
株式会社Reviewは、全国の店舗や企業情報をリアルタイムで収集・提供するデータプロバイダーだ。主力事業である情報提供サービス「macci」は、独自のIT技術と人的リサーチを組み合わせ、インターネット上では取得が難しいリアルな市場ニーズを収集・分析。AIによるデータ解析と、人力による現地調査・データチェックを融合することで、高精度なビッグデータを提供している。大手企業の基幹システムやポータルサイトを支えるインフラとなるべく、さらなる挑戦を続けている同社の代表取締役CEO、藤本茂夫氏に話をうかがった。
半年間の無給を乗り越えて築いた事業基盤
ーーまずは社長のこれまでの経歴を教えてください。
藤本茂夫:
私は高校卒業後から長く人材業界で働いていました。その中で最も長く所属していたのが、大手総合人材サービスの会社です。そこでは12年間働き、支店長を務めたこともあります。しかし働いているうちに、大企業のルールの中ではスタッフに対するきめ細かなフォローがしづらいと感じ始め、人材業の在り方と大企業のルールのバランスに疑問を持つようになりました。
そこで、その課題を解決するべく、2012年に仲間と一緒に採用支援のコンサルティング会社を立ち上げることにしたのです。事業を展開する中で、あるお客さまから「地域の新築物件の、建築前の情報をリアルタイムで知る方法はないか」とのご相談をいただきました。採用支援とは異なる領域の仕事でしたが、社内で意見交換をしたところ、「これは時間の枠にとらわれない、ギグワークや在宅ワークのような働き方を生み出せる仕事なのではないか」という結論に至ったのです。
実際に、フルタイムで働けない人たちが隙間時間でアルバイトできるような仕組みのアプリをつくり、調査業務を請け負ってみると、これが大成功しました。この仕組みを活用して、仕事の成果を5倍ほどにしたクライアントもいたようです。その企業から通信業界全体に成功の話が流れ、全国的に人を配置することができるようになりました。この事業が、弊社の前身となっています。
働くスタッフからも「この仕事に出合えて助かりました」と感謝され、非常に嬉しかったですね。「私たちが本当にしたかったのは、こんなふうに人に喜ばれる仕事だったんだ」と実感しました。そこで、私を含めた人材会社の社員全員で、2016年に株式会社Reviewを設立して移籍し、データプロバイダー事業に着手することになったのです。
ーー創業期にはどのような苦労がありましたか?
藤本茂夫:
人材会社時代の話ですが、創業から1年弱で資金が底をつき、給料が出せない状況に陥りました。ほかの社員には、「やめてもいいよ」と話していたのですが、そのような状況でも私に付き合ってくれたのです。幸い、それから半年ほどで給料が出せるようになりましたが、そのとき、私についてきてくれたメンバーが、株式会社Reviewの創業メンバーです。本当に助けられたと、心から感謝しています。
人手を使った情報収集で雇用を創出する

ーー現在はどのような事業を展開していますか?
藤本茂夫:
弊社の事業は「データソリューション」や「データプロバイダー」と称されることが多いですが、事業の目標は、弊社のデータを活用して世の中のさまざまなインフラや環境システム、ポータルサイトなどを動かすことです。
人手を使って行政のオープンデータを紙面から収集したり、外で撮影したりして、正確なエビデンスを集め、それをAIで分析することで、他では取得できない法人や店舗のデータを独自に生成しています。
一般的な考え方からするとアナログな手法かもしれませんが、この方法によって、弊社はフルタイムで働けない人たちの雇用を生み出すという実績を築いてきました。その結果、働く人たちからは感謝される上に、クライアント企業にとっては、正確で即時性が高く、ボリュームの多い情報を得られるという仕組みを構築できています。
個性を尊重し、自由な働き方を支える社風

ーー社内の環境や文化について教えてください。
藤本茂夫:
弊社ではスーパーフレックス制を採用しており、基本的に自由な社風です。スーツで出勤している人はおらず、推し活のために平日休みを取得する人や、コンサートに行くために15時に退勤する人など、それぞれが自分にあった働き方をしています。
また、福利厚生の制度として、月に1回好きな日に休みを取れるリフレッシュタイム制度を設けました。これは社員が提案し、決まった制度です。私自身が時間に束縛されることがあまり好きではないので、社員に対しても「2時間働いて1ヵ月分の仕事ができるのであれば、あとは休んでいい」というスタンスで接しています。
社員の年齢は、20〜30代前半が一番多く、上は50代の社員がいます。加えて、ブラジルやインドなど、海外出身の社員も在籍しており、外国人の方も活躍していただける環境ですね。
ーー人材採用や育成についてどのように考えていますか?
藤本茂夫:
弊社の仕事は、何か特別なスキルを持っていなければできないようなものではありません。ただ、仕事に対する熱量を持った人でなければ、社風に馴染みにくいところがあるかもしれません。「自分のアイデアを活かしたい」「成長して、将来はこのぐらいの給料をもらいたい」という方が集まった結果、社内が盛り上がっているという感じです。
人材育成については教育制度が整っているというよりも、社員同士が家族の手前ぐらいの温度感で接しているところが、よい方向に働いていると考えています。「部下が育たない」「何も教えてもらえない」などの声は、これまで一度も聞いたことがありません。自然に教え合い、成長できる環境になっているのだと思います。
常識を超えてさらなる自由な働き方を目指す
ーー貴社の今後の展望をお聞かせください。
藤本茂夫:
弊社を、常識外れなくらい自由な会社に成長させたいです。1日4時間の勤務でフルタイムで働く正社員と同じ給料がもらえるような給与体系や、全国数か所の中から自由に勤務地を選べるような制度設計をしたいと考えています。たとえば、「1か月間、沖縄に行きたいです」という社員には、ワーケーションのようなイメージで、働きながらも現地を楽しんでもらいたいと思っています。
近年、労働基準法では、残業代の規定や労働時間の基準が取り沙汰されていますが、規定時間より短い労働時間になったらどうなるかという議論は耳にしません。そうした常識の外にある部分に注目することで、弊社ならではの働き方を実現し、日本一ユニークな会社を目指していきます。
編集後記
創業期の苦労を乗り越えた先に見えてきたのは、働く喜びを分かち合える世界だった。社員一人ひとりの個性を活かし、常識にとらわれない自由な働き方を追求する姿勢に感銘を受けた。膨大なデータベースをAIと人の手で丁寧に紡ぎ上げる事業モデルは、AIと人間の共存における、一つの答えなのかもしれない。

藤本茂夫/大手総合人材サービスのコンサルティング営業として従事し、最年少で支店長に就任。アウトソーシング、コンサルティングを中心に、2年連続全国トップの業績をあげ、関西を牽引。2012年、採用支援会社である株式会社アディションを設立。2016年、採用力を活かした新たなIT事業を構築し、株式会社Reviewを設立し代表取締役CEOに就任。人とITが繋がる、新たなインフラを創造するために邁進中。