権限を任せてもらえるようになったのです。

その後は、私が主体となって5年後の達成を目指した中長期経営計画を策定。売上高目標の達成を目指し、社員一丸となって取り組んだ結果、予定よりも早い3年目で目標としていた数字を達成できました。

コロナ禍を機に進めた「働き方改革」と「DX」への挑戦

ーー目標を達成された後、組織としてはどのような課題に向き合われましたか。

谷岡倫常:
コロナ禍を経て、物価高騰や採用難など社会環境が激変する中で、時代にそぐわなくなった古い社風からの脱却が急務の課題だと痛感しました。かつての弊社は、お客様第一に徹するあまり、個人の生活を二の次にしてしまうような風土があり、有給休暇も取りにくい雰囲気がありました。そこで2023年、社員が安心して長く働ける環境づくりを、経営上の重要課題として位置づけました。そして具体的な改革として、固定電話の留守番電話設定を1時間早め、社員が帰りやすい環境をつくりました。長年の商習慣から「お客様に迷惑がかかるのでは」という声もありましたが、必要性を丁寧に説明し、お客様にもご理解をいただきました。同時に、全社員平均で13.6%という大幅な賃上げも実施しています。

これらの改革の結果、最初は半信半疑だった社員たちの意識も変わり、今では早く帰ることが当たり前になりました。社員の定着率も向上し、以前よりも効率的に業務に取り組む体制が整ってきていると感じています。

ーーDXやAIの活用についてはどのようにお考えでしょうか。

谷岡倫常:
人口減少による人手不足が深刻化する中、業務効率化は避けて通れない課題です。かつて手書きの見積書がパソコンに変わったように、これからはAIを使いこなすことが当たり前の時代になります。

そこで現在、社員からの提案で「AI活用プロジェクト」が立ち上がり、各部署からメンバーを選出して勉強会を始めています。まずは文書作成や地域向け説明会の資料づくりなど、身近な業務からChatGPTなどのAIを取り入れ、どのような活用が可能か検証を進めている段階です。トップダウンで押し付けるのではなく、現場の社員が興味を持ち、自発的に新しい技術を学ぼうとしてくれていることを大変頼もしく感じています。未だにFAXや手書き文化が残る業界ではありますが、5年後、10年後を見据えて、デジタルの力も柔軟に取り入れていきたいですね。

サンエースが手がけている事業や地域貢献活動・自社のアピールポイント

ーー近年、新たに注力されている事業などはありますか。

谷岡倫常:
2023年にガレージハウス事業を始めました。これは、空き地を所有されている方の土地活用ニーズに応える形で始めた事業です。特に駅から離れた立地であっても利回りに期待できることが魅力の土地オーナーにとって新たな選択肢となる商品です。ガレージハウスは住居のため、オーナーは税金の控除を受けられるメリットがあります。

また、1階部分のガレージは店舗または趣味のためのスペースとして使い、2階部分の住居スペースで生活するといったように、汎用性が高いのもポイントです。弊社が展開するガレージハウス「S-BASE」は、鉄骨造りでスペースが広いのが特徴です。これは、車いじりを趣味にしている社員の意見を取り入れました。工具類を置いても作業スペースを確保でき、重いものを持ち上げるときに使うチェーンブロックを引っかけられるので、車好きの方に自信を持っておすすめできます。

さらに、新規事業はガレージハウスだけではありません。不動産管理で培ったノウハウを活かしてコインランドリー事業も展開していますし、現在は「ペット用のコインランドリー」としてトリミング機能を併設した店舗開発を進めています。また、地域の空き家問題解決の一助として、古民家の活用を含め、高齢化社会のニーズに応える新たな地域貢献型事業も検討しています。既存事業の延長線上で、地域の方々に「あってよかった」と思っていただけるサービスを常に模索し続けています。

ーー葬祭事業も手がけられていますが、この事業を始められたきっかけをお聞かせいただけますか。

谷岡倫常:
不動産業や建設業を行っている弊社にとって、葬祭事業は畑違いと思われるかもしれませんが、これも地域の方々からの声を聞いて始めた事業です。弊社がある枚方市東部地区は農家の方が多く、かつてはお葬式をご自宅で執り行うことも多かったんです。住人の方がお亡くなりになると、近所の方がその方のご自宅に集まってお手伝いをされていたんですね。それが昨今では会社勤めの方が増えるなど、社会環境の変化によって地域の方だけでお葬式の準備をすることが難しくなったのです。

当時はまだ近くに斎場がなく、地域の方々が困っているという話を聞いた創業者が、23年前に本社があった枚方市の藤阪に「パルティ」という葬祭式場を建て、葬祭事業をスタートさせました。地域密着企業として、地域の困りごとに応えることが私たちの使命だと考えています。

