
クリックテック・ジャパン株式会社は、米国Qlik Technologies Inc.の日本法人として、データ分析・統合プラットフォームを提供する企業だ。「Qlik Sense」や「Qlik Cloud」などの製品・サービスを通じて、企業のデータ活用や意思決定をサポートしている。同社の執行役員社長を務める今井浩氏に、これまでの経歴や事業内容、今後の展望についてうかがった。
生産性向上に向けてデータの活用を普及
ーー社長のご経歴をお聞かせください。
今井浩:
大学卒業後、IBMへ入社しました。私は大学時代、アメリカンフットボールをやっていて、IBMにはアメフト選手として採用されました。入社してから2年間はアメフトに専念していましたが、会社の業績都合により、3年目から研修を受けて営業職として仕事をするように。4年目には日中は営業、夜と土日はアメフトの練習という生活になり、大変でした。
しかし、途中から「フットボールもビジネスも一緒だな」と感じていました。ビジネスもフットボールも、勝ち続けなければいけない。そして、勝つためには、いつまでにどうやって達成するのか戦略と戦術を考える。フットボールをやっていたからこそ、ビジネスでも似たような経験が生かせて、「ビジネスでも頑張れそうだな」と思った記憶があります。
その後、IT関連の企業へ転職し、社会人になってから、一貫して外資系IT企業に身を置いています。4度の転職を経験し、クリックテック・ジャパンが5社目です。
いくつかの外資系IT企業に身を置き、データ保護という守りの領域を扱ってきましたが、売上拡大など攻めの施策にも貢献したいと考え、データとAIの可能性に注目していました。そんな中で、データ分析・利活用にとどまらず、データ収集・統合、品質までサポートするクリックテック・ジャパンの戦略に共感し、「これは面白そうだ」と入社を決めました。2019年10月から執行役員社長に就任しています。
ーー貴社に入社後はどのようなことに取り組まれましたか。
今井浩:
入社後は「日本の企業をデータの力で元気にしたい」という一心で、お客様の売上・利益拡大といった攻めの施策と、リスク回避やコスト削減といった守りの施策の両面で貢献することを目指してきました。両面の施策を経営者側に提案すると、私が描いていた理想の姿に共感してくださるんですが、現場の方はやっぱり目の前のことで大変。「そんなこと、絵に描いた餅だよ」と言われることが多かったです。
施策の重要性がなかなか伝わらない中でも、ビジネスを拡大するためにはAIやITを活用して業務を効率化・自動化し、人間は人間にしかできない価値の高い付加価値のある業務にシフトしていくべきだと信じていました。ですので、「AIやデータの力を活用して企業の価値を上げたい」という思いを粘り強くお客様に伝え続けました。
そして、これらの経験から、提案の際は、経営者と現場の双方に働きかけ、その間に立ってギャップを埋める形で提案するスタイルを徹底しています。
「自然に使えるAI」が他社との差別化要因に

ーー貴社の事業内容を教えてください。
今井浩:
弊社は、アメリカのQlik Technologies Inc.の日本法人です。Qlik Technologies Inc.は、現在100カ国以上で事業を展開しており、AIおよびデータ分析を中心としたクラウドソフトウェアとサービスを提供し、お客様のビジネス成功をサポートする事業を行っています。
弊社は、世界を元気にするために、データの民主化並びにAIの民主化、もう少し噛み砕いた表現でいうと、気が付いたら自分たちの生活の身の回りにデータとAIが溶け込んでいて、AIの力を使って生活が豊かになっている社会を目指して事業を展開しています。
事業の柱は大きく分けて、SaaSならびにソフトウェア事業と、それらを伴走支援していくカスタマーサクセスサービスの2つです。サービスやソフトウェアを販売して終わりではなく、サービス導入後も、コンサルティングを通じて、お客様のビジネスの成功まで伴走できる点が弊社の強みです。
ーー貴社ならではの特徴はどのようなところですか。
今井浩:
弊社の最大の特徴は、他社に真似のできない特徴的な2つの技術にあります。1つ目は、データをリアルタイムに自動取得し、高い品質を維持する技術です。2つ目は、完全対話型のQlikのAIエージェント技術で、複数システムを横断してデータの分析・予測・リスク評価・アクション提案を行います。このAIエージェントは、ユーザーの専門性に関わらず柔軟にアクションを設定でき、必要に応じてユーザー自身が直接指示することも、基準値を超えた際に自動でアクションが実行されるようトリガーを設定することも可能です。弊社の技術は第三者からも高く評価されており、米リサーチ会社ガートナー社が発表するIT製品の評価レポートにて、業界最多となる3部門でリーダーに選出されています。さらに、データドリブン専業ベンダーとして、特定の業務に限定せずあらゆる業務領域でご利用いただけることも我々の強みです。
世界と日本の両軸で新製品開発に挑む
ーー今後はどのようなところに注力したいとお考えですか。
今井浩:
今後は、グローバルと日本、両軸で製品開発を進めていきます。グローバルの戦略としては、AIエージェントを中心とした最先端の技術を取り入れて新しいソフトウェアを開発する予定です。
また、製品開発を進める上で、日本向けにローカライゼーションする際は、日本市場に向けてもっとかゆいところに手が届くような製品を、パートナー企業と一緒につくっていきたいと考えています。
たとえば、SAP(※1)一つとっても日本の独自性、日本固有のビジネスプロセス、カルチャーがあるわけで、単純に日本語化すれば済む話ではありません。弊社のソフトウェアやSaaSの技術を合体させてソリューションを開発していく際、積極的にパートナー企業の協力を得ながら進めていきたいです。
(※1)SAP:経営・業務の効率化や経営の意思決定の迅速化を実現することを目的に、多くの企業で導入されているITソリューションのこと
ーー最後に、貴社の展望をお聞かせください。
今井浩:
データとAIの民主化を通じて、日本の国際競争力を向上したいと考えています。そのためには、AIとデータによる業務の自動化を進め、無駄を省くことで、限られたリソースを企業の付加価値や利益に直結する業務へ集中させる必要があります。弊社は製品提供を通じて、このような社会の実現を目指しています。一方で、人間の成長も非常に重要です。AIと一緒に人間がそれ以上に進化していく、成長していく必要があります。データリテラシーを上げるのではなくて、ビジネスリテラシーや自分の業務領域、自分の専門領域のリテラシーをいかに加速度的に上げていくかということが今後大事になると思っています。
私たちが提供する技術は、お客様にとって全く新しい視点をもたらすことがあります。私たちの提供したサービスが、今まで気づかなかった新たな可能性に目を向けるきっかけとなり、結果として新しいビジネスの創出につながったら嬉しいですね。
編集後記
今井社長へのインタビューでは、データやAIを扱う会社でありながら、単に効率化・自動化を進めるためではなく、「人」の個性を生かせる社会を目指して製品づくりに取り組む姿勢が垣間見れた。クリックテック・ジャパンの製品は、日本企業のDXをどのように革新していくのか。同社の今後の展開と成果に注目したい。

今井浩/埼玉大学工学部機械工学科を卒業。EMCジャパン株式会社(Dell EMC)にて、データ保護ソリューション事業本部 事業本部長を務めたほか、日本マイクロソフト株式会社、SAPジャパン株式会社でも要職を歴任。IT業界で25年以上の経験を持ち、多岐にわたる分野をリードし、各社事業の発展に貢献する。2019年10月より現職に就任。