※本ページ内の情報は2024年3月時点のものです。

株式会社スマートショッピングは、「日々のモノの流れを超スマートに」することを目指し、IoT重量計「スマートマット」を用いた在庫管理・自動発注ソリューションを開発・提供するSaaSベンチャー企業だ。

IoT技術を活用し、「ゼロクリック在庫管理」という今までの常識を変える新たなイノベーションを生み出してきた。また、2021年には「すごいベンチャー100」に選出されている。

今回は代表取締役の林英俊氏に、事業内容や強み、起業までの経緯、今後のビジョンなどについて話を聞いた。

現場に寄り添う生産管理DXサービスを提供

ーー貴社の事業内容について教えてください。

林英俊:
弊社はIoT重量計というデバイスを使った在庫管理システムを提案しています。BtoB向けの「スマートマットクラウド」とBtoC向けの「スマートマットライト」という2つのIoTサービスを提供し、主に製造業界に対するDXを行っています。

「スマートマットクラウド」は、IoT重量計を活用して、在庫の重さをベースに物の数や流れを見える化し、現場の在庫管理や工程管理の効率化を図ります。

単純な在庫管理サービスではなく、現場のモノの管理をリアルタイムで把握することで、製造業のQCD(品質・コスト・納期)を向上させる生産管理DXサービスです。

一方「スマートマットライト」は、家庭の日用品の残量を計測し、減ったら自動注文できるホームデバイスで、「スマートマット」を知ってもらうPR効果を狙ったサービスでもあります。

ーー他社のサービスとは違う貴社のサービスの強みを教えてください。

林英俊:
よくある生産管理システムは、パッケージの一部に在庫管理の機能が含まれており、主に経営者側が使うシステムが多いのですが、弊社のサービスはリアルタイムで生産管理の実態がわかる仕組みで、現場寄りのサービスです。

在庫管理の課題は「人間の力だけでは管理に限界がある」という、とてもシンプルなものです。24時間365日、人間がずっと在庫を見続けていれば何も問題は起こりませんが、それが不可能であるために問題が起こります。

このような人間の限界値を超えたところをIoT技術で楽にして、現場が本当に使える生産管理DXである点が大きな強みだと思っています。

製造業にDXを起こすSaaSベンチャー企業を起業するまで

ーーどのタイミングで起業を決めましたか?

林英俊:
大学、大学院ではコンピューターサイエンス学科を専攻しており、人工知能系の技術やプログラミングを約6年間学んでいました。

周りのエンジニアの中には起業した人もいたのですが、当時の私が起業しても大きなインパクトを起こせるイメージがなく、自分にはビジネス経験を積むことや社会の課題を知ることが必要だと思い、まずは社会人経験を積むことを選択しました。

1社目はコンサル会社に勤めましたが、「インターネットの仕事に就きたい」と思い、Amazonへ転職しました。

そして、Amazonで3年働く中でビジネスの軸が固まってきたため、その後に今の会社を起業する流れとなりました。

マインドやプロ意識を鍛えられた新卒時代

ーー苦労したエピソードがあれば教えてください。

林英俊:
コンサル会社での新卒時代が1番苦労しました。

1年目からいきなりプロであることを求められる環境だったので、学生から社会人になったばかりで、スキルも経験もない私にとっては荷が重かったのです。

しかし、先輩からビジネスマナーや業務だけでなく「お客様の期待を超えるのは当たり前である」「言われたことを行うだけでは100点ではない」といったプロのマインドについても教えてもらえたので、とても良い経験ができたと思っています。

このマインドは今の仕事にも活きている私の財産で、弊社のカルチャーにも反映されています。

IPOや海外展開などさらなる事業拡大を目指す

ーー貴社の今後の展望について教えてください。

林英俊:
1つ目は、IPOです。3年後を目標としており、それまでに余裕を持ってIPOできると言われている300億円の資金を蓄えられるように準備を進めています。

2つ目は、国内市場をさらに開拓していくことです。国内だけでも多くの製造業の企業がありますが、まだその全てにアプローチできていません。

大きなマーケットである国内の製造業を対象に事業拡大していけば、弊社をさらに大きな規模にできると考えています。

また、国内の企業の役に立てば、その企業が持つ海外の工場のサポートにも関わる機会も増えますので、自然と海外展開にもつなげることができると思っています。

ーー貴社が今後成長していく上で必要だと思うことはありますか?

林英俊:
大手企業向けの拡販がまだ不足していると感じています。今までは小規模の企業に大量かつ効率的に売るビジネスモデルで事業を進めてきましたが、今後はここから抜けださなければ大きく成長できないと思っています。

大手企業のお客様を相手にする場合、要望を聞くだけでなく課題を見つけて解決策を提案するコンサルに近い役割が求められます。そこにも対応できる企業になれるよう方向転換を行っており、現在その手応えを感じ始めています。

個人の力とチームの力の2つを活かせる人材を求む

ーー貴社が求める人物像を教えてください。

林英俊:
主に2つあります。

1つ目は、個人で乗り切る力も、チームで協力して仕事を進める力も、両方持った方です。弊社は新規事業を創出するゼロイチのフェーズは抜けているものの、まだ個人で突破しなければならない部分があると思っています。しかし、基本的にはチームで協力して仕事を進めるので、このバランスを楽しめる人には弊社はマッチしていると考えます。

2つ目は、まっすぐなマインドを持っている人です。スキルは経験を積む中で身につけていける環境があるので、それよりも仕事に対して素直で一生懸命に向き合えるマインドを持った方と一緒に働きたいと思っています。

仕事へのマインドやプロ意識を学べる環境に身を置いてほしい

ーー最後に読者である学生や若手に向けてメッセージをお願いします。

林英俊:
20代の頃にたくさん苦労した方が良いと思っています。

私は新卒の時期が1番つらかったのですが、仕事に対してのマインドやプロ意識を徹底的に鍛えていただき、今の仕事にも活かすことができました。

「どのような仕事をするか」「どのような働き方をするのか」といった点も大切ですが、それ以上に「マインドやプロ意識などが鍛えられるところはどこか」といった点を重視し、キャリアを選択してほしいと思います。

編集後記

新卒1年目からプロのビジネスマインドを吸収し続けてきた林社長。

それは会社のカルチャーにも反映されており、現場に寄り添った在庫管理システムを生み出すことにもつながった。

物流の現場では業務の非効率が問題となっているが、「スマートマットクラウド」はその業界課題に大きく貢献しており、その需要はさらに高まっていくことが期待される。

今後はIPO化や国内市場の拡大、海外展開など新たな挑戦に向けて動く株式会社スマートショッピングは、その活躍の場を広げていくだろう。

林英俊(はやし・ひでとし)/2005年、京都大学大学院を修了後、株式会社ローランド・ベルガーに入社。製造業を中心に経営コンサルティングを行う。同社史上最速でシニアコンサルタントに昇進。MBA留学後、プロジェクトマネージャーに昇進。2012年、アマゾンジャパン株式会社に入社。プロダクトマネージャーとして、会員サービスと定期購入サービスの立ち上げを担当、最年少のシニアマネージャー。2014年、株式会社スマートショッピングを設立。経営全般に加え、製造DXの講演も多数。