※本ページ内の情報は2024年2月時点のものです。

トーソー株式会社は、カーテンレールやブラインドなど窓周りのアイテムを製造・販売するインテリアメーカーだ。

特にカーテンレールは、70年以上にわたり国内シェアNo.1を維持し、多くの利用者から長く信頼を獲得し続けてきた。

事業を拡大するべく進化への挑戦を続ける前川圭二氏に、社長に就任するまでの経緯や事業の強み、業界の課題、今後の展望などについて話をうかがった。

トップシェアメーカー企業の社長に就任するまで

ーー貴社には新卒入社されていますが、学生時代からこの業界に興味を持っていたのでしょうか?

前川圭二:
当時は全く興味を持っていませんでした。私は有名大学出身でもなければ、優秀な成績でもなく、部活動で活躍した魅力的な実績も持っていなかったので、就職活動をする際には、「大手企業に入る」という考えはなく、中小企業を含め、自分が興味を持てるような企業を探しました。

いくつかの会社を見た中で弊社の選考を受けたのですが、人事課長がとても気さくで選考スピードや連絡も早く、印象が良かったので入社を決めました。

ーー社長に就任されるまでの経緯を教えてください。

前川圭二:
弊社は、技術系の社員以外は基本的に営業部門に配属されます。私も横浜営業所(現横浜支店)へ配属され、お客様との関係構築などを学ぶところからスタートしました。

次に経理部へ異動となり、そこで売上や予算など会社全体の数字の動きを学ぶことができ、その後は製造部門や企画部門などを経験し、順調にキャリアを積んでいきました。

そして有難いことに、前社長に私がいろいろな部署で残してきた実績を評価され、社長に任命していただきました。

ーー入社してから社長就任後の現在に至るまで、仕事を行う上で心がけてきたことはありますか?

前川圭二:
主に2つあります。

1つ目は、丁寧に仕事を行うことです。経理部門での経験が長かったことも影響していると思いますが、スピードを意識しつつ、それ以上に丁寧さを大切にし、仕事を進めてきました。

スピード重視で業務を進めてしまうと、後でやり直しが必要となり、二重に手間がかかって非効率な状況を生み出してしまうためです。

2つ目は、何事にも挑戦していくことです。私自身、今まで周りの社員と一緒に「まずやってみよう」という姿勢で業務に取り組んできました。

それによって、業務の非効率な点や新しい着眼点に気がつき、改善やより効果的な行動につなげられたので、今でも社員全員へこの大切さを伝え続けています。社長の私から「やってみなさい」と上からいうのではなく、私を含めて「皆でやってみよう」という伝え方をしています。

トップシェア企業としてお客様を飽きさせない製品づくり

ーー貴社の事業の強みを教えてください。

前川圭二:
カーテンレールでは国内トップシェアを誇っています。創立当時はまだカーテンレールが普及しておらず、種類も多くありませんでしたが、その中で弊社は木製や金属製のカーテンレールを普及させることに成功し、70年以上、今日に至るまでトップシェアを維持し続けてきました。

今ではカーテンレールのアイテム数は他社に比べて圧倒的に多く、デザイン性や機能性もお客様から高く評価していただいております。

また、概ね2年に1回のペースで新製品の開発も行っています。今後も、トップシェア企業として他社に負けず、お客様を飽きさせない商品開発を続けていきたいと思っています。

住宅市場と非住宅市場の双方で自社の介在価値を提供

ーー今後注力していきたいことがあれば教えてください。

前川圭二:
1つ目は、住宅市場におけるシェアをさらに上げていくことです。

少子高齢化により、初めて住宅を購入する1次取得者が少なくなり、家を建てる若い方の割合も減少傾向にあります。

住宅市場の縮小による弊社への影響は大きいので、この点をどう改善していくかが1番大きな課題だと感じています。

弊社は、国内の住宅市場を中心に事業を展開しているため、新しいことに取り組んだり、商品に付加価値を付けたりして、「どのようにシェアを取り続けていくか」を考えていく必要があると考えています。

また「現代の需要に合わせた商品の売り方もしていきたい」と思っています。これまでは、インテリアコーディネーターの方に販促をかけ、お客様に弊社の商品を売っていただくのがメインの営業方法でした。

しかし、現在は引っ越しや家を購入する際に、ネットで商品を探すお客様が多いので、そのような方々にも弊社の商品を見てもらえるような取り組みを進めていきます。

2つ目は、生産工程の改善です。コスト上昇や人材不足の問題もある中、限られた人数で商品を生産していくには限度があります。

今までの生産工程を見直し、自動化できる部分は自動化していけるよう現在進行中です。

3つ目は、非住宅市場への新規販促開拓です。具体的には、ホテルや病院をメインに弊社の製品を利用していただけるようアプローチしています。「比較的住宅に近いホテルや病院といったところで弊社の製品の強みを活かすことができれば」と思っています。

また、弊社の新製品で、天井や壁に設置できる「ハンギングバー」の販売強化にも取り組んでいます。これは洗濯物の部屋干しや、植物をつるして飾る際にも使用できるものです。窓以外の領域で「弊社の製品の強みを売り込む余地がまだまだある」と感じているので、今後も精力的に販売・販促を続けていきたいと思っています。

長く働いてもらえる職場環境づくりにも注力

ーー働きやすい環境づくりとして取り組んでいることはありますか?

前川圭二:
業務を進める上での不安をできるだけ解消できるように集団研修を定期的に行ったり、入社後半年間は先輩社員と一緒に業務を行うという「ペア制度」を運用したりしています。

また、産休・育休も取りやすく、女性だけでなく男性の取得率も増えています。弊社は優秀な社員が多く、長く働いてくれる方ばかりなので、働きやすい環境づくりには今後も力を入れて取り組んでいくつもりです。

今しかできない経験をたくさんしてほしい

ーー読者である就職活動中の学生に向けたメッセージがあれば、お願いいたします。

前川圭二:
学生のうちに、多くの経験を積むようにしてください。社会人になると、制約が多くなり何かを新しく始めることが難しくなります。

スポーツや海外留学など、自分の好きなことであればジャンル問わずいろいろと挑戦し、経験値を増やしてほしいと思います。それが「自分の向いていることや目指したいことを見つけるきっかけになる」と思っています。

編集後記

カーテンレールで国内シェアトップとなった現在も、新商品開発を続けてお客様の需要に応え続ける前川社長。

新たな成長と発展に向けて新規販促開拓や生産性向上など、挑戦を続けるトーソー株式会社から、今後も目が離せない。

前川圭二(まえかわ・けいじ)/1958年、福岡県出身。1983年成蹊大学経済学部卒業後、トーソー株式会社に入社。横浜営業所(現:横浜支店)に配属となり、営業を経験した後、経理部に異動して会計業務を学ぶ。その後、製造副本部長、経営企画室長、経理部長、執行役員経理部長、取締役管理本部長などを経て、2019年4月、代表取締役社長に就任。