※本ページ内の情報は2024年4月時点のものです。

カー用品会社オートアールズの代表取締役社長野田晋作氏は、経営者一族で育ち、若い頃より経営視点を培ってきた。アパレル業界出身の同氏は、「ビジネスの基本はすべて同じ」と語り、異業種であるカー用品業界でも独自の目線で次々に内部改革を行っていく。

「お客様がお金を払いたくなる商品やサービス」を追及する同氏に、会社の現状と今後の展望について話をうかがった。

モールの集客力が我々の優位性

ーー貴社の事業内容について教えてください。

野田晋作:
現在は、タイヤなどのカー用品の販売と、オイル交換などの簡単なメンテナンスや車検を行う店舗を62ヶ所ほど運営しています。

ーー貴社の強みについて教えてください。

野田晋作:
弊社はカインズやベイシアなどの大型モールをもつ会社のグループ企業で、モール内出店を積極的に進めています。競合企業は独立店舗を持っていることが多いのですが、その場合家賃は高く、集客コストもかかります。それに比べると、弊社はグループ会社のモール内に出店しているため、集客コストと出店費用を抑えることができています。そこが競合他社に比べて優位性ということになるのでしょうか。

経営者一族で育ち、幼少期より身についていたビジネス感覚

ーー華やかなご経歴ですが、どのような経緯で今の立場へたどり着いたのでしょうか?

野田晋作:
経営者や士業を生業にしている親族が多く、若い頃から「どうすれば人がお金を払いたくなるのか」ということに興味を持っていました。そのため、社会に出てからは経営者に近い視点で仕事に取り組んでいました。経営者は自分の視点に近い従業員を評価するものです。若い頃よりそういった観点から仕事に取り組めたことはとても良かったと思います。

ーーアパレル業界から車の整備業界へと、全く異なる事業へ転職されましたが、前職での知識や経験は活かされていますか?

野田晋作:
どの業界でも商売の基本は全て同じで、「お客様が何に対してお金を払いたいと思うのか」を掘り下げて考えることだと思っています。ファッションであれば素敵なものをつくることが重要であり、車の整備でいえば安心安全で信頼できる会社が望まれます。前職では私は「ファッション」という嗜好品を扱っていました。嗜好品というものは自分の生活レベルや自分のステータス、気分を上げるもので、つまりは支出によってプラスの感情をもたらすものです。

それに対して、車のメンテナンスは維持です。「マイナスになっていくものをどうやって元に戻すか」ということにお金を払わなくてはなりません。お客様にとっては、なるべくなら払いたくないお金ですが安全に関わる事ですので、ただ安いだけでは不安になります。そこで「安くても、信頼ができる」と思っていただくことが大切です。その為にはお客様の為に考え行動ができる、思いやりのある従業員を育成することが最も重要であると考えています。

ーー転職のきっかけを教えてください。

野田晋作:
ある方を介してご縁があった事がきっかけですが、社風に惚れました。現オーナーの土屋さんは「経営者は遊ぶより学べ」というスタンスの方で、グループ全体でも『学び』をとても大切にしています。

私自身も『学び』は大切にしてきました。現場や仕事を通じて学ぶことは当然ですが、外部のセミナーや講演には積極的に参加したり、また週に1〜2冊は必ず本を読むようにしています。現代社会は信じられないスピードで変化してゆくので、どれだけ忙しくても己を律して学び続けねば、経営者としての成長が止まってしまうという危機感からです。そういった意味でも当グループは私にとって非常に適した環境だと感じています。

企業における学びと成長の重要性

ーーどのような会社を作っていきたいか、イメージをお持ちですか?

野田晋作:
繰り返しとなりますが、仕事人として学び続けることが最も大切だと思っています。

もちろん現場でも多くの事が学べますし、教育はOJTだけでそれなりに仕事は出来るようになります。ただし現代の厳しい市場環境下において、それだけでは人も会社も成長が止まり、やがて衰退してしまいます。だからこそ我々のグループは全社を挙げて、皆が学べる機会や仕組みを構築している最中なのです。

従業員の皆さんが学び、そして現場で実践して成長を続けることは非常に重要で、それが個々の給与や市場価値の向上につながります。当然優れた従業員が増えれば、お客様へのサービス向上にもつながりますし、それが結果として企業の成長にもつながるのだと考えています。従業員には「高い視点・視座を身につけて、成長してもらいたい」という思いもあります。ですので、社員全員が学べる会社を目指しています。

ーー社長に就任されてからのこの半年間で、印象的なことはありましたか?

