IT技術を利用して新たなビジネスモデルを構築したり、既存のビジネスを改良したりするDX推進の動きが国内で加速している。
そんな中、ITシステムの提案や導入、開発、ITエンジニアによる技術支援などを行っているのが、株式会社オールスマートだ。
同社は営業部門がないにも関わらず、顧客から継続的な依頼を受け続け、創業から安定した経営を続けている。
相手の期待を上回るサービスを提供し、エンジニアたちがイキイキと働ける環境を目指す、創業者である吉峰和寿氏の思いを聞いた。
顧客の信頼を得る秘訣は、お客様の期待以上の成果を出すこと
ーーエンジニアとして会社員やフリーランスを経て、起業された経緯についてお聞かせください。
吉峰和寿:
会社員やフリーランスとして働いていた頃は、お客様の要望をヒアリングし、それをもとにエンジニアや開発チームを指揮する役割を担っていました。
多くの人々と関わる中、当時、私が知っている超優秀なエンジニア3人を誘い、4人で会社を立ち上げて今の事業をスタートしました。私は特別リーダーシップや教養があるわけではないのですが、人から好かれやすい性格に関しては、私の長所だと思います。
ーーコロナ禍による経済の低迷など、市場が混乱したタイミングがいくつかありましたが、経営の危機に陥った局面はありましたか。
吉峰和寿:
主要取引先である大手携帯キャリア会社は、インフラである通信事業をメインに行っているため、市場状況にはあまり左右されません。私や社員たちに大きな信頼を寄せてくださり、継続してお付き合いいただいているため、これまで経営面で大きな危機に直面したことはありません。
これは、弊社がお客様からのご要望は断らないことを基本とし、さらに先方の期待を上回るサービスを提供できているためだと思っています。
飲食店で例えると、お店のリピーターになってもらうには、料理の美味しさだけでなく、そこで働くスタッフのサービスの質も重要です。弊社の強みは、こうしたプラスアルファの価値を提供できるところだと自負しています。
弊社は営業が1人もいないため、営業活動は行いません。それでも弊社のサービスに納得されたお客様が、別の企業様を紹介してくださり、新規の取引先の獲得につながっています。
友達のような関係から、ともに目標の達成を目指す仲間へ
ーー起業されてから今日に至るまで、どのように会社を発展させたのですか。
吉峰和寿:
起業当初は私の知り合いのエンジニアに声をかけ、8人で運営していました。その頃は私もエンジニアとしてお客様先に常駐して開発をしていたので、経営者というよりも親方のような感じでしたね。
それから会社の拡大を目指すようになり、開発の仕事は後進に託し、経営に専念することにしました。そのタイミングで中途採用をスタートさせ、それまでは自宅を職場として使っていたのですが、労働環境を整備するためオフィスも構えました。
ーー組織の構築についてはどのように取り組まれたのですか。
吉峰和寿:
仲間内で始めた会社だったので、最初は経営者と社員というよりも友達のような関係性でした。そこで、「共通の目標の達成を目指す仲間」という意識を持ってもらうため、企業理念やビジョンを設定しました。
ただ、私が一方的に企業理念を押し付けるような状況になったことで、仲間からはあまり理解を得られませんでした。こうした失敗を経て、今では社員と一緒に弊社のミッションやビジョン、バリューを決めるようにしています。
「技術✕人間力」二刀流のエンジニアの育成と今後の事業方針
ーー新たに取り組まれている事業について教えてください。
吉峰和寿:
同業他社の内定者に向けて、研修を提供する事業の立ち上げに力をいれています。この研修では、エンジニアとしてのスキルと社会人基礎力を養うことで、高い技術力と人間力を持った二刀流のエンジニアの育成を目的としています。
この研修支援を始めたきっかけは、ビジネスパートナーに仕事を依頼した際、担当するエンジニアによってスキルの差を大きく感じたことです。そこで研修を通して、どの領域のスキルが高いのか、どの分野が苦手なのか分析し、個人のスキルを可視化することで、最適な人員配置ができるようにしています。
将来的には、この企業向け研修支援事業をスケールアップさせ、エンジニアを育成する学校をつくり、社会で活躍できる人材を増やすことが私の夢ですね。
ーー今後進めていきたい事業はありますか。
吉峰和寿:
弊社はこれまでお客様から依頼を受け、開発を行ってきました。しかし、お客様が抱えている課題の解決に沿ったサービスを提供できず、開発コストや労力が無駄になってしまったケースもあったのです。
そこで、各企業が抱えている課題をくみ取って解決に導くため、ITコンサル事業を拡大する予定です。
また、コンサル事業で蓄えたノウハウを活かし、今後は受託業務だけでなく、自社の製品やサービス開発にも挑戦したいと考えています。
ーーどのような企業を対象にコンサルサービスを提供する予定ですか。
吉峰和寿:
大手企業と比べると中小企業はDXがあまり浸透していないので、そのような企業を弊社で支援できればと考えています。
DX推進事業については、国や自治体の助成金や補助金を活用すればコストを抑えられるので、資金面も含めてサポートできればと思っております。
ーー今後強化していきたい分野はございますか。
吉峰和寿:
AIやWeb3、VR、データ解析などの、最新技術に強いエンジニアを採用していこうと思っています。また、社内でこの分野に関わりたいという人がいれば、会社としてサポートしていきます。
このように徐々に事業を拡大し、私が65歳になる17年後をめどに、社員数を300名にまで増やし、年間100億円を売り上げる企業にしていきたいと思っています。
仲間と楽しむ社風の中で、誰にもゆずれない力を発揮してほしい
ーー貴社の社内風土についてお聞かせください。
吉峰和寿:
公私混同が、弊社ならではの特徴だと思います。全員で集まってイベントを開催することも多いので、仕事とプライベートをきっちり分けたいという方よりは、仲間たちと楽しみたいという方が弊社には合っていると思います。
ーーどのような方に仲間として加わってほしいとお考えですか。
吉峰和寿:
「オールスマートに入社したら、絶対にこれを実現させたい」という夢を持った方に来てほしいと思っています。これだけは誰にも譲れないという強い意志を持ち、ひとつのことに集中できる方をお待ちしています。
編集後記
人から好かれるのが長所と話す通り、インタビュー中にも吉峰社長の人柄の良さが伝わってきた。経営者として楽しい職場づくりを心がけながら、お客様が求める以上のクオリティを目指すプロ意識もかいま見える時間だった。
一緒に働く仲間を大切にし、顧客からも厚い信頼を得ている株式会社オールスマートは、今後さらに影響力を拡大していくことだろう。
吉峰和寿(よしみね・かずひさ)/1975年、鹿児島県生まれ。鹿児島の大学を卒業後、上京してシステムエンジニアとしてのキャリアをスタートさせる。大手通信キャリアの顧客データベースの開発プロジェクトに約18年携わる。その経験とスキルを活かし、2009年、独自のビジョンを持った株式会社オールスマートを設立。2016年、システムエンジニアとしての役割を後輩に託し、代表取締役として会社の経営に専念する。