ーー貴社が運営されている地域ポータルサイトについてお教えください。

谷岡倫常:
葬祭式場「パルティ」の会員になっていただくと、基本葬儀料の割引を受けられる会員制度があるのですが、無料の会員制度なので「とりあえず入っておく」という方が多く、そのまま入会したことを忘れてしまわれることが多かったんですね。そこで、普段から会員であることを意識してもらえるように同じ地域で活躍する様々な店舗の方に協力してもらい、お店で会員証を提示することで、特典を受けられるサービスを始めました。

たとえばお店で商品を購入した際に割引を受けられたり、ドリンク一杯が無料になったりと、お得なサービスを受けられるのが特徴です。ご協力いただいている店舗様は、地元の情報発信をしているポータルサイト「パルね(旧・パルの木ネットワーク)」で無料で紹介しています。地域のお店の方からすると、お金をかけずにお店の宣伝ができる仕組みです。会員様にはお得にサービスを活用していただき、お店を経営されている方々には集客の足がかりとなることで、地域が元気になれば私たちも嬉しく思います。

ーー地域に密着されているからこその信頼関係を感じるエピソードはありますか。

谷岡倫常:
印象的な出来事として、不動産管理を任せていただいているオーナー様から「ちょっと来てくれ」と急な連絡をいただいたことがあります。現場に駆けつけてみると、田んぼで農機具が転倒してしまい、途方に暮れておられました。そこで、私たちも一緒になって泥だらけになりながら引き上げ作業を手伝いました。無事に解決した際、オーナー様から心からの「ありがとう」という言葉をいただいたときは、本当に嬉しかったですね。

これは本来の業務範囲ではありませんが、困った時に真っ先に弊社の顔を思い浮かべて頼っていただける。これこそが地域密着企業としての強みであり、「サンエースがあってよかった」と実感していただける瞬間だと感じています。こうした深い関係が築けている背景には、社員の約80%がこの地域の出身者であるという点も大きいでしょう。社員自身が地域社会の一員として日頃からお客様と接しているからこそ、強固な「信用」でつながることができるのです。

次世代への継承と「人育て」への思い

ーー今後のビジョンや、特に注力していきたいことについてお聞かせください。

谷岡倫常:
将来的に葬儀需要の減少など市場の変化は避けられませんが、「地域から必要とされる会社であり続ける」というビジョンは変わりません。そのために最も重要なのが、人材の育成です。現在、弊社の平均年齢は約50歳です。ベテラン社員に支えてもらいつつ、企業の永続的な発展を見据えて、次世代の育成も並行して進めていきたいと考えています。

創業以来大切にしてきた「地域密着」の精神や、弊社らしい価値観をしっかりと継承しつつ、若い世代がやりがいを感じられる環境をつくりたい。単に仕事をこなすだけでなく、地域のために何ができるかを社員一人ひとりが考え、行動できる組織を目指しています。

ーー最後に、貴社への入社を検討されている方々に向けてメッセージをお願いします。

谷岡倫常:
弊社は不動産業や建築業、葬儀事業、介護事業など、幅広い事業を地域に根ざして展開しているのが特徴です。そのためそれぞれの分野のプロが社内に在籍しており、地域の生活に関わるあらゆるスキルを学ぶことができます。また、別々の事業をかけ合わせて新たな事業を生み出すなど、これからさらに発展できる自由さもあります。この地域に生活基盤を持ち、スキルも磨いていきたいという方にとっては、安心して長く働いていただける職場だと思いますね。

ぜひ仲間になっていただきたいのは、地域が好きで、変化を前向きに楽しみ、地域のために主体的に挑戦できる感性を持った方です。弊社は創業から50年を超える老舗企業ですが、今は変化の過渡期にあります。「なぜこれをやっているのですか?」という素朴な疑問や、外の世界を知っている方ならではの意見を歓迎します。会社をより良くしたいという意欲を持ち、自分の考えを前向きに発信できる方にぜひ仲間になってほしいと思っています。

編集後記

「24時間戦う」企業戦士の時代から「従業員ファースト」の時代へ。谷岡氏が実行した改革は、単なる労働条件の改善にとどまらず、社員一人ひとりの人生を豊かにし、それが結果として地域へのより良いサービスに還元されるという好循環を生み出している。田んぼの農機具を引き上げるエピソードに象徴されるような、泥臭くも温かい信頼関係を基盤に、AIという最新技術もしなやかに取り入れる同社。老舗企業の安定感とベンチャーのような進取の気性を併せ持つ同社の未来に、地域の期待は高まるばかりだ。

谷岡倫常/1981年大阪府枚方市生まれ。2000年同志社香里高等学校を卒業後、同志社大学へ入学するが2001年に中途退学。同年大手不動産会社へ入社し、主に不動産仲介業を学ぶ。2004年に株式会社サンエースへ入社。2015年に同社代表取締役社長へ就任。地域の振興活動にも注力している。