野田晋作:
現在、業界や会社の常識を疑うところから改革を進めている最中です。たとえば、タイヤ売り場はほとんどの会社で外に陳列するのが常識になっています。ただ買う側からすると暑い日も寒い日も、また雨の日も外で買い物をしなければなりませんし、そもそも高額な商品が野ざらしで埃まみれになっている姿に違和感を抱いていました。また、私がお客様を観察しているとスマホで写真だけ撮って帰ってしまいます。

これを見て「非常にもったいない」と感じました。それ以来、改装する店舗はタイヤをお店の中に入れることにしました。そうすると、スタッフから声をかけることができ、比例して売り上げも上がりました。業界経験の長い方からは絶対に失敗すると言われていたのですが、失敗したら元に戻せば良いだけなので、まずはトライしてみることです。結果としてお客様も従業員も会社も皆がハッピーな取り組みとなりました。地道な取り組みですが、現在はこのようなことを一つ一つやっている最中です。

サービス業界における人材の重要性

ーー人材能力をあげるために貴社で取り組んでいることはありますか?

野田晋作:
人材開発に関しては、まさに取り組み始めたところです。

これまで、人材育成については昔ながらの「背中を見て学べ」といったスタンスでしたが、それだとなかなか人も育たず、サービスの品質も伸びません。

そこで、良いサービスをするスタッフをどんどん生み出す仕組みづくりをしていこうと、今まさに人事制度改革を行っています。外部の方々の力も借りて評価制度を整え、採用から教育・育成、そして評価・報奨までの一連の流れを再設計しています。

ーー理想とする人材のイメージがあれば教えてください。

野田晋作:
サービス業なので、お客様と話すことを楽しめて、接客が好きな方が良いですね。

またお客様から感謝されることも多い仕事ですので、そこに喜びを見いだせる人が理想だと思います。

ーー採用に向けて取り組んでいることはありますか?

野田晋作:
現在、世の中には様々な事情で、自分に合う職を見つけられていない方たちが大勢います。その方たちを掘り起こすことは、社会的に価値があることだと思っており、そういった方々の求職ニーズをどの様に掘り起こすのかに注力しています。

具体的には若年・中年無業者(ニート)と言われている方々や、何らかの障害を持たれた方々です。若年・中年無業者(ニート)の方々は些細なきっかけで社会復帰出来る例も多く見ていますし、我々がその些細なきっかけとなる事ができないかと模索しています。

また障害を持たれている方々は我々健常者の及ばない素晴らしい能力を持っています。現在は専門の就業支援団体と手を組んで、施設に所属されている方々に数か月間弊社で研修を行っていただき、双方フィットするようであれば正社員としての採用を進めています。

人事評価制度や会社方針の検討

ーー会社としてどのような人材を評価していきたいとお考えですか。

野田晋作:
お客様と仲間のために働ける人です。なぜなら、弊社は客商売であり、1人では完結できない商売だからです。

弊社の仕事は、お客様にタイヤを販売しても、整備工場がそれを取り付けてくれなければ、最終的にはお客様に商品を渡せません。店舗の中でこのバトンタッチがどれだけ上手くできるかが重要です。お客様と仲間のために最高のバトンタッチが出来る人材を一番評価すれば、この良い風習が他の従業員や他店舗、組織全体へと伝搬して行くと考えています。結果的にはそれが生産性の向上につながり、お客様の満足度につながります。そのため、我々のような職種でも、技術力だけでなくコミュニケーション力やホスピタリティはとても大切だと思っています。

編集後記

焦燥感を原動力とし、代表取締役社長に就任後も常に学びを追い求める野田氏。

その熱は現在、人材育成や社内改革に注がれており、会社は今、目まぐるしい変革期の真っただ中にある。

「世界を知れば知るほど自分は何も知らないと焦燥感に駆られる」と語る同氏の今後の活躍に注目したい。

野田晋作(のだ・しんさく)/青山学院大学大学院国際マネジメント研究科修了。元大手アパレル企業上席取締役副社長に就任後、現在はオートアールズ代表取締役社長。前職ではPR・販売促進・ブランドディレクション・新規事業(飲食、フィットネス、海外事業)の立上げやEC/DX統括の責任者などを歴任。またアパレル事業の経営に携わるかたわら、数社のM&Aを主導し、それらの企業の代表を兼任。23年6月より現職。